89.クソ神父
遅れて済まない!!昨日は家の用事でちょっと更新できなかった!!
更新です
(・・・どこだ?ここ?)
意識の覚醒がやけに遅く感じられる中、開いた目から辺りを見渡せば、一面が緑色に染まっていた。
「ふふっ・・目が覚めたようだね?」
目の前には、眼鏡をかけ、聖職者の格好をした男が1人と、その隣でこちらに複雑な視線を向ける修道女が並んでいた。
(ラミアさん・・と、神父様・・か?)
「ここは僕の研究室さ。・・・にしても。まさか刃一郎と5分以上の戦いを繰り広げるとは思わなかったよ!!最高のデータだ!!これで僕はまた1歩『王』に近づける!!」
(・・『王』?)
「それ程の戦闘スキルを持って生まれたことを誇りに思いたまえ。君には他の追随を許さないほどの圧倒的な才能がある!!」
なんか話してるみたいだが、あいにく、この緑色の体の周りを埋め尽くす何か・・・培養液かなんかか?のせいでくぐもってめっちゃ聞こえにくい。なんで生きができてるのかは知らねえ・・っつーか口についてるこの機械が酸素でも取り込んでんのか。
「いやー、にしても。失敗作のせいで君の左腕がもげ落ちた時は少し焦ったよ。まったく・・ああ、安心したまえ。時期にもっと強力な左腕を君に授けてあげるから。」
確かに、よく見れば左腕が二の腕の辺りから消失しており、噛みちぎられたような傷を晒している。
(自分の体が欠損してんの見ると、どうしても気持ち悪くなるな。まあ、自分で喉とか切ってる時点で抵抗感はあんま無いけど。)
にしたって、ここはどこだ?神父は僕の研究室とか言ってたが・・ん?シスター・・というか、ラミアさんか。が、目の前の巨大な培養液の水槽に入ってくのが見えるんだが・・!!?
(入った瞬間に銀の鱗が足から生えた!?しかも巨大化!!?まさか、ラミアさんが俺を吹っ飛ばして街の半分を消した魔物!?)
「ご明察。彼女こそ、⬛︎⬛︎伝来で召喚された魔獣『ファフニール』と『ラミア』をこの世界の人間に合成したキメラさ!!その当時、まだ僕があそこから逃げたばかりの頃の作品の中では、最高傑作と言っても過言では無い物だよ!!まあ、今となってはただの約立たずだけど・・・ね!!!」
そう長々と口上を垂れた後、神父は勢いよく手元のスイッチを押した。瞬間、巨大水槽全体に電流が走り、中のラミアさんが悶え苦しんで数分、それを体に受けてに気絶した。
(こいつ・・・!!?)
いつの間にか怒気と殺意が飛んでいたようで、神父が愉快そうにこちらを見据え、
「アッハッハッハッハッ!!!!!」
高笑いした。
(この野郎・・!!)
血液ま・・・!?魔力を収束し、水槽を破ろうとした瞬間、四肢を拘束している機械から電流が流れ、体が、脳が痺れてあまりのショックに意識が落ちかける。
「君はそこで大人しくしてな。・・もし魔法を発動しようとしたら、次もそうなるからね。痛いのは嫌だろう?」
歪んだ視界で捉えたその笑みは、耳の辺りまで弧を描いてるように見え、不気味さと電流のショックが吐き気を伴って俺の体を襲った。
「さあ・・・改造を施そうか!!」
ぐったりとした状態で元に戻って水槽から引き上げられたラミアさんが、奇妙な台の上に乗せられて首元に注射をされる。瞬間、それまで脱力していた体が強制的にビクンッ!!としなり、背中が仰け反って口からこれ以上ないほどの悲鳴が上がる。
「アアアアアアアアアア!!!?!?????!!」
(ラミアさん・・!!)
「君は君自身より君の大切な人を傷つけられた方が壊れやすい!!そうだろう?なんせ異世界からの人間は大抵が変な正義感を持った自己犠牲の塊だからねぇ!!」
(ラミアさん・・ラミアさん・・!!)
