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これホントに暗殺者の仕事なの?  作者: 羽根ペン
1章 迷宮編
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63.朱天童子

「え!?」


突然右半身が勝手に動きほとんどの魔法やスキルをその場で立ち上がってから大きくバックステップすることによって躱す。


「おお!自分じゃないやつと一緒に体動かせるってのはなんとも奇妙な感覚だなぁおい。」


え?と問いかけを投げた口で奇妙な感覚と言って退けるその者は


「お兄・・・ちゃん?」


「ああ。訳あって今の今まで助けに来れなかった。色々迷惑かけて済まない・・・」


傍から見ればなんとも奇妙な光景。なにせ、頭の左側が銀髪、右側が黒髪のショートヘアの少女(?)が1人で会話をしているのだから。それに加え、左耳がエルフのように尖っており、右耳が吸血鬼のように突き出ている。


「良かった・・・来てくれた・・・私・・私・・・!」


「ああ、一部始終は分かってる。大丈夫だ。」


左眼から涙が溢れ、それを慰めるように左側の頭を右手が撫でる。


「言っただろ?後は、任せろって。」


「じ、じゃあ・・・」


「ああ。俺で何とかする。ただ、1つキトにも手伝って欲しいことがあってな。」


「何・・・?」


てか今思ったけどこれ1人で交互に会話してんのめっちゃオモロイな。話し相手が常にそこにいるってことだろ?要するに。飽きないじゃん。人生において最高じゃん?外見てたらいきなり魂のヒビとか欠けたりしたやつが全部治って完全に球形になった時はビビったが、こうやってキトのピンチにいち早く駆けつけられたのは僥倖だったな。


「て、そんな話はどうでも良くて・・。」


「なんか、お兄ちゃんってすごい・・・こう、ね?」


肉体が一緒だから思考も少なからず共有されんのか。なるほどな。


「・・・うるせぇよ。」


「で?・・・手伝って欲しいことって何?」


自分の妹にこういうこと言われるのってなんかこうすごい・・・なんて言うか・・・。あぁ、はいはい分かりましたよ。


「左眼にだけは意識を置いておいて欲しい。キト、お前の魔眼が絶対に必要になるから。」


「わかった。」


「おっ、意外とすんなり受け入れるんだな。」


正直、ちょっとはビビると思ってたが


「私の『芯』が全てをお兄ちゃんに任せる訳にはいかないって思っただけだよ。」


さっきのオスカーの時のか・・・。敵ながら天晴れだったとしか言いようがないが、よくうちの妹を護ってくれたもんだと思う。墓参りは俺も一緒に行こう。


「よし!それじゃ!!」


右手と左手をガツンと合わせ、白銀と漆黒の髪が揺れる。左目だけが独立して動いてるのはなんとも奇妙な感覚だが、視界が両目で見るようになってるからなおのこと変な感じだ。左の視界だけすごい動き回ってる。


「行きます・・・か!!」


振り下ろされた牛鬼・・・これはルースパイセンかな?の前足の爪が俺が避けたことによって床に突き刺さり、漆黒のオーラを纏ったそれが魔力を吹き出して小規模なクレーターを作る。


「ははっ!大層な火力だこと・・・で!」


背筋を悪寒が走りぬけ、1秒もかけずに沈むようにして床スレスレまでしゃがむ。次いで上を通って行ったのは不可視の斬撃。ブラドさんのやつだな。眼が水色だし。こうして見るとみんな特徴分かりや・・・!!


「ッ!!」


咄嗟に首から引き抜いたマフラーに魔力を流し、硬化させて抜刀の構えから放たれた鋭い斬撃を寸前で弾く。


「あんたが剣聖か!!いいねぇ!ちょうどいい重さだ!!」


つってもくっそ強いなこの人。牛鬼化して自我がないから本来の力からは弱ってるはずなのにこの重さ。完全に大人しくした状態でブラドさんの全力より危険なだけはある。と言っても、そろそろ・・・


「来た!」


拮抗を食い破るようにして紫電が押し寄せる波と共に襲い来る。帯電したその体が落雷のように解き放たれ、閃光を描いて俺に肉薄。その蹴りを屈んで避けると同時に立ち上がりつつマフラーを振り上げて・・


「最初はあんただ!ドレットパイセ・・・ッ!!」


荒波から文字通り閃光が飛び出してくる。先程顔を叩き潰された恨みとばかりに顔面向けて光でできた槍が、剣が、銃弾が、矢が、大剣が、斧が飛来する。


光魔法ーーーメイド・オブ・アーク


「・・・シッ!」


槍にマフラーを合わせるも硬さが足りずに押し負ける。顔スレスレで穂先を受け流してその場から離脱するも、


「追尾型か!」


追ってくる光の武器たちを流しつつ壁を蹴って天井を踏み、床を駆けて避ける、避ける、避ける。


「・・・出来ないと、そう思っていた。」


剣が横を通り抜け、斧が目の前で振り下ろされる。


「でも、キトがやってるのを見て・・・」


槍が薙いで頭上を通り、弾丸が手を掠って壁に着弾する。


「俺がそう思ってるだけだったって、知ったんだ。」


大剣が振り下ろされ、どこからか巨人のような雄叫びが響く。


「だから・・・!!」


布魔法ーーー刃布、伸縮自在


荒く、拙い、下手くそな魔力運用。完全に刃になり切れず、どうしようもないほど中途半端にしか縮まないマフラーが血液魔法の補助を受けて形を整え、1本の先端が無く、刀身の片方に凸凹が付いたナイフが顕現する。


血液+布魔法ーーー血布万変ブラッディ・グラウン:ソードブレイカー


全方位から振り下ろされた光の武具をソードブレイカーの凸凹で挟みとって折る。


「BROOOOOOOOOO!!!!」


雄叫びを上げて破城槌を振り回す牛鬼フォルニュートの槌を右手から垂れた血で作った血液魔法の手甲で弾き、肉薄。風穴を開ける勢いで正拳突きを叩き込み、追撃のアッパーを入れようと右腕を振り上げた所で3つの赤色に光る眼がこちらを見つめた。そして、その内の一つが蒼に光ると同時、牛鬼ルイズパイセンの姿が掻き消える。


直後、荒波を叩きつけてきたシュトロハイムとルイズが同時に肉薄。両前足での掴みをバク転で躱し、左前脚の振り下ろしをソードブレイカーの刃の方で流す。


「くっそ・・・このまんまじゃ埒があかねえ。」


ドレットパイセンとルースパイセンの追撃を躱しつつ後退し、一息。決断と覚悟を同時にし、真っ直ぐに七体の牛鬼を見つめる。


「切札を切る!・・・キト!!こっからは、鬼の時間だぜ!!」


血液魔法ーーー【朱天童子】


返答はない。が、確かに激励と叱咤の声が聞こえた気がした。

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