114 柔道連盟のPRビデオ撮影
9月になったから、秋の行事が待っている。
月が変わって半月あまりで、婚約者候補2人追加、音楽活動、お父さんパラレル体発見と忙しい。
パン屋、カフェなども減らしていない。
10月の文化祭では、2年3組は伊集院君がスーパー脇役の劇をやることになった。
シンデレラだ。
伊集院君は1人で、王子様、イジワル継母、魔法使い、お城の従事など8役ほどやる。女子は何の役でも、最低でも1度は伊集院君とのやり取りがあるのだ。
やはり、思いやりあるスーパーマンだ。勇太は改めて勝てないと思った。
勇太はクラス行事を辞退して、柔道部とバトミントン部合同の執事カフェに参加となった。
勇太はクラスの人間と少し打ち解けたけど、これを見越した柔道部1年と梓所属のバトミントン部で先手を打っていた。
ルナは、こういう駆け引きは下手で事後報告を受けたのみ。
基本、不参加でもいい男子だから、勇太は先約の方を選ばせて貰った。
お詫びにクラスメイトにはクッキーの差し入れをしてみた。
文化祭の前に柔道連盟のPR撮影、それから新人戦。
今日、9月21日土曜日。柔道連盟のPR撮影をする。
柔道部の普段の活動を映す。体育館の隅に畳を敷くところから始まる。
乱取りがメイン。勇太がルナ、1年三姉妹と次々と戦うところが撮影された。
バーンと小気味よい音と共に勇太が投げられた。
「はい、背負い投げでルナ部長の勝ちっす」
「うわっ、4連敗だ。俺もまだまだだな~」
キヨミ、タマミに投げられ、マルミに押さえ込まれた。
そしてとどめにルナから投げ飛ばされた。
「すごっ、容赦ないですね。貴重な柔道男子に・・」
「本気でやってもらわないと、僕も強くなれないですからね」
「はあ・・」
連盟のカメラマン、インタビュアーの方が戸惑っている。本気の練習風景を頼んだが、部員が希少な男子相手にここまでやると思わなかった。
そして勇太の柔道着がはだけている。続く初心者5人の指導でも、勇太は女子に密着を許している。
練習の合間のインタビューのときも、柔道着を直したりする。乳首が見えたりしているが、これをどう編集しようかと頭を悩ませている。
会長の鬼塚一子からは、責任は取るから攻めの映像を作れと指令は出ている。
けど、これって男子へのセクハラ規制、エロ規制は大丈夫なのと心配になってくる。
ここまでが午前中。
お昼は各自のお弁当のあと、勇太のゴブリンパンがデザート。
テレビスタッフにも分けて、映像に映してもらった。
「この子たち、普段から男子パンとか男子クッキー食べてるのよね。前世で徳を積んだのかしら・・」
映像スタッフから声が漏れている。
午後からは、ちょっとした企画モノ。
茶薔薇学園の今川カオル参加である。
「ちわっ、今日はヨロシク」
「カオル、いらっしゃい」
「カオル、忙しいとこごめんな~」
インターハイの大会中に婚約して、モテる柔道女子と認められたカオル。
実際には、勇太とはキスまでしかしていない。恋愛初心者の本人の戸惑いはともかく、すごく注目されている。
カオル参加は連盟からのリクエスト。『未来の』夫婦対決、嫁対決と、ちょっと遊び心が入った企画が立てられている。
「ではまず、花木ルナさんと今川さんで嫁対決してもらいましょう」
その時、すごい足音がした。
「ちょっと待ったあ~~~」
前触れなく、体育館に現れた女性。
このパターンは1人しかいない。
やはり、長身でハンサムな女性だ。
インターハイでカオルに勝った不知火マイコだ。
不知火も連盟のPR撮影があるとは聞いていた。だけど勇太との絡みがあるとは知らされていない。
そもそも、彼女は北海道在住。東京経由で、飛行機、リニアモーターカーで乗り継いで来るほど遠くに住んでいる。
「ほ~っほっほ。私は東京に呼ばれたけど、企画変更よ。勇太君の嫁対決ならば、私が来なきゃ始まりませんね!」
不知火マイコ。臼鳥麗子の同型で暴走タイプ。
明日、連盟の撮影はあるが東京の連盟ビルでやるはずだ。
『嫁対決』に来たと言うけど、それならなおさら、あんた関係ないよねと勇太は言いたい。
カオルは呆気に取られている。
ルナは「6人目か~。麗子と同タイプか~」と、相変わらず呑気だ。




