80.VSフェンリル
更新です。
昨日書けなかったのは、作者が寝落ちしてスマホの充電がなかったからということをここに表明します。誠に申し訳ございませんでした。はい。
アリス・フォン・グレイアスは4人兄弟の末っ子である。長男と次男は西の島国にある優秀な学校を卒業し、魔法や勉学に長けている。特に次男の魔法への才能は目を引くものがあり、グレイアス家の期待の星とまで言われていた。が、次男はそれでいて謙虚であり、妹思いの優しい人間だった。故に兄をたて、自身はそんな兄の補佐として日々を送っている。長男は至って平凡な人間であり、それ故か他者の気持ちをよく分かり、その人が本当に必要としてることを理解して行える人間だった。面倒見がよく、僻むことの無い彼はとても良い貴族の鏡のような人間と言えるだろう。長女・・・つまりアリスの姉は魔法ではなく武術の才能に長けており、公国のさらに東側に拠点を構える【大東武神流】始まって以来初の女での一番弟子として名を連ねている。そんな代々天才や人格者の家系に生まれたアリスは平々凡々なごく普通な人間であり、努力することを人並に嫌がり、兄や姉の才能に少なからず嫉妬し、自分の生まれを呪うような日常を送っていた。今の仕事だって、最初は冒険者ギルドの受付に就こうとしたのに落ちてしまい、カーネリアに拾われた形なのだ。つまりは天才の家系に生まれた凡才。周りの貴族からは蔑まれ、グレイアス家唯一の汚点として祖父母からは扱われた。最も、父や母、兄弟達はそんな彼女を対等としてみて接していたのだが。
長女が例外なだけで、本来グレイアスの家は魔法における天才達が排出される家として都市国家内でも名を挙げている。例えばかの英雄サンダル・フォン・グレイアスがそれに該当するだろう。アリス自身もどれだけ蔑まれ、馬鹿にされようと魔法の勉強はともすると兄や弟以上に行っていた。・・・それ故か、はたまた最初からそういう才能だったのか、それは誰にも・・それこそ本人にすら分からない物だが、彼女は魔力を扱う際に放出される無駄な魔力がほとんど発生しない体質だったのだ。そして、長年の本人の努力によって得た魔力操作と外付けのアクセサリによる魔力の補填。そして、グレイアス家に代々伝わる魔力の体内保存という特異体質が無かったことによって、彼女は体内に魔力管という、第3の管を生成することが出来た。前置きが長くなってしまったが、改めて、簡潔に彼女の身体に起きていることを説明するのなら・・・
「らああああああ!!!!!!!」
彼女は体内に走る魔力管を通る魔力を利用して自分の肉体を強化している。故に強力な出力での魔法や物理攻撃を可能とし、更には彼女の魔力効率を限界まで高めた無駄のない魔力の行使によって、全力を出し、死力を振り絞って彼女が魔法を発動した場合・・・
炎魔法ーーー火焔魔球
展開されたのはごく普通の赤い魔法陣。放たれるのはピンポン玉サイズの『白い』火球。極限までその炎にやどる熱量と魔力、威力を圧縮したそれは、本来のような野球ボールのような軌跡を描いて放たれる初級魔法とは違い・・・まるで極太のレーザーのような一直線に一瞬のみ軌跡を描いて放たれた。
「GYUAAAAAAAAAAAAAA!!!!!??」
突然土手っ腹に空いた風穴と急激に襲ってきた熱と激痛にフェンリルが悲鳴を上げて身悶えする。白銀の毛皮に血が赤い軌跡を残して滴り落ち、顔が苦痛に歪んでいく。同時に、貫いた瞬間に火球が蒸発し、その場にアリスがぶっ倒れた。
「どうやら・・まだ、この威力は・・・キツかったよう・・です。」
受け身も取らずに倒れたアリスは、その場から離脱しようにも指一本動かせない様子でフェンリルを見つめる。
「威力はあっても・・・規模がこれではね・・・。狙いもそれましたし・・・。」
顔を苦痛に歪ませ、腹から血を滴らせながらフェンリルが吹雪を起こし、アリスを見下ろす。
『お主の技・・・確かに我に届きうるものではあった・・・が、やはり人間。軟弱で矮小なる者共では我には勝てぬ!!』
口上と共に振り下ろされた鉤爪は、確かにアリスの体を捉え、彼女を殺しうるものであった・・・が、それを阻む者が居るのなら、その攻撃は意味をなさない。
『なっ!?』
「アリスさん。」
「よく気張った!!」
クロスする紫電と漆黒。雷光が迸り、鉄剣が閃いて青い爪撃を確かに弾いた。
「なあ犬っころぉ!アリスさんに手出すならよお!」
「僕たちを倒してからにしてもらおうか!!」
紫電魔法ーーー紫電鳴神
武器魔法ーーー飛来撃斧
ドレットの体を覆うようにして紫電の衣が展開される。同時に宙に展開された十数の魔法陣から、一斉にトマホークがまるでミサイルのようにフェンリルを襲う。
駆ける紫電が瞬時に肉薄し、同時に到達したトマホークを握って、その体を切りつける。
「GRRRRRRRRRRAAAAAAAA!!!!!!」
咆哮と共に前足が振るわれ、氷の鉤爪が空気を切り裂いてトマホークと激突する。瞬時にドレットは手を離し、飛来してくる他のトマホークをフェンリルに蹴り飛ばしつつ後ろに下がる。
「スイッチ!」
「応!!」
ドレットと入れ替わるようにしてルースが前へと駆ける。
武器魔法ーーー飛翔乗剣
足元に展開された漆黒の魔法陣から黒塗りの剣が召喚され、その上に乗ってまるでサーフィンのように魔力を放出しながら前へと進む。
氷魔法ーーー氷杭
展開された蒼色の魔法陣から、いく数本もの巨大な氷杭が放たれ、剣に乗ったルースを襲う。その尽くを避け、躱し、流して進む。最後の1本を避け、前方へと空中で宙返りした瞬間、勢いよく狼の身体に漆黒の剣を振り下ろした。瞬間、叩きつけられた刃が根元から折れ、フェンリルの顔が歪み、ルースの顔がくやしさで滲んだ・・。
「と思ったか?」
「!?」
直後、両者の顔が反転する。ルーフの笑みが広がると同時、白銀の体に撃槍が突き刺さり、紫電が軌跡を描いて駆け抜ける。瞬間、槍の石突きに紫電を纏った豪脚と漆黒を携えた剛拳が激突する。・・・更に奥へと押し込まれ・・・炎が走る。
「あああああああ!!!!!」
限界までの強化。体の損傷や疲労、その後の苦痛など度外視した、必殺の一撃がそれまで倒れ伏していたアリスから放たれる。
瞬間、僅かな抵抗を重ねて・・・フェンリルの横っ腹に、本日二度目の風穴が空いた。巨体が倒れ、アリスもまたその場に倒れ・・・ずにルースとドレットが支える。見据える先には死んでいく狼王。
フェンリルVSアリス、ドレット、ルース、ここに決着。




