82.絶望はまだ終わらない
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「っしゃああああ!!!倒したぞおおお!!!!」
アブセルが歓喜の雄叫びを上げ、拳を天に突き上げる。それにならい、俺もブラドさんも他のみんなも空に向かって拳を上げた。
「いや〜大変だった。」
「これ・・・屋敷どうしましょう?」
「ん?・・・あ。」
倒壊した屋敷の上に巨人がもろに顔から突っ込んだ事で更に酷い有様の屋敷を見て、アリスさんが顔を青ざめさせながら独り言る。とうの巨人はと言えばとっくの昔に灰になってそこから消えていた。
「壊すだけ壊して死にやがったっすね。」
「大丈夫、僕に考えがある。」
アリスさんの肩に手を置いて、ブラドさんが慰めるように口を開いた。後ろの方ではみんなが喜ぶ歓声が大きく何度も青空に向かって響いていた。
「・・・というわけで、王。」
場所は変わって魔眼会議の円卓。事情の一切合切をブラドさんが説明し終わり、一段落着いたところで、俺が話を切り出す。
「今回の功労者はグレイアス家ってことになるから、その屋敷を何らかの形で補填してくれません?」
そう、あそこまでボロボロになったらさすがにブラドさんの魔眼でも直せないとの事なので、考えた末に出たのが王に金で強引に直してもらおうってことだ。そんで、今回1番敵を葬り、ほとんど単独でヨルムンガンドを倒した俺とアルデイルが王にそれを進言することになったのだ。
「ええ、私からも頼みたい。あの場所の時間がなければ、きっと私はこのような形でここに戻ってなど来れなかったでしょうから。」
「ふむ・・・。」
「王様。僕からもそこはお願いしときたいことだね。内のギルメンの大切な実家だ。それに、功労者の家を直すことを躊躇うほど、王も心は狭くないでしょう?」
「・・・そこまで言われずとも直すつもりではあった。ただ、お主らの言葉も確かに私に届いたと言えよう。決心がついた・・・アリス・フォン・グレイアスよ。」
「は、はいっ!」
「お前をグレイアスの分家・・・グレイアス準男爵家の当主に任命する。次いで、最初の任務だ。グレイアス本家・・子爵家か・・の家族をお主の家で引き取ることを命ずる。・・・引き受けてくれるな?」
え?准男爵?・・・え!?貴族階級ってこと!?!?
「・・・は、はっ!!ア、アリス・フォン・グレイアス準女男爵!!謹んで拝命致します!!!」
「此度の功績、誠に見事であった。・・最後に、クラリスとは私も古馴染だからな。色々と融通は利かせてやろう。領地は渡せんが・・・別邸の一つや二つ、貸さない男では無いだろう?」
つか、ここでアリスパイセンを貴族にするメリットってなんだ・・・?特に何もない気が・・・。
「アリス君の屋敷は今回、謎の魔力災害で壊れたということになる。なぜなら、魔眼会議のことは表に出せない重要なことだから。で、そうなるとアリス君のお父さん・・・クラリス・フォン・グレイアスさんの面子が立たなくなる。だから、彼女の娘で凡才であったアリス君が新たな魔力効率論を発見したという体で彼女を貴族階級に押し上げたってことだよ。要するに、魔法の名門の家で大規模な魔力災害が起きてしまったらその家の沽券に関わる。だから、アリス君を貴族に押し上げて功績を増やせば、チャラになるってことさ。それに、最悪領地とかも取られかねない問題だからね。」
「なるほど・・・。」
「勿論、一般貴族ではこんなことにはならない。けど、アリス君の家が代々伝わる魔法の名門の家だから出来ることなんだ。まあ、それがなくても王なら他の手段で何とか出来たかもしれないけどね。」
「屋敷を周りから隠しながら建設とかできないんすかね。」
「そんなことできる魔力を持ってるのなんかこの国でもごく少数だし、以前屋敷があった場所から急に屋敷が消えたら怪しむだろう?王はそれを危惧してこのような措置を取ったんだよ。」
「なるほどねぇ・・・。」
さっぱりわからん。難しいことなーんもわからん。よーするに功績と汚点でプラマイゼロにしたってことか?まあ、ブラドさんや王がそう考えてそう処置をしたなら、俺にはなんも文句はないかな。強いて言うならアリスさんがギルドからいなくなる可能性があるのが寂しいぐらいか。ま、しょうがない事だろ。貴族社会はこれで片付けんのが1番よ。
「さて・・・。で?ルイズ達、お前たちから報告は無いのか?」
