66.宣戦布告と言いますか・・・
「ん・・・ここ・・は?」
翡翠の目を輝かせ、一人の女性・・・国王が目覚める。何度か目を瞬きした後、自分の状況を理解できないまま周りを見渡す。目に入ったのはズタボロになった第5廻廊とその中心や壁の辺りで倒れ伏す他の者。しかし、ただ1人だけ血だらけになり、同じく腹部から大量に出血した者の様子を見ている。
「ん・・・」
「・・あ・・・」
続々と全員が目を覚ましていき、自分の状況を確認しようと辺りを見回して中心の少女に視線を送る。真ん中の少女は気づいていないのか、ただじっっ・・と臓物の飛び出たオスカーを見ていた。・・・ふいに少女の身体が黄金色に輝いて、倒れると同時にオスカーの腹部がみるみるうちに治っていく。
「まさか・・・!」
どうな傷でも癒す魔法の液体。伝説上の神の涙とも呼ばれるその輝きは・・・
「あ・・・?なんで俺ぁ生き・・・?」
上半身を床から持ち上げて瀕死の状態から放った第一声がこれである。次いで黄金に輝く自身の頭と脇腹を視界に入れ、ぶっ倒れた少女を見やって、どうやら納得したような顔で彼女の頭を膝に乗せ、慣れない手つき髪をすいてやった。
「ま、取り敢えず全員生きてた・・・ってことで!」
そんなルイズの緩い〆が今は何より心地よかった。
「い・・1週間・・!!?」
マジかよ・・意識が朦朧としてる間にそんな時間経ってたとは思わなかった。魔力酔いとか諸々が酷すぎて・・。
「ああ。ことの次第は既にオスカーと君が不在だったあいだの に覚醒していた君の妹君に聞いているが、改めて出頭してくれ。詳しい話もしたいし丁度いいだろう。」
てなわけで、早速昼と夕方の予定が潰れてしまった。ただでさえこの一週間は魔力酔いと疲労、出血多量のせいでずっと昏倒してたってのに・・・。にしても、俺が寝てる間にキトがいろいろ片付けておいてくれたらしい。何とは言わないが、部屋のホコリが消えてたり、冷蔵庫の中身が補充されてたり。
「ま、感謝しねえとな!とりま王城に行かねえと・・・」
ドレットパイセンの快活な声を聞きつつ部屋の外に出たその瞬間、
「だーかーらー!兄貴には関係ないでしょー!?」
「なんだとお前!?弟?妹?の事だぞ、大事にするに決まって・・・ん?おぉ!キト!おはよう!!もう身体はいいのか?」
なんか揉めてたがこっちに気づいたらしく、心配の言葉と共に挨拶が投げられる。
「えぇ、お陰様ですっかりっすよ!」
「そんじゃぁ・・・」
「キト様、ルイズ様、ルース様、ドレット様、ブラド様、王城より呼び出しがあるためお越しください。それでは・・・」
黒装束の空気の読まない硬い言葉が放たれ、次いで視界が暗転した直後に明るくなる。・・目の前には俺とブラドさん、ルイズパイセンを抜かした9人が円卓を囲んで座っている光景が広がり、王の両脇の40代・・・ぐらいのオッサン2人がこっちに向けて殺意を散らしていた。
「お主ら!会って早々王に礼も取らぬとは、不敬であるぞ!場をわきまえ、相応の態度を取れ!!」
ああ、これは・・・なんというか、馬鹿なんだろうな、こいつら。恐らく才能に恵まれただけの阿呆が調子に乗って自分が上だと錯覚しているのだろう。ここが公的な場では無いからこそ王が上座に座ってこそすれ皆より高い位置には座っていないことに何故気づかないのだろうか。
「不敬なのはあなたがたの方でしょう。ここが公的な場では無いからこそ王はそのように皆と同じ目線で、同じ高さで座っておられるのですから。」
俺が思ったことをそっくりそのままブラドさんが言及するも、
「黙れ若造が!!聞けばお主は王を守れずして【永遠之棺】に入って早々はぐれたらしいではないか!!」
「おお、それは真ですか!?そのような実力不足の者がまだここにいたとは!!いやはや魔眼スキル持ちも堕ちたものですなぁ。そうでしょう?王よ。」
つーかこいつらキトのときはただこっちを試しているとか思ってたが、素でこんななのか。・・・はぁ。先が思いやられるなぁ。これは。第1、ブラドさんの方が精神年齢は上だし、自分達が白い目で見られていることに気づいてないのだろうか。・・・気づいてないんだろうなぁ・・・。
「ふむ・・・。」
王はそこでその話に乗るでもなく、ただ入ってきて椅子に座ったらこちらをじっと見つめている。・・俺なんかしましたかねぇ?・・・え?これ俺にこの空気何とかしろって言ってる?
「にしても、攻略にまさか犯罪者を使うとは思いませんでしたなぁ。しかも噂によるとあのオスカー・ベルト・ベスターだと言うではありませんか!」
こいつらまだ話してたのかよ。気持ちわりい。早く黙ってくんねえかなあ。来てねえやつはなんも言う権利ないってのに。
「しかもあやつは死んだとか!」
「なるほど、処刑ついでに連れて行ったのでしょうなぁ!まぁ、この国から犯罪者が消えて良かったというものです!!」
「犯罪者など所詮そのような者でしょうとも!!」
はいプッツン来ました。こいつら殺します。
「おいおいオッサン達よぉ。流石にそれは無いんじゃねえの?」
気付けば口から言葉が漏れていた。
「なんだ?まさか貴様犯罪者を庇うというのか?」
「王よ!やはりこのモノは反乱分子です!!そしてその上司のブラドもまt・・・」
こいつらみたいな馬鹿には実力行使がいっちゃん効くんだよ。だから・・!!
血液魔法ーーー血流操作、出血
円卓の上が思いっきり吹き出した血で染る。次いで放たれた紅の拳が空気を切り裂いておっさんAの顔の右側に突き刺さった。Aが悲鳴を上げる間もなく金的で玉を潰し、Bに肉薄。多少は対応できるようだが・・・まあ弱い。顎に蹴りを叩き込んでゲームセット。不敬罪だと罵られようがまあ、大丈夫だろ。
「少なくとも臆病風に吹かれて来なかったお前らより、しっかりと着いてきて関係のない俺を助けてくれたオスカーの方がよっぽど出来たいい人間だろうよ。」
そう吐き捨て、自分の机に戻った俺は王とブラドさんを交互に見る。2人とも呆れていたが、その口は確かに笑っていた。
Qなんで王とか死んでないの?
A『童子切安綱』の効果:鬼特攻。鬼と言える者全てに対して切れ味や威力が上がる代わりに鬼の血を纏うと人を攻撃出来なくなる。つまり、7人の体の中の牛『鬼』だけを切って、7人の体は傷つけずに助けたってこと。




