51.いざ迷宮へ
とまあ、あれから1ヶ月ぐらいが経ったんだけど・・・。
「これで、ラスト!!」
リストにあった1番最後のダンジョンのボスを魔法をくぐり抜けながら接近して横っ面にマフラーを叩き込む。次いで襲ってくる四本腕中の2本を宙返りで避けて着地した瞬間に踏み切り、1つしか無い目に蹴りを思いっきり叩き込んだ。
「GGIIIIIYAAAAA!!!!」
目を抑えて蹲ったボスの背中を踏んで地面に転がせつつ真上へ。上がっていく間に回転し、限界まで鋭く硬化させたマフラーを落下の勢いと共にボスの首元へ振り下ろし、渾身の力で叩き切った。
「ふぅ。いっちょ上がり。」
今倒したのが一ヶ月前にリストで送られてきたダンジョンの内、1番最後のダンジョンボスだ。名前は隻眼巨人と言うらしい。灰に変わっていく巨人を眺めつつダンジョンから脱出し、ブラドさんに連絡ツールを使って連絡する。
「攻略しました。と」
しばらく返事は帰ってこないだろうし、のんびり待ちますか。でもあの国王一ヶ月後に【永遠之棺】に挑むとか言ってたけどどうするんだろ。ホントに行くのかな?
「ま、なんにせよブラドさん達と確認取ってから・・・!!?」
ダンジョン脇の木陰で座り込み、連絡を待っていると突如として視界が暗転。影が襲ってきたと見紛う程に漆黒の闇が目の前を支配した。と同時に感じる1ヶ月ぶりの浮遊感。重力によって抑え込まれる力と、落下による無重力で浮かび上がる体が脳に異常信号を送る。
「はぁ・・・。手順が乱暴すぎない?」
「これより魔眼会議が始まります。【蠍座】キト様の入城です。」
定型文と共に視界の闇がはれ、目の前に懐かしの円卓が鎮座している。まだ空席の方が多く、座っているのは王、ブラドさん、あの時の老婆、ルイズ先輩の4人だけだ。例外として剣聖らしき側近が王の隣にいるのだが、座ってないのでノーカウント。
「さて、他の者は?」
「全員後ほど来るとの事です。」
案内役に確認を取った後、国王がその美貌を惜しげも無く披露しつつ口を開く。もったいぶんないでさっさと言ってくれないかな?
「というわけで、この5人+私の側近3人の計8人で【永遠之棺】に挑むことになった。パーティーリーダーの王ことフレア・アークス・リオンだ改めてよろしく頼む。攻略中はなんと呼んでもらっても構わない。」
「それはそれは王にしては寛大なことで。」
嫌味たっぷりの声色でブラドさんが王を睨む。仲があまりよろしくないのか、それとも過去になんかあったのか?
「嫌味を言うなブラド。全員自己紹介をしなければダンジョン内で緊急時の呼び名が分からず伝達できなくて死ぬこともある。そうならないための必要な措置だよ。」
「はいはい、わかってますよ。という訳で、ブラド・ファウ・ドラクールです。よろしく。ブラドと呼んでくれれば1番かなと思います。」
「謙虚だなあブラド。」
「からかわんどいてくださいよ・・・。」
さっきのやり合いはじゃれあい的なやつだったの?って思うぐらいには今の方がガチっぽいわ。
「じゃ、次俺言っていっすか?」
大分微妙な感じになった空気を和まざるため、ルイズ先輩が颯爽と啖呵を切り、立ち上がった。
「ルイズ・エメラルーダっす。よろしくお願いします。気軽にルイズって呼んでくだせえ。女の人だったらだれでも大歓迎っす。」
どこか張りつめていた地下の空気がそれだけで弛緩し、居心地が良くなる。王の翡翠の目とブラドさんの赤茶けた目が交差してため息を着くように首が横に振るわれる。これで一件落着かな?
「次は私かノ?」
老婆が立ち上がり、杖をついて他の5人を睥睨した。
「ベリー・フォン・シュトロハイムだよ。よろしくね。ベリーさんとかで読んでもらうと助かるねえ。」
「し、し、シュトロハイム!!!?」
「ほう・・。大物が来たものだな。」
「シュトロハイム家。もう40年ぐらい前に起きた悪魔戦争で大大大活躍した貴族の一族さ。しかも本人が魔眼持ちだとは・・・これなら随分と攻略の成功率が上がる!」
分からない顔をしてると、ブラドさんが解説してくれた。成程、結構前の戦争で英雄として名を馳せた人が魔眼持ちだったため歓喜している。そういうことらしい。試しにというか、どんな活躍をしたのか聞いてみたところ、2万の軍勢に200の兵隊だけで勝ったり、三つ首竜リンドブルムを一人で堕としたりと、色んなところで活躍して来た人らしい。
「それは心強いわね。」
「む?ああ、だが私も歳だ。そうそう機敏にはたちまわれんから注意しといてくれとるとありがたいの。」
最後にそんな、冗談とも本気とも分からない言葉で彼女は締めくくった。
「じゃあ次は私ね。キトと言います。二重人格ですが、訳あっててもう片方は今いないので私が現在の主人格です。気軽にキトって呼んでください。」
服装と髪を少し整え、真っ直ぐ翡翠の目を射抜くようにして紅の視線を交差させる。王は何も言おうとしなかったが、私を見て鼻で笑うような仕草をした。あのクソ女・・・!!
「最後は僕でいいかい?剣聖の家系にして現代の剣聖を名乗っています。クレオス・フォン・ライリーフと申します。以後お見知り置きを。気軽にクレオスと読んでいただけると幸いです。」
細身の長身に黒髪黒目、腰にはロングソードを提げたパッとしない凡庸な顔の男が凄まじい気配を纏いながらこちらに笑いかけてきた。圧倒的な強者の風格にして振る舞い。
「これが・・・剣聖・・!!」
思わず口に出ていたらしい。ブラドさんたちが分かるよと言いたげに頷いているのを尻目に、私はその男から視線を外す。一ヶ月ダンジョンに潜り、生まれ持った高い戦闘力と比較してなお届かない強さの果てを垣間見た気分だった。
「さて、これでパーティーの自己紹介は終わったかな?それでは行くとしよう。【永遠之棺】に。」
国王の宣言と共に視界が急速に引き伸ばされ、次いで目の前が光で何も見えなくなる。そして・・・
Qなんでほかの魔眼持ちは来なかったの?
A深刻な事情(怖気付いた)




