131 勇太の本領は長距離
体育記録会の午後。勇太の種目も残すところひとつ。
1500走。
パラ高は運動場のトラックが広めで400メートル。4周弱。
1年生から2つのクラスが一斉に走る。10分置きに次のチームがスタートする。
勇太は自分の2年3組。ルナの2年4組と一緒。1年生と3年生は勇太鑑賞だそうだ。
終わった1年生も解散せず、校庭のフィールドを囲んでいる。
勇太は先頭に立たせてもらった。
スタートした。
いきなり生徒の集団から飛び出した勇太。陸上部中距離の女子にも差をつけている。
「ユウ兄ちゃん、ルナさん、頑張ってーー」
梓の応援、女子の歓声が上がる中、断トツ一番で1周目の400メートルを通過した勇太。ここから、離れて二番手に付けた陸上女子が追い上げようとしたが・・
勇太のペースが落ちない。
勇太は女神印の回復力を持っている。100メートルの短距離走に生かされることはないけど、距離が伸びるほど有効。走っている間にも回復力が作用して、普段のランニングでも1000メートルを越えたあたりから強くなる。
うわあ~、すごい
これ、タイム出てるよね!
勇太く~ん!
遅い女子を何人も周回遅れにし、1300メートルを通過。
男子が走ることよりも、その走りの方に歓声が上がっている。
ラストスパートも短距離並みのスピード。きゃああと声が上がった。
「よっしゃあ!」
タイムは3分48秒。
この世界の女子の世界記録3分46秒まで、あと2秒と迫っていた。
パラレルな男子の公式世界記録は4分21秒。なにせデータが少なく、速い人間が本気で練習したときのデータはない。
勇太は前世男子の1500メートル世界記録は、3分20秒くらいだと記憶していた。
なので、女神チートありで出したタイムにしては、まだまだだと思っている。
2位の陸上部女子は3分58秒。勇太のプリプリヒップを追った効果で自己ベストを出したけど、ゴール後に倒れてしまった。
「ああっ、大変だ」
勇太は自分も疲れているけど、速くも回復傾向。
倒れた女子を抱えて起こした。
きゃあああー~~~と、ゴールしたとき以上の歓声が巻き起こった。
ついでにゴール付近でルナ待ち。
「ほいっ、お疲れ!」
「あ、ありがとう~~、ふうう~~~」
ハイタッチして、ルナは4分28秒。
前世ルナが中3のとき優に6分を越えていたのが、ちょっと頭をよぎった。
そして勇太はどんどんゴールする女子に声をかけていった。
そしてハイタッチ。
なんともタフな勇太に、みんな驚いている。
「すごい、勇太君のタイム!」
タイムを見た計測係が大声を出した。
陸上部のメンバーが寄ってきて、驚きの声を出した。
「ま、手動のストップウオッチで計測したから、誤差はあるかもだけど・・」
非公式とはいえ、男子の世界記録を上回ってしまった。
陸上部の面々が寄ってきて、勇太をガン見している。
エロ可愛いアスリートスタイルか鑑賞の気持ちは4割程度。
残り6割は驚愕。
肌を隠すための余計なスパッツ、上は厚手の体操服。とてもタイムが出せる格好ではない。
「ゆ、勇太君。陸上部にも入って長距離をやってみないか?」
陸上部の部長・隼田アンヌは思わず言ってしまった。
400年前までの歴史では、最後の剣豪・宮本武蔵などは驚愕の身体能力だったと聞く。
男子の潜在能力を引き出してみたい。
ちなみに宮本武蔵の弟子は宮本伊織。勇太はパラレル武蔵とパラレル伊織は向こうの世界と同じだと思ったけど、パラレル伊織が女子だった。
1612年に生まれで疫病で亡くした男子の名を姉が引き継いで伊織を名乗ったそうだ。
勇太は魅力的な話だけど断った。
下手をしたら、現段階でもフルマラソン42キロで世界記録を出せるかも知れない。
だけど女神印の回復力をモロに使うことになるから、あまりにも卑怯だろと考えた。




