84.圧倒的強者である幼女からの戦闘講座(最後のみ)
更新です。
ひでえサブタイだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
ここまで来ればブラドさん達も追ってこれないだろう。王都から10キロほど離れた草原。街道から大きく外れたその場で、俺は両膝に手をついて息を整えていた。街道を丸一日馬車で走っていってやっと着くかどうかの距離にある我が故郷だが、それは街道を走ればの話。確かに街道上を行けば盗賊とか魔物、モンスターも出現確率は低下する。だが、一定以上の実力と体力があり、なおかつ馬車ではなく1人で行く場合、街道を進むより、野を超え森を超えて駆け抜ける方が近かったりもするのだ。俺の村はそのタイプだな。その上、今は一刻を争う緊急事態。街道なんかを悠長に走ってられるかってんだ。
「まぁ、悪態ついたところで距離なんか変わんねえんだから、このまま進むしかないんだけどな・・。」
息切れも収まり、駆け足で体力を温存しつつ前へ進む。左手には地図を持ち、時々眺めながら進んではいるものの、本当にこっちで合ってるか不安になる。やっぱり現在位置が出ないような地図はクソだな。・・いや、俺が現代の習慣を捨てきれてないからか。
「にしたっていつまで続くんだよこの草原・・。」
そろそろ森が見えてくる距離なんだが・・まっさらだな。ひょっとしてだが道間違えたか?俺。この局面で?そうなったらもうただのマヌ・・・
「あ?」
目の前には森はなく、まっさらな『焼け焦げた』大地と風に飛ばされなかった僅かな灰、そして黒焦げの切り株が大量に並んでいた。・・確かここは、来る時にお嬢様だったかを助けた森だったか・・?おっと・・見るも無惨なゴブリンの死体がアチコチに・・。
「野郎・・!!」
自然破壊までしていくとはな。黒焦げになってるあたり焼きでもしたんだろうが・・王都から割と近い(充分遠い)で火事があったら、普通分かるくないか?・・なにか隠す方法があるか、はたまた・・・。
「まあ、こっちの方向であってるのは確定なわけだ。」
それだけが僥倖と言えば僥倖だな。こっから何が起きるか考えると気が滅入るし気分悪くなってくるが。
「要らんこと考えても仕方ねえ。さっさと行くぞ。」
思考を切りかえ、先程とは打って変わって全力に近い速度で疾駆する。目指すは焼け焦げた森の奥。故郷をめざして一直線に駆け抜ける。
「・・・っと、ここは・・。」
あれから2時間。村からほど近い森・・ここは、最初にブラドさんの気配があった辺りか。てことはこの奥の崖を覗けば・・お!まだ残ってんのか牡牛との戦いの跡。今思えばあれも公国の手先だったんだろうなぁ・・。まあ、死んでるし関係ないか。
「ハハッ・・。」
「自分が死にかけた場所で笑うとは、随分とM気質が高い幼女だなぁおい。」
殺気!刃!薙ぎ払い!1秒!来る!!
思考にならない直感の閃が脳内を駆け抜け、ほとんど本能に従って飛び上がるのではなく地面に身を伏せて相手を見すえる。瞬間、大きく横に薙ぎ払われた大斧が俺の首があった場所を通過し、更にその上をジャンプつぶしのためか、炎の塊が飛んでいき、森が焼けた。
「ほらなぁ?ジャンプじゃなくてしゃがみだって言ったろ?」
「さすがにこんな歳の女に魔法ぶちあてる趣味はねえよ。」
「金が絡んだら喜んでやるくせによく言うぜw」
「仕事だからな。結果と意識が必ずしも同じとは限らないってだけだ。」
眼前で斧を持ち、体から力を抜いてこちらを見つめるのはスキンヘッドで身長が2mは越えてそうなガチムチの大男。対して、魔法を放った方は一般的な成人男性だが、この世界では希少な黒髪黒目をその身に宿している。・・まさかな?
「おっさん達何用?用がないなら私早く村に戻りたいんだけどな?」
一応一人称を私にして話し掛ける。攻撃してきたから敵対は確実だろうが、殺り合うにしても情報は欲しい。つーわけで、やっちゃってくれキト。
固有魔眼スキルーーー『分析之魔眼』
無言は肯定の証として受け取ろう。で?えーっと?大男の方は、
ニック・ケドラー 27歳
人種:異世界人
詳細:閲覧不可
こんな感じか。つかお前も異世界人だったじゃねえか。スキンヘッドで茶色い目だからって誤魔化せると思ってんじゃねえぞ!で?一般の方は?
