56.剣聖の力
目の前に広がる草原。さんさんとこちらを照らす太陽。一体何がどうなったらあんなキレイな西洋風の城がこんな草原になるのか、皆目見当もつかない。
「結局ここどこなんですー?」
「いや、そんなはずは・・・でも確かに・・。」
「何があったんですか?」
何かを悩みだし、目の前の光景と自分の記憶の齟齬を直そうと頭をフル回転させるブラド。そしてそんなブラドを見守る2人に大きな影が降りかかり、
「あぁ・・・どうやら間違ってないようだ・・・。」
「だからどう言う・・・」
ズゴンッ!と草原に激突した戦斧が急速に緑を減らし、雪原へと変えていく。
「ここは第4廻廊『巨人達之楽園』さ。」
「てことは俺らは・・・!!」
「ああ、恐らくだけど・・第2廻廊をすっ飛ばして第3廻廊についたってことだと思う。それに、今思い返してみればあまりにもおかしかった。」
「でも、とりあえず今はー」
「おおおおおおお!!!」
「目の前の的に集中しないとですよねえー!!」
3人を睨む巨人が雄叫びを上げて飛びかかり、超巨大な戦斧を振り回して振り上げたルースの剣と火花を散らす。
「おんもっ!!」
「チィッ!」
紫電魔法ーーー紫電縦鋼
紫電が一直線に草原を走り、下から上へと雷が駆け上がる。纏った紫電のスパークと共に顎を蹴りあげ、その顔を上へと勝ちあげる。
「ぬぅぅぅう!!」
苦悶の声を上げながら、なお巨人とルースの力勝負は続いていた。ピシピシと嫌な音が剣から上がり、拮抗から少しして刃が折れた。
「待ってたよ、この時をー!!」
武器魔法ーーー破壊強化
その身に纏った漆黒のオーラが一瞬にして膨れ上がり、『オーラそのもの』が武器を形づくる。そして顕現するは漆黒の剣。踏み込みと同時に振り下ろされたそれは音を消し去って巨人の肩を空気ごと切り裂いた。
「ぐおっ・・・!??」
「これで終わりさ。」
血液魔法ーーー血・・・
「おおおおおおおおお!!!!!」
展開された魔法陣が今まさに魔法を放とうとしたタイミングでさらに幾人もの雄叫びが上がる。危機を察知した本能に従い、その場から退くことで、間一髪で振り下ろされた戦鎚2本を避ける。
「っぶね! 」
「さらに2体!!」
1本はブラド、もう一本はドレットに振り下ろされ、2人を1気に後ろまで下がらせる。見てみると、さっきの巨人よりもデカく、まるで親子のようにしてそっと先程の巨人を守っている。
「やりづらいねー」
「でもやるしかないだろ。」
「ドレットの言う通りではあるんだけど・・・」
「ん?」
「「「え?」」」
「お主・・・もしやブラドか?」
唐突に巨人の1人が声を発する。暫し沈黙の時間が流れ、3人が理解すると同時に目を見開いて・・
「し・・・」
「し?」
「喋ったあぁぁぁぁ!!?」
その事実にただただ驚愕した。
城のような廊下が永遠に先へと続いているここは第3廻廊『孤獣之園』。
「虫の後は動物かよ・・・。」
ルイズの呟きに全員が肯定の意を示して駆け出す。切り捨てた狼と虎を後にして、向かうのは次なる扉。第4の廻廊へと繋がる扉だ。
「形すら分からないのに、どう見つければいいってのよ。」
「それは私には答えられん。なんせ来たことがないからな。」
「そこんとこ、案内さんはどうなんだろうねぇ・・・。」
「第4と繋がる門はこれまでの様な形は無い。ただ岩を組み合わせただけのただの・・・」
「「「・・・ッ!!?」」」
唐突に空間を気配が切り裂き、迸る殺気が辺りを覆う。次いで天を衝く咆哮が放たれた。
「GGYAAAAAAAAAAA!!!!!」
今、この場に顕現するは黄金に輝く鱗に漆黒の角を持ち、純白の牙を兼ね備えた古代の龍。名を応龍と呼ぶその龍は瞬く間に王と剣聖以外の4人に肉薄し、丸太のような尾を振り上げ、瞬く間に壁へと叩きつけた。
「かっ・・・!」
「ごほっ・・・!」
「ぐっ・・・!!」
「づぅっ・・・!?」
速すぎて目にも止まらず、音すらしない接近に全員が反応出来ずにただ唖然とするしか無かった・・・この男以外は。
「我ら剣聖の家系は龍との因縁を引き継ぐ家系。故に王よ。一時のみこの場を離れる我が身をお許しください。」
呆然とする王の前で膝をつき、剣聖は厳かに進言する。
「ああ。あの龍は任せたぞ。」
「御意に。」
返答と踏み込みは同時。ただの鉄剣が今この瞬間のみ伝説へと様変わりするほどの剣技が繰り広げられ、黄金の鱗が次々と切り裂かれていく。
「GYAAAAAAAAAA!!!!」
土と光の魔法陣が展開されるも、出現した全ての魔法を素手で跳ね返して叩き割る。圧倒的。その一言に尽きる蹂躙は未だ終わらず、蹴り上げによって弓のようにしなった龍へと追撃の構え。
剣技スキルーーー千残之閃光
掻き消えたと同時に千に及ぶ閃光が応龍の体を通り抜け、吹き出した血を吸って鉄剣が紅く染まる。
「覚悟はいいか?」
宙を舞う剣聖と地に叩きつけられた応龍の視線が交差し、天井を蹴って回転。そのままの勢いを1本の刃に乗せ、応龍の首が瞬く間に切断された。
飛沫をあげる血潮が剣を赤く紅く濡らしているも、剣聖自身には一滴も振りかからない。これが剣聖。これが最強。神すらもそう言う光景に剣聖はただ立ち尽くした。




