124 個人戦はあっさりと
9月29日、日曜日は個人戦である。
朝イチでトーナメントの抽選をしたが、勇太はくじ運がなかったようだ。
初戦で茶薔薇学園のハラダヨシノと当たる。69キロ級は8人しかエントリーしていないのに、いきなり階級別の全国3位とは運がない。
「勇太くーん、お手柔らかにね」
「こっちこそ、ハラダさんの胸を借りるつもりで頑張ります」
「む、胸ですか。は、はい、私のおっぱいなら、いつでも使って下さい」
顔を真っ赤にする肉食乙女タイプだが、試合になると修羅になる二重人格キャラだ。
171センチ、68・9キロ。筋肉質の体でやや丸顔。笑顔なら可愛い。
この笑顔に騙された勇太は、茶薔薇で初めて対戦したハラダに油断した。そして強烈に投げられた。
カオルと同様に、5年後の五輪出場を目指している。畳の上に人生をかけている。
今回はカオルがいる63キロ級とハラダの69キロ級はエントリーが各8人と少ない。
インターハイでカオルは準優勝、ハラダは3位。順調にいけば2人とも来年はV候補の筆頭になる。みんな避けたのだ。
そして、勇太のせいで72キロ級に32人もエントリーしている。
インターハイ予選時の勇太は体重が70キロあった。パラレル勇太のぶよぶよ84キロから、筋肉を付けながら減量している途中で大会の日になった。
だからインターハイ予選は72キロ級にエントリーした。
多くの女子が、カオルとハラダを避けたり、勇太と対戦したいために69・1~72キロで体重を調整した。
ところが勇太、前日の計量で68キロだったので69キロ級にエントリーとなった。
抽選前、1回目の悲鳴が上がった。
「うわああ、なんのために無理して食べたんだよう」
「5キロも増量した意味って何なのようー」
「元の階級でよかったんだよ」
「勇太君との寝技がーーー」
困ったものである。
勇太は「知らんがな」としか言えない。
ハラダを避けず、69キロ級から動かさなかった女の子は6人。ガッツポーズで勇太、ハラダと一緒に抽選に臨んだが、無情なる結果。
「ハラダさんって普段から勇太君と練習してるのに」
「せっかく男子と試合したって自慢できるチャンスがああ」
「ここで、はしごが外されるなんて!」
第2の悲鳴が上がった。
「みんな、ごめんなさい・・」
大きな体を縮こまらせて謝るハラダ。代わりに勇太が手作りクッキーを6人にあげるはめになった。なぜか。
で、試合は・・
「そりゃあああ!」
「うげっ」
「私に挑むとは10年早いわあ!」
「ひええ」
やはり修羅になったハラダ。豪快な体落としで勇太の1本負け。
1分後。
「勇太君、強く投げちゃったけど、大丈夫だった?」
「いやー完敗。次は、もっと抵抗できるように頑張るからね。それにしても、人格変わるね~」
「いや、あの、ははは」
勇太の元の世界のハラダがどんな人物だったのか、ちょっと知りたいと思った。
勇太の新人戦は終わった。
だけど、やっぱり終われない。パラ高陣営のところに柔道連盟の人が来た。
リクエストが多すぎるからと交渉されて、閉会式の賞品プレゼンテーターをやるとこになった。
ルナがパラ高部長として断わろうとしたが、勇太が引き受けた。
「勇太、良かったの?」
「ははは、ルナが1回戦負けだったら引き受けてないね」
「?? なんで?」
「ルナが優勝したら、俺が壇上でお祝いできるっしょ。それもアリかなって」
「ちょ、ちょっと・・」
引き受けた理由が嬉しい。そう思うルナだった。
そんな話をしていると、マルミ、タマミ、キヨミの三つ子が帰ってきた。みんな1回戦突破だ。
同じ身長、体重なので、そのうちつぶし合いになるが、まずは好結果だ。
「よーしよし、みんなお疲れ」
そして残る5人の新入部員も帰ってきた。
なんと、みんな1回戦突破だ。
「勇太先輩の特訓のお陰です」
「初試合で勝てました」
あれ、と勇太は思う。
「負けたの俺だけじゃん」