タイキ・ヤマト 25歳
人種:異世界人
詳細:閲覧禁止
詳細情報閲覧禁止はひとまず置いといて、異世界人か・・・。
「おいおい、覗き見は終わったかい?お嬢ちゃん?」
「許可無しで人のことジロジロ見てんのバレバレなw」
「おいおいやめてくれよ。ただでさえ半裸スキンヘッドのおっさんと影と顔も薄いおっさんの2人じゃ覗きどころか見る価値すらない!」
「んだとてめゴラァ!!」
炎魔法ーーー炎獄掌打
地魔法ーーー裂帛割地
炎で形作られた竜の掌が凄まじい勢いでこちらへと突っ込んでくる。
「甘い!!」
マフラーを引き抜いて弾き、ニックの姿を視界に捉えようとした瞬間、その隙を着くようにしてニックが茶色い波動を纏ってタックルをかましてくる。
「おらあああああ!!!」
岩がぶつかってきたと思うほどの威力で後ろに飛ばされ、気に激突する。・・こいつら、地味に連携上手いな。さすが同じ異世界人なだけはある・・。この振る舞い方的に切り札的なのもあるんだろう・・まあ、関係ないが。
「いててて・・。」
あーあ、額から血が出ちまってるよ全く。こりゃあ後で止血とかしとかねえとダメだな。まあ、それも今が終わったあとでいいか。
「・・どうだ?痛えだろ?連携ってやっぱこういうのだよなぁ!!1人じゃあできることなんざあんがい少ねえもんだぜ嬢ちゃんよぉ!!」
2度目のタックル。・・いや、持ってた斧どこやったんだよお前。さっきから肩で突進してきてるだけじゃねえか。ワンパターンすぎて余裕で躱せるっての。んで、次。魔法は・・
「そこだろ?」
「ぬぉっ!?」
雑に折って、先を尖らせた木の棒を一本草むらに投げつけ、目があるだろうとこに投げたから、多分瞑ってるはず・・よし、目は閉じてた。視界を塞いだ後衛魔法使いなんか辺り一帯に魔法打つしかやることねえんだよ。
「さぁて、裏取っちゃったよヤマトさん?」
「なぜ俺の名を!?」
「さぁ、何でだろうねぇ?」
おそらく年齢的にラノベとかを相当お読みになっていた年頃。・・であれば、
「分析スキルか・・!!」
「御明答!ま、今更わかっても遅いけどな。」
棍棒状に固めたマフラーを後頭部に向かって思いっきり振り下ろし、気絶させると同時、
「そろそろだな。」
ダイナミックに突進を敢行して草むらを突き破りながらニックが姿を現す。草むらが揺れた段階で真上に飛び上がり、枝に昇って見下ろす。いや〜高みの見物って気持ちいいな。
「なっ!?タイキ!大丈夫か・・・」
「はぁいちょっとうごかないでねぇ・・。」
大和大輝が腰裏に隠してた短剣をニックの喉元に突きつけ、真後ろからその背中に張り付いて猫なで声で静止を促す。
「・・・わかった、俺の負けだ。」
よし!屈服成功。寝そべらせて腕を後ろに。縄でその手を結んでさらに体を木に縛り付ける。あとは情報引き出して・・
「ふっ、油断したな!!」
「これで終わりだ!!」
炎魔法ーーー『炎獄烈火球』
地面魔法ーーー『岩土竜顎撃』
頭上に現れた極大の魔法陣から業火で出来た紅蓮の球が放たれ、同時に地面から龍の顎を象った岩石が噛み付いてくる。
「ま、分かってたけどね。」
異世界人と言えどこんなもんか。なんかすごい技でもあんのかと思って待っててやったが、大してこっちのヤツらと変わらんようで。
「真上ががら空きだね。」
垂直に飛び上がり、岩龍の噛みつきを回避。同時に現れたもう一体に少し驚きつつ枝を利用してさらに高く跳躍し、もう1体の噛みつきに合わせて足を強化。
血液魔法ーーー血装:脚
右足を覆うように一瞬で展開された血の鎧で火球を下に向けて蹴り落とし、岩龍の口の中にシュートして爆発させる。少し森に火がついてるけど、まあ概ね大丈夫だろ。直撃よりかはマシだ。と強引に決めつけ、歩いて2人の元へ。
「で?まだなんかあんの?」
少し殺気を放出して凄んだら、あっという間に後ろに手を着いてズザザ!とすごい勢いで下がっていった。
「いや、逃がさんよ?」
一瞬で後ろに回りこみ、拘束。大和の方はこの時点で気絶しちまったようだけど、片っぽが生きてて話せるなら問題ない。
「お前ら、誰に雇われた?」
ドスのきかせた声で脅せば、あら不思議。こんな幼女相手に本気で怖がって漏らしながらも話してくれたよこのおじさん。・・そんな怖がんなくってもいいのにさ。
結局最後まで大和くんは起きなかったからニック君にだけ言っておこうかな?
「最後に、確実にしとめられなきゃ切り札って言わねえんだよカス共。」
睨んでただそれを言い放ち、背を向ける。あぁ、一応幼女っぽいことも言っといた方がいいかな?
「それじゃおじさん達。まっねぇ〜!」
俗に言うブッた喋り方だが、まあいいだろ。幼女の声の出し方とか知らねえし。
後に大和は語る。生きて帰ってこれたのが不思議だったと。ニックは語る。最後は正直吐きそうになったと。
行った思ったら急に後ろ向いてきて、さっきまでドスの効いた声だったやつが凄いなんかぶりっ子みたいな声でおぢさんとか言ってきたらそりゃめっちゃ怖いよねって。




