133 格好から入るのは大事
文化祭の準備を進める勇太は、自分の2年3組では劇のセット作りを手伝っている。
メインの柔道部、バドミントン部合同の執事カフェ準備も平行して行っている。
今日は空き教室で打ち合わせだ。使えそうな衣装を持ち寄った。勇太も取って置きを持ってきた。
使ってみたい衣装がある。
東京の執事カフェで知り合った源氏名オスカルさんに作ってもらった、この世界になかった服も届いた。
前世の詰め襟学生服。
サイズ違いの4着が送られてきた。色は白で統一。
制作料は無料。勇太はオスカルさんに代金を払おうとしたが、勇太が前世からパクった燕尾服が秋葉原でプチブレイク。
同業者から服の製作依頼が来て利益が出たオスカルさんには逆に、勇太にお金を払いたいと言われた。
そこは遠慮して、詰め襟学生服と相殺にしてもらった。
サイズは勇太170センチ、カオル165センチ、梓160センチ、ルナ155センチに合わせてある。裾の長さは前世の標準より少しだけ長め。
前日にカオルも呼んで、試着して4人で写真を撮った。
勇太、ルナ、梓が着ている。見慣れない服に、女の子から歓声が上がった。
「ええっと、何だか梓とルナさんまで男子っぽい」
「新鮮・・」
「私も着たい・・」
身長低めのルナはショタっぽいムードになった。これはアリの声。梓は男装の麗人という感じ。
髪型を同じオールバックにしたルナと梓が並ぶと、バドミントン部に潜伏していた腐った女子のハートを刺激した。
勇太は・・女子には称賛されたが、鏡で自分の姿を見ると、ただの粋がったコスプレ高校生がいた。
流れで撮影会が始まってしまう。
勇太だけは詰め襟服を着たまんま。あとは3着の詰め襟学生服を女子達が着回して、勇太と写真を撮りまくった。
ルナと梓が勇太の前で、上着を白いズボンを脱いでブラウスとパンティーだけになった。
他の女の子も同じ格好になったりする。勇太には、こっちの方が刺激的だ。
最近、勇太に甘えまくる柔道部1年のキヨミの番だ。
「どうした、キヨミ」
「・・抱っこ」
なぜか、学生服の勇太が学生服のキヨミをお姫様抱っこして撮影会をした。
そうなると流れで、柔道部員9人、バドミントン部員12人をお姫様抱っこして撮影するはめになった。
腰ががくがくしてきた勇太だが、ここで追撃があった。
柔道部を引退した時子前部長と田町先輩が飛び入り参加した。
そして学生服を下級生から奪い取って、お姫様抱っこ会に参加した。
51キロ級の体重をキープしている田町先輩はともかく、引退後は66キロ級から増量したと思われる時子前部長は、かなりの重量感があった。
勇太の腰がゴキッと鳴った。しばらくして回復したが、勇太は女神印の回復力がなかったら大惨事だよと思った。
結局、これで時間を食いすぎて、打ち合わせはほとんどやらなかった。
◆
勇太が梓と家に帰ると、先に葉子と風花が家にいた。
2人はリビングではなく、台所にいた。
パラレル母さん葉子がご飯を作っていて、パラレル父さん風花が食卓の椅子に座ってギターを弾いていた。
2人に甘い空気は流れていない。なんだか年が離れた友達という感じだ。
「どう、この曲。葉子さん」
「いいねー。風花、次はボサノバみたいの弾いてくれない」
「おっけー」
♪♪♪♩♪♩♪♪♪♩
風花は勇太の前世の超有名曲『イパネマの娘』のようなフレーズを弾き始めた。そして軽く口ずさんでいる。
勇太に言語チートはないので、ブラジル語、スペイン語、ポルトガル語のどれかと思うが、よく分からない。
こっちでは『街角の花売り』という題名だが、ボサノバを歌う人なら必ず知っている習作ということで共通している。
イパネマの娘の位置付けだ。勇太は寝たきり生活が長かったから、同世代より音楽を聞いている。
クラシックもそうだし、心地良い名曲というのは前世とパラレル世界で似通ってくるようだ。勇太はそう感じる。
「梓、葉子義母さんたち、今日も楽しそうだね」
「だね、恋人って感じじゃないけど、長い付き合いがある友達みたい」
「梓も何か弾いてもらえよ」
「だねえ、甘えちゃおっかな。風花さ~ん・・」
なんとなく一家団欒だ。




