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これホントに暗殺者の仕事なの?  作者: 羽根ペン
1章 迷宮編
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59.⬛︎⬛︎伝承

ーーー数分前、第5廻廊にて


大きな部屋に佇む一人の男。黒いローブに茶髪のそいつは目の前にでてきたモニターのようなものを操作してそこに映る者達を見つめる。


「思ったより早かったね・・・。さあ、終わらない地獄の始まりさ!精々楽しんでいっておくれよ!!」


高笑いが響き、1人の部屋に虚しく木霊していく。しかしそんな孤独は男にはどうでもよく、ただ目の前のモニター、その一点を、翡翠の目の女性を見つめ続けていた。







ーーー現在


「やあやあやあやあ!到達者の諸君!居心地はいかがかな?まあ、その目を見ればわかるとも!ここは最高・・だろう?」


なんかすごい笑ってる変なやつがデカい広間の中にいた。黒ローブに茶髪、正直パッとしない普通程度の顔に、特徴的なのはキマってる目と深いクマぐらいだろうか。両手を掲げ、哄笑する男は問いかけに移る。


「いやいやいやいや、そんなにリアクション薄くなくても良くないかい?僕らだってさ、仲良くしたいわけだし。」


「・・・」


「ね?だってそうだろう?無駄な戦いなんか君らも望んじゃいないはずだ。馬鹿なヤツらはそれでも掛かってくるんだろうけどね?」


心底イライラするような口調と声。狂人にしか見えないその男は、今最も触れては行けない部分に触れた。


「まあ、デカブツだからそんな頭なかったんだろうなあ?ただ凸ってきて殺されて、恨み言はいて終わるだけの木偶の坊なんかにはさあ。」


「おんどれがやったんかい?」


底冷えするような殺気と共に放たれる問いかけは狂人の声をさえぎって全員の鼓膜をふるわせた。


「ん?ねえねえねえねえ、今僕が話してんのわかんないかなぁ?やっぱ足りないよね君たち頭っていうか考える頭脳っていうかがさぁ?知性が欠けてるよね?だからさっきのやつらは僕に負けたし門番の四霊にもボロボロでしか勝てないんだよ。仲間意識かなんか知らないけどさぁ?そんなもんが強くたって僕みたいな圧倒的な個には勝てないんだよ。うん。そこんとこもっかいよく考えてから、僕の発言を遮るかどうか・・・」


「御託はいい。要件を述べろ。要点から話せ。」


射抜くような翡翠の目が狂人の言を遮って簡潔に述べる。


「これはこれは都市国家リオンの国王様ではありませんかぁ?申し遅れましたわたくしオルレリアス・ヒルコスと申します。以後お見知りおきを。」


ここに来てまだこいつは・・・!!全員の苛立ちが募り、シュトロハイムと剣聖、王以外の者が全員1歩前へと進む。


「止まれ。」


威圧的に上から放たれた言葉が重圧となって身体に伸し掛る。


「止まれったって嬢ちゃん、こいつは・・!!」


口を開こうとするフォルニュートの言葉を遮り、正確には睨んで黙らせ、王は改めて狂人を見据える。


「要点を言え、御託はいい。そう言ったはずだが・・・もしかして理解できない程に頭が悪いのか?だとしたら巨人よりもさらに馬鹿だな。まだ巨人達は今の言葉の意味を理解して発言する。お前はまるで理解していない。目的を言えと、ただそう言っているだけなのにな!」


まくし立てるように王の言葉が狂人に放たれる。さぞイライラしているだろうと思い、クマの深いその顔を見ると・・・


「クックック・・アァッハッハッハッハッ!!!!!」


笑っていた。腕を広げて天を仰ぎ、ただこちらを見て笑っていた。まるで滑稽な物を見たかのように。


「この・・・!!」


飛び出そうとしたルースを王が睨んで止め、狂人の様子を伺う。


「目的・・ああ、目的でしたか。私の目的?そんなもの最初からありませんよ。ククッ・・・ただ、国からの命令がプフっ・・・あるだけですので・・・w」


「命令・・・。」


「ええ、私はオルレリアス・ヒルコス。公国の武官にして、十勇士カウラージの末番、十席目:蛮勇サベージ・ヴェーラを預かっております。・・・今回の目的は、都市国家『リオン』の国王フレア・アークス・リオン・・・あなたの誘拐でございますのでね。」


そう言った瞬間にオルレリアスから伸びた『触手のような何か』が王の体を絡め取らんと凄まじい速度で迫る。あわや捕まれる・・・と思ったその瞬間に、


剣技スキルーーー抜閃


剣を抜くことなく振るわれた手刀が閃光となって触手のようなものを切り裂く。と同時にそこから吹き出す青とも緑ともつかない血が部屋を汚していく。


「さすがは剣聖!隙がないですねえ!!」


「そう余裕をこいてられるのも今のうちさね。」


空間魔法ーーー斬閃:荒波


地面にカツっと降ろされた杖から荒れた海のように不規則で不気味な程に大きく揺れる波のような斬撃がオルレリアスの体を捉え、切り裂いていく。


「これ・・・程、とは。」


そう言って、全身が切り刻まれ、血を流しに流したオルレリアスがその場で崩れ落ちる。


「我が力を持ってしても勝てないとは、思ってもませんでしたが・・・どうやら、少し話が違うようで・・。」


「こいつ、どうしますか?ひとまず縛っときます?」


ドレットがそう言って近づいた瞬間、


「まあ、勝てないとも言ってませんが・・・ね?」


⬛︎⬛︎伝承スキルーーー『牛鬼』


ボゴっ!と、嫌な音がオルレリアスから鳴り、ついで彼の体がローブの中で確かに蠢いた。


「空間魔法ーーー荒波:波涛」


瞬時に老体が接近し、変化し始めた首を叩き落として動きを止める。高く、高く飛んだオルレリアスの顔は、『笑っていた』


瞬間、シュトロハイムが崩れ落ち、次いでその体が変化する。爪は鋭く、歯は牙へ。体は大きく、巨大おおきくなって、その顔が牛のような鬼へと変化していく。足は増え、蜘蛛や昆虫のように這う形となったその姿は、正に異形そのもの。


「クックックッ!アァッハッハッハッハッ!!!」


最後に嘲るようにこちらを見すえ、首だけのまま嗤ってオルレリアスは死んだ。異形の解除方法も、対処方法も分からぬままに、異形と化した英雄との戦いが始まる。


真っ先に動いたのは私。マフラーを首から引き抜き、次いでそれに魔力を通す。次の瞬間、ドレット先輩が足に魔力を纏わせ、突っ込んでいく。


「つくづく私は、牛とかそういうのに縁があるわね・・。まあ、どうでもいいけど、そんなこと!!」


布魔法ーーー刃布


血液魔法ーーー血流操作


「よくもシュトロハイムさんを・・・!!」


紫電魔法ーーー紫電轟閃


紫電が迸り、赤い軌跡を残して銀色が駆ける。


刃のような布を一閃し、爛々と輝くその眼に赤い斬線を刻み込む。同時に放たれた紫電の蹴りが牛鬼の身体に突き刺さる・・・前に蜘蛛のような足が、凄まじい速さで私達を弾いた。たったそれだけで弾丸のように第5廻廊の壁に着弾し、灰の中から空気が搾り取られる。そして、動けない者を嬲るようして・・・


空間魔法ーーー波涛之剣


波が、視界を覆い尽くした。

Qシュトロハイムさんはなったのに、なんで剣聖はならなかったの?

A牛鬼を『倒した者』が次の牛鬼になるから。

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