7.とんでもねえのが出やがった
1面の銀世界が一転、視界を覆う全てが白く染まり、身動きを取れなくする。そう、端的に言うならば俺は今吹雪の中、薄着で防具も持たず雪原の中で立ち尽くしていたのだった。
「え?え?どこだよここ?は?」
脳内に次々とクエスチョンマークが浮かび上がり、それら全てが一体に響き渡った雄叫びのような『遠吠え』によってかき消される。
「WOOOOOOOOOONn!!!!」
「・・・」
まずいまずいまずいまずい!!!こんな足場不安定の場所でどうやって・・・っていうかまずなんで俺はここに!?魔物か?だとしたらなんの魔物だ?
再び脳内で繰り返されるクエスチョンマークの押収。しかし、突然飛んできた殺気と鉤爪が思考を中断させ、反射的に俺に全力の回避行動を撮らざるを得なくさせる。
「GRRRRRRRRRR・・」
吹雪の中から現れたのは全身が白い雪に包まれたような、純白の狼であった。ちなみにもう分かると思うけどめっちゃでかい。
「えこいつと戦えと?無理じゃね?まず武器がねえから戦えないって・・・。」
まあ、それでもやるしかないのならやらないとだよ・・なっ!!
踏み込み一閃、右と左の拳を強く握り、オオカミに肉薄。腹に一撃をぶち込み、噛みつきをバックステップ・・ではなく、ライトステップで避けてまた顎にパンチを食らわせる。
「イノシシよりも早い分、身体は重くは無いからパンチとかで飛ばしやすいな。」
そう呟きつつ、ヒットアンドアウェイを繰り返していき、確実にダメージを与えていく。そして、奴が両前足を一気に振り下ろして地面に叩き付けた直後、一瞬の間をおいて、やつの体が硬直。
「隙アリィ!!」
地面に足を叩きつけた反動なのか知らねえが、とにかく奴は今動けない!だったら・・・
「技名なんかなんも決めてなかったけどとりあえず適当につけた結果の『翡翠連打』!!!!」
雪の上で思いっきり前にジャンプし、狼の背中の顔の前に着地。それと同時にやつの顔面を蹴って蹴って蹴りまくり、最後にやつの首上で踏み切って上へと跳び、一瞬の間をおいて急降下。落下の勢いと全体重を乗せたかかと落としをやつの背中で炸裂させた。
ゴキッ!
という嫌な音が鼓膜をふるわせ、それと同時に狼の背中が折れ、狼が静かに横倒しになって倒れた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
めっちゃしんどかった・・。常に前と後ろに移動しつつ俺とやつの間合い管理を徹底してようやく勝てたような、そんな敵だった。
・・・でもこいつなんかあの時のイノシシより小さくねえか?猪はもうちょっとでかかった様な。
その時、またしても視界が吹雪によって遮られ、遠吠えが響き渡った。ふと、いつの間にか手に握っていた牙を見てみる。
「・・・雪原に住む、白銀の狼、魔物の王的存在、異名は雪銀の王、おとぎ話にも登場するような、れっきとした・・・魔獣。」
影が俺の身体を覆い尽くした。と同時に先程までとは比べ物にならないほどの殺気と威圧が俺に向けて放たれている。
『我らの末子を殺したのは貴様だな?』
「しゃ、しゃべっ!!?」
『ああ、我らにとって人の言葉を話すことなど実に容易なことである。故に我は貴様と話す。』
「・・・その前に、1個聞きたい。ここは・・・どこだ?」
『ああ、ココは神をも喰らう獣の住処にして、我らフェンリルの住まう領域!その名も【ブリザード・プリズン】!!!』
「・・・・」
想像以上にヤバい場所だなここ。っていうか、なんでそんなとこに俺がいる?ただ水晶の光に呑まれただけなのに・・・。
『そして我は、フェンリルの長として貴様を殺し、我が子の仇を打たせてもらおう!!』
とんでもねえのが出やがった・・・。