液体の中で嗚咽を漏らすというのもなんとも奇妙なものだが、俺は目を瞑って目の前の現実を受け付けないよう踞ろうとした。・・・が、神父はそれを許さない。
「ちゃんと磔にされていとダメじゃないか。」
冷徹な、人を傷つけることに対してなんとも思ってないような声音で、無慈悲にスイッチが押される。直後、俺の体が水槽の中央まで引っ張り挙げられ、電流が流される。
(ッ・・あぁああああああああああぁぁ!!?!)
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!?!!
激痛と感電がこれ以上ないほど身体に襲いかかり、フラッシュバックのように、幼少期の神父の優しい微笑みと今の残忍なサイコの嘲笑が重なる。電流が止まり、体を地面に落として横になろうとしても、磔にしている機械がそれを許さない。時間の感覚などとっくになく、まだ1時間しか経ってないようにも思えるし、数日経ったようにも感じる。
(こんのクソ神父が・・・ぁ!!)
殺意を込めて睨み、その顔に手を伸ばそうとしても、四肢を縛る機械がそれを阻む。絶望して水槽の下に潜ろうとしても磔にされて諦観すらも許されない。・・・が、
(絶対殺す絶対殺す絶対殺す絶対殺す絶対殺す絶対殺す絶対殺す絶対殺す絶対殺す絶対殺す!!!!!!)
俺はまだ、何もかもを諦めたわけではなかった。体を巡り、漲る殺意だけが体を支配し、ここを出て、神父をぶちのめす想像のみが俺の心を支えた。
「いいねぇ・・その目!!最高だよ!!キト君!!」
そして・・・ついにその時が訪れた。
「・・そろそろ、君の身体もいじってあげないとかなぁ?やっと『諦めた』みたいだしねえ!!」
水槽の中でぐったりとし、機械にされるがままに磔にされている俺は下を向いて神父と目を合わせないようにしていた。とっくの昔に殺意は消え、こいつを殺そうという妄想すら、既に浮かばなくなった。
「強がっている人間が諦めたときっていうのは・・・最高のことだと、そう思わないかい??」
独り言のように問いかけを投げてくるが、無視をする。疲れたし、もう動きたくもない。
「それじゃあ、出してあげよぅっと。」
おどけながらスイッチを押し、俺は上に引っ張られて培養液から脱出。そして、ゆっくりと手術台のような場所に乗せられた。
「さぁて・・左腕からいじろうかな?おすすめの腕は・・蛸に龍に狼ってとこかな?君はどれがいい?」
返答はなし。ただ死んだ魚のような目が虚空を見つめているだけの様子に、心底楽しそうな顔をしていた神父でもこれ以上やっても無駄だと悟ったのか、無言で施術を開始した。
先ずは左手の傷に注射器の針がぶっ刺さり、液体が流し込ま・・・
「・・・ッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
激痛という言葉では言い表せないほどの衝撃と痛み。確実に死んだと思えるほどの苦痛に、俺は・・俺は・・絶叫しながらもだらけてなんの希望もみいだせない意識から覚醒した。
「っ・・・の・・おぉ・・・!!!」
幸いにして、麻酔なんてものは最初から付けられていないために、右手は自由。両足も自由。左手がないからなんだ?たった1本しかなかろうが、こいつを殴ることにはなんの支障もない!!体制がぶれる?威力が落ちる?・・ノンノン。殴っタッツー結果は得られるし、殴られたっつーことをこいつの意識に刻み込めんだろうがよォ!!
方から抑え込まれた左雨でを軸に、両足を浮かせて左に重心をかたむけて回転。身を捻ったことによる勢いと、元々の膂力。培養液を出たことによって、弱体化されているとはいえ使えるようになった魔法。その全てを駆使して、
「・・・えっ?」
やつが気づいた頃には、俺の拳が完全にその顔面に決まっていた。
培養液(ゴルゴンの催眠液)
・・・メドゥーサのような特殊な蛇の魔物から生み出される毒の、催眠成分のみをブレンドして作った、超強力な脱力液と催眠液のハイブリッド的なやつ。この中に入った者は、脱力感と永遠に感じる疲労、絶望によって、無気力な廃人になる。極めて高い導電性を持ち、少しの電流を流されただけで一般人なら死に至るほどに協力である。




