90.2度目の相対
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「ぐぁっ!!?」
顔に驚愕を浮かべ、吹き飛んだ神父が壁に激突する。ぐったりしてる間に拘束を解いて離脱。直ぐさま追撃を仕掛けようと肉薄し、右足を振り抜いて真上に身体を浮かせる。
「ごっ!?」
そのまま飛び上がり、ムカつく顔面にもう一度拳を叩き込んで眼鏡を割りつつ地面に向かって殴り飛ばす。
「おっらぁ!!」
やけに疲れんのがはええが、今はそんなことどうでもいい。
「がはっ?!!」
「はぁ・・はぁ・・。」
「ゲホッ・・ごホッ・・」
肩で上下して息を整えつつ、視線は神父から外さない。今は床に殴り落とされてぐったりとしているが、次は何をしてくるか不明だからだ。
「殺すなら今だな・・。」
疲労で回らない頭を回転させ、呟きと同時に魔力を振り絞って血のナイフを一振り作り出す。
「ッ・・!!」
そのまま喉元に刃を突きつけ、今振り下ろそうとしたその瞬間。・・・ヘタァ・・・と、俺の体が言うことを聞かずにその場で崩れ落ちる。
(え?・・は?はぁ!?)
何度も何度も心の中で動けと体に命じるが、一向にナイフを握る気配も、魔力を集める精神も、立とうとする気力すらもが湧き上がらず、それどころかゆっくりと呼吸が遅くなり、体が止まっていくのがわかる。
(動け・・!!動けよ!!動いてくれ!!!)
「ハァ・・ハァ・・・ハァ・・・。」
(!!?)
「ああ・・・本当に・・あの水槽に・・毒を入れてて正解だった・・・。」
(毒!?)
「そう。・・ゴルゴンの・・催眠液さ。入ったものは精神を飲まれ、気力がなくなって行って、今の君みたいになっちゃうっていう・・・ね。」
(ゴルゴ・・・ン?)
なんてこったい。いや、そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ。倒れてピクリともしねえ体でどう逃げればいいってんだよ。てかこいつもうすぐ立つし。
「滑稽だなぁ!!キト君よぉ!!」
見下ろされて頭を踏まれる。おい、俺自身も忘れそうになるが、こちとら10歳の少女だぞ?子供の頭にそんな汚い足置いてんじゃねえよカス。
「オッラ!」
先程とは打って変わって、蹴られる側に回った俺は、為すすべもなく足先で持ち上げられて側面の壁に顔からたたきつけられる。
「がっ・・はっ!?」
「ほらほらー、受け身取らなくていいのかなぁー?」
激痛に次ぐ激痛が身を襲い、蹴りが拳が、ノーガードの体に突き刺さる。でも、俺の意思はまだ萎えてない。精神はまだ折れてない!!
「いいねぇ〜その目。最高だ!最高だからこそ!!もっと絶望した顔が見てみたい!!」
興奮し、顔を赤くして神父は述べる。ほとんど叫び散らしながら話していると言ってもいいだろう。そして今、何かが割れる音とともにナイフと仮面が踏み潰され、叩き割られた。直後に襲ってくる貧血による頭痛と、既に十分に感じた疲労感。そして、立ってられないほどのめまいが引き起こされる。
・・・が、用意は整った。出血多量によるバフ効果と、新たにかけ直した『紅疾空狐』により、頭痛やら毒やらで疲労し、まともに握れないナイフを逆手に構えて駆け出して肉薄。目にも止まらぬ速さで刃が振り抜かれ、確実に神父の首をとったと・・・
直後、金属音。横から乱入した刃一郎の刀が俺の振り下ろしを受け止め、流す。一瞬で致命的な隙ができた瞬間、1拍置いて後ろ回し蹴りが俺の脇腹に炸裂した。
「刃一郎!!この子の相手、頼んだよ!!・・・次は無いからね。」
吹き飛び、水槽を一個割りつつ、低い声で刃一郎に忠告を発した神父の声を聞き取り、目を向けるとクソ神父はラミアさんの方へと移動していた。
「逃・・がすかぁ!!!」
転移の魔法陣が書いてある床上に、眠るラミアさんと神父が並び、神父の手から魔力が流れて魔法陣が淡く輝く。
「それじゃ、『ボーダル平原』で待ってるよキト君。まあ、ここで死ななきゃの話だけどね!!」
閃光が瞬き、白い光に研究室内が照らされ、次の瞬間にはそこから神父の姿は消えていた。
「待て・・こら・・!!」
追いかけようと伸ばした右手を容赦なく切り落とそうとら刃一郎が刃を振り下ろす。
「っぶねえ!!」
「よそ見をするな!貴様の相手は俺だ!!」
間一髪で身をひねり、躱したと同時。勢いは殺さずに回転し、刃一郎の顔をナイフで切り付ける。
「チィッ!!」
苛立ちと怒りが募り、キトの顔からお面が剥げ、体内に戻る。
「速攻で決めてやる!!」
「やってみるがいい!!」
培養液の緑が照らす中、両者は相対して踏み込んだ。




