43.キト VS オスカー・ベルト・ベスター
木村永戸こと、キトは常々疑問に思っていた。自分の母親の種族であるダークエルフにはどんな特徴があったのかと。例えば吸血鬼であれば常人から外れた身体能力と生まれながらにしてもっている緻密な魔法技術が特徴である。身体的特徴であれば口の中から除く尖りに尖った犬歯と血を吸うというものだろうか。
故に疑問に思う。ダークエルフとは何なのか、確かに身体的特徴であれば褐色の肌に美しく伸びる銀色の髪、そしてエルフのような長い耳が特徴的である(そのせいで吸血鬼の血も相まってキトの耳は引くほど長い)。しかし、種族的な特徴、能力、生まれ持った特性が分からないのだ。故に、キトは王都の文献を用いて各種族の特徴や能力を調べに調べ尽くした。
結果的にわかったことは、現代に生きる魔眼族という種族が遠い昔のダークエルフの末裔であるということぐらいだろうか。そのアイズという種族の伝説で次のようなものがある。
『遠い昔、魔眼族の先祖はニンゲンとエルフに迫害を受けていた。・・・その後彼らは地下に追い払やられ、そこでドワーフとニンゲンの奴隷として延々と働いていたという。そんな暗黒の時代の中、1人の女性が立ち上がった。彼女の名前はジャンナ・フェルク。魔眼族の1人にして最初の魔眼を産みし者である。』と。
現在の魔眼族はいろいろな種と血が混じりあったせいで元々の特徴であった褐色や銀髪といった特徴は消えてしまったが、それでも魔眼だけは確かに継承され、彼らの身に息づいているだろう。
とその書には記述がなされており、ほとんど確定でダークエルフが魔眼族の先祖であったことは疑いようが無かった。故に、キトの父親の力が吸血鬼による物であり、木村瑛斗がそちらに引っ張られるということは、キトもまた、ダークエルフ・・ひいては魔眼族の血に引き寄せられるということであると推測ができる。
そしてその推測は、限りなく正解に近かった。
「ふふっ。」
布魔法ーーー鋼布
少女が握っているマフラーが硬質化し、1本の剣のようになっていく。
「じゃあ、行きましょう。」
綻んだ口元を隠そうともせず、少女は般若面の下で微笑みを浮かべながらオスカーに肉薄する。懐に入った瞬間に十字に振るわれるマフラーがオスカーの胸に振るわれた軌跡と同じ形を刻む。
「がっ・・・!?」
「あら?柔らかいわね?」
疑問を浮かべるも、その顔は確信を持った顔であり、彼女は再び接近戦を仕掛ける。オスカーが防御の構えをとった直後、
「うふふっ。」
微笑を浮かべた少女の右瞳にさそり座の紋様が浮かぶ。目が合ったオスカーは急激に自分の体が脱力していくのを肌で感じつつその瞳に魅入ってしまった。
そして・・・クロスした斬撃がオスカーを襲う。都合4本の線がオスカーの体に刻まれ、血が溢れ出す。
「な・・・にが・・・!?」
「さそり座は本質を見抜き、隠す者。又は妖艶なる者を表す。あとは分かるでしょ?」
「ほ・・んし、つ?」
「そう。今はまだ未熟だから目の会った人に一瞬しか能力を使えないし、範囲も自分で指定とかが出来ないのだけど・・・。でも、今のあなたには上手くいったみたいね。」
「ぐ、ああああああああ!!!!!」
これまでの戦いで1度も血を流してこなかったオスカーは血反吐をぶちまけ、雄叫びを上げながら急加速して肉薄する。
振りかぶられた拳が信じられないような速さで振り下ろされ、キトの頭蓋を粉々に砕かんと迫り来る。
「ふふっ。ざぁんねん。」
拳が頭に激突する前、一瞬だけ少女とオスカーの目は会った。瞬間、決定的で致命的な間がうまれる。
振るわれた拳を逆手に巻き上げ、体を上空へと思いっきりに放り投げる。それに追従するようにして自身も
飛び上がり、オスカーを越してからもさらに上昇していく。
完全に失速する前に持っていたマフラーを勢いよく上へ。体を反転してマフラーを足場とし、上昇の勢いそのままに踏み込んで落下。瞬く間に目の前に現れたのはオスカーの痩せこけた体。
「ふふっ」
悪魔のように妖艶な微笑を浮かべながら無理やりに上昇させられるオスカーと目を合わせ、落下の勢いと踏み込みの威力を足された渾身の踵落としが強化の抜けたその鳩尾炸裂し、くの字に折れ曲がった体から何かが破裂し、折れる音が鳴る。
そのままオスカーは背中から地面に着弾し、バキリッという嫌な音を最後として意識をその身から手放した。
ここに、キト VS オスカー・ベルト・ベスターの戦いは集結した。そして、それと同時に純白の世界が残滓すらも消失し、獣のような咆哮と雄叫びが緑の草原に木霊した。
魔眼
・・・魔眼には三種類あり、1つは魔眼族又はダークエルフの固有能力である魔眼、もう1つはスキルとしての魔眼、そして最後に、特殊属性の魔眼魔法である。