・・・そうだった!!忘れてたぜルイズパイセンたちはなんか道中で急にでかい気配が出たから放っておけないっつって馬車降りて駆けだしてったんよな。確かシュトロハイムさんとエルフの・・・クリマさんだったか?と一緒に行ってたんだよな。黒装束が伝えているとは思ってたけど、俺らの送迎に負傷した時の回収、王への報告とか、ブラック企業も裸足で逃げ出すレベルの酷使だろ。流石に忙しすぎんか?・・・まあそれは良くて・・
「僕らはみんなと離れてすぐ、北の方にでかい気配があることに気づいて、そっちに走っていったんすよ。そしたら急に爆発音が響いて、通ってた森が開けたと同時に、街を襲う、上半身が女、下半身が蛇のでかい亜人みたいなのが炎が着いた手を振り下ろしてて、直後に襲われてた街の3分の1ぐらいが吹き飛んでいきましたね。すぐさま魔法を放ったり魔眼使ったりしたんすけど・・」
「時すでに遅し・・と。」
「ええ。次に蛇女が放った火球で街が吹き飛び、僕らも避けれずに喰らってしまい、つい昨日まで治療してました。」
「なるほど・・・エルフの頂点と現代の最強、伝説の英雄が3人で行って叩いて尚届かない強さ・・・か。まさしく化け物だな。・・キト、そのような形の魔物に心当たりはあるか?」
「・・・確証は無いけど、ラミアっていう魔物っすかね。ただ、俺の覚えてる大きさと全然違う感じだったんで違う可能性は無きにしも非ずっす。」
「・・・分かった。一先ず其方には監視をやって、お前達は傷を癒せ。全員が治った頃にまた会議を開く。」
「りょうか・・・」
「いえ、その必要は無いですわ。」
銀髪がたなびき、立てかけてあった長杖を持って口を開いたのはレアだ。・・・そういやこいつ治療の魔法持ってたな。
「私なら、皆様の傷治せますわ。」
そう啖呵をきり、目を瞑って詠唱を始めた。あまりの突然さに、全員が黙って彼女を見る中、瞼を開けたレアが一言
「治りなさい」
古代魔術ーーー『水癒抱擁』
長杖の先端から大量の泡が出て全員の傷に付着する。全てが出し切られ、泡が弾けた瞬間。瞬く間にその場にいた全員の傷が塞がり、皮膚が甦ってツルツルとなった。
「すげぇ!!」
「レアさんあざす!!」
「これは・・・凄いわね。古代魔術をここまで習熟してるなんて。」
口々に褒められ、満面の笑みを振りまいて皆を見渡すレアはそっとミアの隣に座り、机の下で小さくガッツポーズをしていた。・・・あのですね、さっきからもうほんとキモイぐらいアルデイルがレアさんのこと見てんだけど、なんかしたんすか?怖いよもう。直視できないくらい怖い!
「ああ・・・レア様!お美しい・・・!!」
おぅ・・・。ノーコメントで。んで?取り敢えず巨人サイズの目型の蛇がまだ残ってんのか。普通そんなんがいたらすぐ見つかるはず・・・てことは、何らかの隠密能力を持ってると考えた方が早い・・・か。
「・・・さて。皆の者、大儀であった。ついては来週、また定刻に会議を開く。各々備えておけ。・・・では解散!!」
王の口上が終わった瞬間、視界が暗転し気づけば王都アークの暗殺者ギルド仮ハウスの前に。ブラドさんがドアを開け、中に入った瞬間。
「ふぅ・・・おかえりだお前たち。」
「えぇ、只今です王さ・・・え?」
「私は少しそこの小娘と話があるのでな。他の者はここから去れ。なに、すぐに終わるよ。」
そう言われ、俺だけ腕を掴まれてその場にぽつんと立たされた。王命だからってみんなちょっと薄情過ぎやしませんかねぇ!?
「すぐに終わると言っただろう?ほら座れ。」
「いやそんなナチュラルに隣に座れと言われましても・・・。」
「で、話というのはだな。」
この女っ・・!!無視しやがって・・・!!
「まあ黙って聞け。」
いや一言も話してないんだが!??俺の口が開いてるように見えてるのかなあなたの目には!?
「顔がうるさい。」
ピキッ
こ、こいつぅ・・・。
「いいから聞け。話が進まん。」
「・・・はいはい、分かりましたよ。」
「お前のせいでだいぶ時間が経ってしまった。お前のその頭でも理解できるようなるべく簡単に言ってやろう。私に感謝しながら聞けよ。」
我慢だ・・我慢だ俺・・。じきに終わる・・。注射みてえなもんだと思え。一瞬だけ、いっしゅんだ・・・
「お前が言っていたラミアという魔物・・・。出現したのはどこだと思う?」
勿体ぶりやがって。
「とうせ公国でしょう?それを言いにわざわざ来たんですか?だとしたら貴重な情報ありがとうこざいます!」
「そうカリカリするな、不正解だ。正解は・・・」
辺境の村『カルテス』。
俺が産まれ、育った村だ。
Qキト達どうやって帰ってきたの?
A黒装束の転移




