64.鬼vs牛鬼
ちょっと短いけど更新です。
血液魔法ーーー【朱天童子】
その魔法が唱えられた瞬間、首元で溜まっていた魔力が一気に爆発し、開放された。鮮血が第5廻廊に飛び散る。と同時、恐ろしく奇妙な、時間が巻き戻っていくかのように飛び散った鮮血が俺の顔に張り付く。できたのは恐ろしい形相をした鬼の仮面。七体の牛鬼を見すえながら、鬼はただ腕を組みその場に突っ立っていた。
「『来い』」
牛鬼は喋らず、オスカーもまた話せる状態にない。であれば、この場で口を開いたのは腕を組む俺ただ1人。瞬間、影が蠢きその中から深紅に染った影が出てくる。最初は一体だったのがどんどんどんどん増えていき、最終的には50体の影がその場に顕現した。
「『行くぞぉ!』」
踏み込みと同時に俺の体が加速する。手に持った太刀を肩に峰を当てて担ぎ、50体の影と七体の牛鬼が衝突する。各牛鬼に対して7〜8体ずつ影が付きまとい、それを払ってる間に俺が7体を切り伏せる。
先ずは剣聖。こいつにだけは何故か8体くっついてるが、それだけ脅威ってことなんだろう。付いてくる影を振り払おうと大きく体を揺するが、影達はその体に引っ付いて離れようとしない。その隙をつくようにして太刀を振り抜き、右の三本足を一瞬にして切り落とす。
「『しゃあ!』」
雄叫びを上げて牛鬼が飛ばす鮮血を自分で浴び、紅に染まりながら踏み込む。加速し、振り抜かれた刃の先にいたのはフォルニュートとシュトロハイムの2体。計14体の影が2人の体にくっつき、離れようとしない。しっぽを降ったり魔法を放ったりもしているようだが、影は死んだらその場でまた補充される。
「残念だったなぁおい!英雄だかなんだか知らねえが、さっさとぶっ倒れてくれ御老人よぉ!」
回転しながら両者の間を通り抜け、右足の三本と左足の三本をそれぞれ切って落とす。その身に鮮血を浴び、さらに加速する。体に紫電を纏って強引に影を引き剥がしたドレットパイセンがこちらに向かってくるも
「残念でしたねぇ!今の俺は雷よりも速いんで!」
踏み込みの音すら置き去りにして駆け抜ける迅雷よりも尚速くその横を通り過ぎ、一閃。横っ腹と同時に左足三本を瞬く間に切り落とす。返り血が身体にはね、紅に染った銀の髪が赤い尾を引いて掻き消える。次いで姿を現したのは漆黒のオーラを纏う牛鬼の後ろ。
「後ろからすいませんねぇ!!どぉもお!!」
しっぽを掴んで飛び上がり、大上段から中足と後ろ足を胴体ごと切って落とす。
「BRMOOOOOOOOO!!!!????」
「はははははははは!!!!!」
哄笑が響き、全身が紅に染った俺は『向かってくる閃光よりも早く』王の体に肉薄する。前足が振り下ろされる頃にはとっくに腹下を通り抜けており、六本3対の足を全て切り落とし、床に仰向けに転がした。深紅が体を濡らした瞬間、背筋を悪寒が走る。
「来たな!」
影を全部潰した牛鬼がこちらへ向けて水色に光る眼をかっぴらく。太刀を足元から片手で振り上げつつ踏み込み、前へ。不可視の斬撃を太刀で弾いたと同時に駆け抜ける。距離で言えば20メートルもないそれを一瞬で詰め、顔面をずたずたに切った後、前足と中足を腹の下から切り裂いていく。
「BRRRRRMOOOOOOOOO!!!!!!!」
直後、轟音と共に3個の目を紅と蒼に染めた牛鬼が雄叫びを上げてこちらへ突進してくる。肉薄と同時に振るわれる前足の爪を弾き、顎を蹴り抜いて腹の下へ。足を切ろうとした瞬間に牛鬼がその場で飛び上がり、俺を押し潰さんと落ちてくる。
「させるかよォ!!」
壁を蹴って宙へと躍り出た俺は構えていた太刀を横薙ぎ一閃。前足を切り落として血を浴び、加速。同時に着地し、落下攻撃が着弾する地点で刀を腰だめにして飛び上がる。
「おおおおおおおおお!!!!!」
雄叫びと共に振るうは刃。血を浴びて紅に染ったそれは銀と赤の線を描いて一瞬のみ斬線を世界に刻み込む。真っ二つになった胴体を見て鬼は笑う。まるで酒のように溢れる鮮血をその身に浴び、高笑いと共に着地。轟音を上げて後ろに牛鬼の泣き別れとなった上半身と下半身が落下し、ゲームセット。
「さァキト!お前の出番だぜ!!」
呼び掛けに呼応し、妖しく光る紅の左眼に蠍座の紋様が迸った。
Q【朱天童子】ってどういう魔法?
Aモチーフは大江山の酒呑童子。自分で率いた配下を召喚して力を上げると共に自身の身体能力もかなり上昇させる。また、追加として召喚する刀『童子切安綱』で切った際に出る鮮血を体に浴びることでどんどんと強化されていくぶっ壊れチート魔法です。分類的には血液操作の上位互換であり、ぶっちゃけるとこれ以外にもさらに何個か血液操作からの派生はあります。
Q途中で出てきた影は何?
A精神世界内で蔓延っていた影をハンズと修行してる際に支配し、手駒にしたやつらです。こいつらは分類的には特殊状態『鬼』なので、本来は影鬼と言う存在になります。
Qあの太刀はなに?
Aモチーフは大江山の酒呑童子を切ったとされる『童子切安綱』です。




