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これホントに暗殺者の仕事なの?  作者: 羽根ペン
2章 戦争編
77/242

76.或いは挑戦して散った者であるが故に

ちょっと短いけど更新です。


或いはそれは悔いと絶望の渦であり・・。

「誰か!包帯!!このままだとこの子出血多量で死んじゃう!!」


屋敷に響く怒号。緊急で布や毛布が敷かれた広間の床。ここはアリス・フォン・グレイアスの生家。グレイアス領の屋敷、その一室にして最大の面積を誇る大広間。


「っ・・あ・・。」


うめき声と共にドレットは目を覚ます。体の至る所が激痛で軋み、腹に大きく刻まれた獣爪は内蔵の届いては行けないところに届いてる自覚があるほどに深い。未だに血が流れ続けるためか、止血の為にと施された氷魔法の冷たさが脳を冷静な思考に染める。


「うっ・・・うぁ・・・」


隣のベットでは目を瞑り、脂汗を流しながら背中と胸の傷の痛みを一身に受けるルースがいた。ドレットは自分の横に備え付けてあった氷水で濡れたタオルをルースの顔に当て、その脂汗をそっと拭いていく。何故助かったのか、ここはどこなのかすらも頭に入らず、ただ目の前のルースを助けるためにドレットは手を動かし続けた。








「ぐっ・・・ぬぅ・・。」


体全体に刺さっている岩を、アブセルは呻きながら1本1本抜いていく。自身の誇る恐ろしい密度で固められた筋肉の装甲すらも容易く打ち破って突き刺さった岩の勢いと威力が、あの時の巨人がどれほど規格外の存在であったかを物語っている。両隣に眠るブラドとエイブルは二人共がまだ意識の暗闇から戻ってこないまま呻き、治療師によって体に刺さる岩を抜かれたり、直撃した打撃の回復に務めている。


「ぅあ・・が・・・」


また1本体から岩を抜き、そこから流れる血を筋肉で固めて止血する。たったの二手。たったの2回の攻撃でここまでのやられよう。最後に見たあの巨躯にして不気味な程に静かなその異様。それだけで、この三人に絶望と勝てないことを感じさせるのには十分過ぎるものだった。決して口には出さないものの、アブセル自身があれに勝てる自信もあれを自分の下と見る愚かな思考をもちあわせていなかったが故に、恐怖と絶望がただその体を支配していた。








「う・・あ・・ぐっ・・・」


あの後、意識が復活するまでに何時間、何日経ったのかは分からないが、激痛で呻いた自分の声で目を覚ました。熱があり、体もだるくて。何より、癒えてすらいない体の傷が開いた鈍痛や苦痛によってまた意識を手放すことになったが、ミアレア姉妹らしき影が近くにいたのは覚えている。あいつら結局、俺が倒れるまで手も出せなかったんだろう。しょうがないと思う反面、何やってんだよと思う自分もいる。取り敢えず回復したらブチ切れてぶん殴ってやろう。そう固く決意した。


「ッグ・・あぁっ!!」


激痛に次ぐ激痛。貧血の時よりもなお酷い頭への鈍痛。息を吸う度に全身に痛みが走り、それによって頭痛がもっと酷くなる。悪循環ここに極まれりであり、聞こえたのは「血が足りない」という言葉だけ。立ちくらみは立てないから判別できないが、この頭痛は貧血によるものだろう。新しい輸血パックが装填され、俺の体に血液が流し込まれる。それは例えば暑い時にキンキンに冷えたジュースを飲むことと直結するような気持ちよさで。たちどころに軽くなった頭痛をまだ引きずりつつ麻酔でも打たれたのか一気に来た眠気で泥のように意識が落ちていく。カーネリアさんが心配そうにこっちを見てるのが見え、何もしてやれない自分が不甲斐なかった。


「・・・・・ふぅ」


目覚め、最初に確認するのは場所。自分が今どこにいるのか、どんな状態なのかを確認する。これはとある人・・もとい、俺の師匠的な人から言われたことだ。状況の判断と自分の場所、今が何時なのかは常に把握しておけって言うのが口癖だったなあ・・・まあもう会えないけど。まあとりあえず今いんのは誰かの屋敷。距離的に多分アリスさんの家か?あとは誰が運んでくれたかだが・・・ヨルムンガンドの目の前で馬車に俺ら乗せてはいさようならなんて出来るわけねえんだから、それこそベルパイセンレベルの転移使いじゃないとこんなこと出来ないわけで・・でもベルパイセンはたしか今国外任務だからいないはず・・となると、俺らをここまで転移はこんで来たのは・・・


「黒装束・・・」


「キト君!!目が覚めたのね!!」


「え?あ、おわぁっ!!?」


か、カーネリアさん。息が、息があああ!!全力で抱きつきとのしかかりを喰らい、俺の意識が一瞬飛びかけた。というか飛んだ。まあすぐに現実に引き戻されたが・・・しかし、改めて考えてみると俺はあそこであの蛇野郎にコテンパンにやられた訳で、しかも最後のあのクソ長膠着。なんだよあれ。理不尽がすぎるだろ。どうやって倒せっつーんだよあんなの。思い出すと同時に怒りと自身の弱さ、圧倒的なヨルムンガンドへの絶望感とかが湧き上がってくるが・・


「このまま、負けて終われるかよ。」


それ以上の悔しさが、あの理不尽硬直への屈辱が、それら全ての感情を塗りつぶして俺の意思を、心を加熱しスパークさせる。


「やってやろうじゃねえか!!」


そうして勢いよく立ち上がったはいいものの、一瞬の間をおいて激痛が身体中を駆け巡った。思わず涙と絶叫が体からこぼれ、慌てて離れたカーネリアさんの「安静にしないとダメじゃないの!!」という言葉を最後にまた意識が暗闇に落ちていった。・・絶妙に締まらねえが、まずはこの傷を直すとこから始めねえとだな・・。つか俺の体に最初にのしかかって負荷かけたのあなたですよねカーネリアさん。

或いはそれは憤怒と憎悪の後悔で・・・。

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