6.え?どこ?ここ?
とまあ意気込んで隣町に来た訳だが、到着から既に2時間。未だに教会に着いてないです。理由は簡単。
「これにしようかしら、でもやっぱりこっちも・・・」
なんでかは知らないけどラミアさんが買い物をしてるのだ。しかも大量の服を。中には外出用の外套やそれいつ着るの?ってなるレベルに真っ黒な服もあるし。
「ん?ああ、ちょっと待っててねキト。コレ買ったら教会に行くから。」
さっきからずっとこれだよ。なんなんだ一体・・・。
「お会計は22000モネになります。」
「はーい分かりましたー。今出しますねー。」
ラミアさんは自分の財布をカバンから出し、22000モネ(モネはこっちでのお金の単位)をレジの人に渡した。そう、なんとレジがあるのだこの世界。ここまで来ると明治時代の外国と言うよりかは昭和戦後レベルの文明ありそうだな・・・。
ゴーン・・・ゴーン・・・
ちょうど教会の鐘が鳴り、現在時刻が午後の2時であることを示した。
「ふぅ・・ちょうどいい時間だし、そろそろ行くわよ。」
「了解でーす。」
2人揃って教会へ向かう。他人の目には俺らは姉妹っぽく写ってるんだろうか?時々隣を通っていく人が、ラミアさんを見たあとに俺を見ると目を伏せて立ち去るか蔑んだような目で見てくることがあった。どーしたんだろ?
「さて、ここが教会よ。さっさと手続き済ませちゃいましょ?」
「えーと・・先ず名前と、種族?を入力してください?」
この世界の文字はまだ読みも書きも難しいんだよな。まあ、ひとえに勉強サボってたからだけど。
「ラミアさん。俺の種族って何?」
「ああ、人間よ?」
「OK。」
名前:キト、種族:人間、年齢:10歳、性別:女・・・と、なんだこれ?個人しゃしん?
「ラミアさん。個人写真ってあるけどコレ何?」
いやまあ、個人写真ってのは分かるんだけどどうやって撮ったりするんだろーな。って思っただけで。
「ああ、忘れてたわ。いいわよ。今とるからちょっと待ってて?」
そう言ってラミアさんは協会の奥の方へと歩いていき、何やら司祭っぽい人に軽くお辞儀しつつカメラを借りて戻ってきた。
「じゃあ、写真撮るわね?笑わないで。ポーズも取らない!真顔でね。ハイ、チーズ。」
一瞬、目がくらむほどのフラッシュが炊かれて、直後にパシャッ!という音が鳴った。
「と、撮れましたか?」
「ええ、バッチリよ。確認してみて?」
そういや、自分の顔とか髪の毛とかしっかり見たことあんま無いからどんな感じなのか知らないんだよな。俺。ほら、キトの時はテンパリすぎてて動きしか見てなかったし。深層意識でキトと似合った時もお互いに光の粒子が体に取りついてるみたいな状態だからよくわかんなかったし。
(めちゃめちゃブスだったらどうしよう・・。)
「ええい、ままよ!」
今からそんなネガティブに考えてどうする!美少女かもしれないじゃないか!!そう考え、掛け声と共に伏せられていた写真を捲る。
「えっ!??!」
めちゃめちゃ美少女やん。肌の色は褐色で日焼けしたかのような浅黒い感じ、髪の毛は流れるような銀髪で、手入れが行き届いており、セミロングぐらいの長さになっている。
「か、か、可愛っ!!?」
ま、待て待て待て。一旦落ち着こう。一旦な。一旦・・
そう自分に言い聞かせ、裏返しにして見えないようにし、深呼吸する。・・そしてもう一度自分の個人写真を見て・・・。
「可愛いいいいいい!!!!!!!」
全力でそう叫んだ。だって美少女とかヤバすぎんだろ。しかも銀髪!?褐色肌で銀髪とか、エグすぎてやばいわ。俺の性癖にクリティカルで刺さってくるわ。
急に叫んだ俺に対してドン引きの目を向けてくるラミアさん。
「そ、そう・・良かったわね。可愛く産んでくれた両親には、その、感謝しないとね。」
「はい!」
いやー、顔も見た事ない父上と母上よ。こんな美人に産んでくれてありがとう。・・・本当にありがとう!!!
涙を流しながら、俺はいつの間にか神像の前で祈りを捧げていた。
・・・はっ!?あまりにも自分の写真が可愛すぎておかしくなっていた!!今何時だ!?
「・・ら、ラミアさん。今ってちなみに何時ぐらい・・ですか・・ね?」
「あれから1時間半だから、ちょうど3時半ね。」
どうやら俺は1時間半ほど自分の写真と神像を交互に拝んだ挙句、泣きながら写真を抱き抱えて神像に祈りを捧げてたらしい。・・・変態か何かで?
「まったく・・・。ほら、さっさと見てもらいましょう?」
「へい。」
いやー、にしても俺は結構美人に生まれてきたんだな。こりゃあ、知ったらキトも喜ぶだろう。親には感謝感謝っとぉ。・・・そういや、ラミアさんが俺の親に感謝伝えたら?って言った時、なんか言いにくそうにしてたような・・・。ま、いいだろ。
「おや?ラミア殿。今日はどうされましたかな?」
「本日は、この子の魔法の種類・属性を見てもらおうと思いましてね。」
「おや、成程。では早速準備致しましょう。」
老齢の、シュッとした神父が協会の奥に走っていき、水晶玉を持って戻ってきた。
「これが、種類と属性を鑑定できる水晶。通称、魔法水晶と呼ばれるものです。」
なんか、通称つける必要ないぐらいそのまんまなネーミングだな。
「して、お嬢さん。この水晶でご自身の魔法の種類・属性を調べたとしてもご自身に魔法は発現しません。そこのところ、よぉくお分かりですかな?」
「はい、承知しています。」
「おお、丁寧なお返事ありがとうございます。それでは、早速初めて見ましょう!」
「お願いします。」
俺が了承の意を示した瞬間、神父が両手を掲げ、呪文を唱えだした。
「マジック・レアライズ・ディス・ゴール!!!」
一瞬で水晶が真紅に光だし、俺の体と意識が光に包まれる。光に意識が飲まれ、意識が途切れる一瞬前。最後に見たのは、俺に向かって叫ぶシスターラミアと、冷静にそれを見守る神父だった。
「・・・ここどこだ?」
目が覚めたと同時に辺りを見回すと、1面の銀世界。まだまだ雪が降り積もり続ける中、一帯に魔物の雄叫びが響き渡った。
短いですが、この辺で。