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103 一部怒涛の2学期スタート

夏休みが終わった。


パン屋、茶薔薇学園柔道部、リーフカェを基本に、最後の1週間も勇太らしく過ごした。


26日のリーフカェ定休日には、ルナと梓とお出かけした。


変化といえば、葉子義母さんの彼女さんが、実家を継ぐとかで葉子義母さんと別れてしまったくらいか。



9月2日月曜日。


勇太ファミリーの4人は、『静と動』に別れたとでも、いうべきか。


『静』は勇太とルナ。


1年生の梓も入れて3人で登校。


ルナの2年4組に挨拶に行って、その後で自分の教室。


伊集院君が再び水、金の週2登校に切り替えたから、2年3組の男子は勇太のみ。


今日も委員長だけ挨拶かと思ったが・・


「お、おはよう、坂元君」

「元気・・だった?」

「2学期もよろしくね」

「い、今までごめん」


委員長と一緒に、距離が縮まらなかったクラスメイトも次々と挨拶してくれた。


「あ、おはよう。これからよろしく」


特に会話もなかったが、少しだけお互いに気持ちが緩んだ感じだ。


ルナは、特になにもない。


というか、勇太とのセットが普通に受け入れられている。東京観光と、柔道部合宿に関しては、根掘り葉掘り聞かれた。



問題は残る2人。


梓は、恐る恐る教室に入った。


7月31日に勇太と入籍したのは秘密にするつもりだった。


けれど、前日のお泊まりから思い切りネットに流れていた。勇太との仲が進展していないと騙していたクラスメイトにバレた。


親友の渋谷カリンをはじめ、友人に取り囲まれている。


「梓、この1ヶ月、逃げて回ってたでしょ!」

「てへへ」


「てへへ、じゃないよ。勇太と籍入れたんでしょ。ルナさんに勝てないとか泣き真似して」

「騙されたあ~」

「くっそ~、梓が花木ルナさんより先に、勇太さんと入籍してたのか」


「あんた、茶薔薇のカオルさんだけじゃなかったんかい」

「やられた~」


みんな、勝手なことを言うが勇太だけじゃなく、カオルとルナとも上手くいっている。


にやにやした梓がクラスメイトに、たっぷり責められることになった。


ピロロラロ~ンと梓のスマホが鳴った。勇太ファミリー専用のLIME着信音である。


「ちょっとごめん」。梓が画面を見た。


茶薔薇学園の山田ツバキ→ルナ経由でLIMEにカオルの画像が届いていた。そして驚いた。



カオルが茶薔薇学園の自分の教室に入った。クラスは2年1組。体育系の推薦で入った人間ばかりの教室。


みんなガタイがいい。


そしてスポーツ枠で高校に入る男子なんていないから、共学校なのに女子オンリーのクラス。


「う、うい~す」


カオルはなに食わぬ顔をして教室に入った。


しかし、予想通りに取り囲まれた。クラスメイト26人全員に。


「カオル、インターハイ個人戦、準優勝おめでとう」

「おう、ありがとな」


「そ、れ、か、ら、婚約おめで、と、う」


「あ、あ、あひがどう」


やっぱりきたかと、汗びっしょりである。


「カオル~、てめえ勇太君とは、ただの友達って言ってたよな」

「花木ルナちゃんの彼氏だから、勝手にあたしらに紹介できねーってな!」


「うへっ。すまね~」


「笑うな!」


「何なんだよ、公開プロポーズとか4人婚とかって」

「歌ってもらって、テレビでもインターハイ特集の主役みたくなってたじゃんよ」

「ホテルのロビーでエロカワ君とキスって、やらせかよーー!」


「茶薔薇学園、創立50年間の『1組の伝統』を壊しやがった」


すごい言いがかりである。


茶薔薇学園の各学年の『1組』には伝統がある。スポーツ推薦で入ってきた女子のクラスで固定されてきた。


茶薔薇では特に格闘技系の空手、柔道、レスリング、剣道、テコンドー、ボクシングに力を入れている。そしてラグビーやウエイトリフティングの推薦も受け付けている。


強く凶暴に見える女子率が高く、男子は1組の教室には近付かない。在学中に男子と付き合った『1組』の女の子は過去にいない。


警察や警備会社に就職し、男子護衛から見初められて結婚するケースはあるが、それは卒業後。


カオルは50年間に渡る1組の伝統を壊してしまったのだ。


茶薔薇柔道部員から1組の伝統を聞いた勇太は、ルナと一緒に「知らんがな」とハモった。


ともかくカオルはクラスメイトから、やっかみ95パーセント、伝統破りの罪5パーセントで吊し上げられている。


カオルは屈強な女子達に拘束され、1人だけ椅子に座らされている。


そこはアスリート同士。怪我が完治していないから、手荒なことはしない。


「てめえ、もう勇太君とセッ●ス何回したんだよ」

「してねえ」


「嘘言うなあ」


「キ、キ、キスとスキンシップだけだよ」


「うがーー」

「だけ、じゃねえだろ」

「自慢だろおおお!」


なぜか椅子の上で正座になるカオル。その回りを取り囲む女の子達。


ちょっと誤解されそうな絵図だけど、カオルがニヤけてしまっている。


そのときのニヤけたカオルの写真が、柔道部の山田ツバキ部長からルナにLIMEされた。


彼女も2年1組だ。


そしてルナが大笑いしながら、写真を勇太ファミリーのグループLIMEに乗せた。


照れ笑いしたカオルは、髪の毛をわしゃわしゃされていた。






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