130 体育記録会
勇太の動画を流した女子達に収益が出た。
勇太は、そのお金は自分で使ってくれと配信した。ついでに1曲歌ったら、その動画に人気が出てしまった。
つくづく、男子に都合がいい世界である。
早くも10月に突入した。
パラ高でも文化祭の準備が始まりつつあるが、その前に体育記録会がある。
勇太の前世で秋の学校行事といえば文化祭だけでなく、体育祭もあった。
だけどこの世界、高校の体育祭がない。小学校までは運動会はあった。
パラレル勇太も小4までは参加していた。きちんと記憶にある。
だけど徒競走やダンスなどが主流。激しい競技がない。
女子ばかりだと、騎馬戦とか組体操のようなものが全員でできない。
これはフィジカルの問題。
土台を作る役の人間が、女子ばかりだと数が足りない。
ひとつのクラスに10の騎馬を作れる人数がいても、土台になれるのは茶薔薇学園のカオルのようなパワフル女子だけ。
無理に全員参加だと危険すぎるのである。
そして男子が参加するのも、せいぜい小学生まで。
代わりに、本日の10月2日水曜日に全校一斉の体育記録会をやる。100メートル走、1500メートル走、走り幅跳び、ハンドボール投げとなる。
もちろん男子は任意参加。
勇太は参加する。パラレル高校では6年ぶりの男子参加らしい。
伊集院君は登校日の水曜日だけど欠席。あれほど社交的でも肉食女子に混じって運動するのは無理だそうだ。
LIMEでやり取りした。
伊集院君『女子の前で汗を流すのは、普通に抵抗があるよね』
勇太は何の抵抗だろうと思いながら『だよね、仕方ないよね』と返した。
最近、少数ではあるが男子と話して、この世界では同性の心理の方が分かりにくいと思った。
学校指定の男子用体操服は、ブカブカが基本。
それじゃ記録が出せないから、勇太は短パンとタンクトップを用意した。それは、梓とルナに止められて変更。
スパッツタイプのタイツの上にぴっちりの短パン。上は乳首が浮かばない程度の厚手の半袖シャツにした。
「ルナさん、これって・・」
「まだ刺激が強い気がするけど・・」
やる気の勇太を見ると、ここまでは譲るしかない2人だった。
「うっしゃー頑張ろう!」
「ゆ、勇太、よくこの中で普通にやれるよね」
「ユウ兄ちゃんの平常運転が怖いときがあるよ」
ルナと梓には驚かれたが・・
勇太からしたら男子一人の状況は、リーフカフェで慣れてきている。
だけど勇太の心理はともかく、女子は色めき立っている。
まず走り幅跳び。最初が勇太だ。
「わ・・」
助走ゾーンの両脇に女子の列がある。勇太は、何の花道やねんと言いたい。
基本、学年別に競技を行う。勇太は2年生なのに、走り幅跳びだけは3年生のスケジュールに組み込まれている。なぜか。
1回で踏み切りに成功して、記録は5メートル78センチ。
おおお~と歓声が上がった。
勇太は悪くない記録なのかと思ったが、体操服がめくれて、お腹が完全に見えたからだ。
勇太慣れしていない肉食お姉様のハートを刺激した。
第3競技者に柔道部の時子前部長を発見した。
勇太は踏み切り板の所にいる。
「時子部長、頑張ってーー!」
「ふえ?」
ジャンプする寸前に勇太の響く声を浴びた時子。へなへなジャンプの記録は、88センチだった。
次走の女子が叫んだ。
「勇太く~ん、3年1組サクタマリ、いっきま~す」
勇太も応えた。マリが踏み切る瞬間に叫んだ。
「マリさーん、ジャンプ!」
カクンとなったサクタマリの記録、74センチ。
柔道部の田町先輩も同じ攻撃を食らった。少し勇太耐性があっても、記録は1メートル36センチ。
勇太のせいで1メートル未満が大半となり、3年生は勇太の応援なしで再計測となった。
ハンドボール投げは24メートルでトップクラス。
100走も大注目。1度に4人で走った。陸上部の希望で2年生の現役短距離選手3人と走った。
記録は陸上部女子に引き離されて13秒6。
勇太的にはタイムが伸びているが、タイムを出すための精密な動きができていないようだ。
けれど、走路の横に並んだお姉様がたは満足。
全開で走る男子っていい~
男子も速く走れるんだ~
もっと見た~い
おおむね好評だ。
残るは1500メートル。
この種目で、ちょっとした騒ぎを起こしてしまう。




