41.オスカー・ベルト・ベスター
オスカー・ベルト・ベスターはかつてあったベスター家という貴族家の次男坊である。彼は幼少の頃からその頭の良さと類まれなる魔法の才を惜しみなく発揮し、僅か18歳にして都市国家リオンの筆頭魔術師にまでのし上がった。彼のあげたいくつもの功績は今もたしかにここ国家リオンに息づいている。
そんな彼が20歳になった翌日のこと、
『(昨日のパーティーは父上や母上の予想以上に盛り上がった。最近はあまり騒げなかったし、他の友人とも会ってなかったからかなり疲れたけど・・。うん、いい思い出だった。)』
そんな考え事をしつつ、彼は早速国王からの用立てとして、城に呼び出しを食らっていた。
『しかし、何の用だろうか・・・。』
『あ、オスカー先輩。どうもこんちは。』
『ああ、ブラドか久しぶり・・・と言っても、1週間ぐらいか。』
『そっすねぇ。あ、誕生日おめでとうございます。』
『ああ、ありがとう。ブラドもたしか来月だろ?』
『ええ。これでやっと18歳っすよ。』
今オスカーと話しているこの男、名をブラドと言うのだが、彼は16歳で王城の近衛魔術師第3位を賜るほどの魔法の申し子、逸材であった。
『ああ、僕からもおめでとうと言っておくよ。贈り物は何がいい?』
『なんでもいいっすよ。』
他愛もない会話を続けていると、謁見の間の扉に着いた。
『ん?ブラドもかい?』
ここでようやく気づいたオスカーはブラドに尋ねる。
『ええ。てことは薄々気づいてたけど先輩も?』
『ああ。王に呼び出しを貰ってね。故郷から馬車と魔法を使ってトンボ帰りさ。』
『災難だったっすねー。・・俺も故郷の道から飛んで帰ってきたっすけど、オスカー先輩の故郷、確かめっちゃ遠かったっすよね。』
『まあね・・・っと、』
唐突に謁見の間の扉が開く。
『あんたらいつまでそうやっての!?さっさと入ってよ!!』
快活な少女の声が長い廊下に響き、中から目付きの鋭い赤髪の少女が出てくる。
『国王と2人っきりとか私嫌だから早く来なさいよ!』
『ちょっと話に夢中になっちゃってね。いや、ごめんごめん。』
たった今怒鳴りながら出てきた女性。名をカリオペと言い、現代の剣士の最強格。つまりは現代の剣聖として名を馳せている齢18歳の女傑である。
『ごめんって剣聖殿。俺たちちょうど遠出してたんだから遅れたんだって。悪かったよ。』
『私なんか今日誕生日なのにパーティとか開けずに終わっちゃうのよ。』
『ああ、今日誕生日だったっけ?おめっとさん。』
『何よブラドその返しは!!?』
『では、失礼しますカリオペ殿。』
そう言ってオスカーはカリオペの手を取り、彼女の手の甲にそっと口付けて
『お誕生日おめでとうございます。』
爽やかな笑顔でそう言ってのけた。
瞬間、真っ赤になったカリオペは強引に手を振り払ってそのまま恥と苛立ちの入り交じった八つ当たり気味の蹴りをブラドに叩きつける。
『ちょ、なんで俺!?』
『うるさい!黙れ!』
『お主ら、私に顔を見せる気は無いのか?』
『『『!!!!』』』
全員が苛立ち紛れのその呼び掛けで一斉に扉の中に入り、膝を着く。
『『『陛下、我らここに。』』』
短く挨拶の言葉を返し、王の返事を待つ。
『楽にせよ。』
その一言で空気が弛緩し、3人は国王の前に立って目線を合わせる。
『おおー陛下ー久しぶりっすー。』
『無礼者!いくらオスカーと陛下の歳が同じだからってそんな挨拶していいわけないでしょ!!?』
『よいよい。かたっ苦しいのは私も嫌いだ。』
『陛下・・・。』
『この時ぐらいは許してくれ爺。あとでちゃんとするから。』
先程から国王と呼ばれているこの女性、名をフレア・アーク・リオンと言い、御歳20にしてこの都市国家リオンの現国王である。優秀な魔法と剣術の腕がありながら、その内政・外交能力はずば抜けており、歴代最高峰の王であると言えるだろう。
『久しぶりだなオスカー。』
『お久しぶりです、陛下。』
『もう前みたいに名前で呼んではくれないのか・・・。』
『はぁ・・・分かりましたよフレア様。』
『まだ壁がある気がするのだが・・・。』
『もうあの頃ではないんです。勘弁してくださいよ・・・。』
彼ら4人は、東のとある国で共に学び、競った学友である。
『あの頃か・・・懐かしいな。』
『できるなら、戻ってみたいわね。』
『今はしがらみが多すぎるっすからね。』
『で?フレア様。ここに僕らを呼んだのはなんの用で?』
『ああ、実はお主らに頼みたいことがあってな。』
『それはどのような・・・。』
『無限迷宮【永遠之棺】。この名は知っているな?』
『ええ。・・・まさか!?』
『ああ、私達4人であそこを攻略し、都市国家リオンの権威をさらに巨大にしようと思う。』
『もう充分巨大っすよね?どうしてまたそんなことを?』
『実はだな・・・』
フレアの話をまとめると、どうやら敵国である隣の国が無限迷宮を踏破し、遺跡武器や財宝などの戦力になりそうなものを根こそぎ取ろうとしているというのだ。
『だから私達で先に踏破しようと思ってな。』
『僕らはいいとして・・・フレア様は何故?』
そう、そこが疑問なのだ。わざわざ彼女が着いてくる理由がない。彼女が来るなら負けることは無いだろうが、その場合のリスクはリターンとどうしようもなくに釣り合っていない。さすがにリスクが大きすぎる。
『あのダンジョンは4人でなければ入れん。足でまといが行けば踏破に支障をきたす可能性もある。故に私だ。現状、この国の最高戦力であるこの4人が行くのだ。失敗は起きないだろう。』
『万が一私たちが死んだらどうするのですか?』
『大丈夫だ。既に私の兄が世継ぎを作っている。じきに生まれると聞いている。これで私の代わりは大丈夫だ。』
『・・・・しかし。』
オスカーは渋る。この場合、彼の判断が正解だろう。そんなことな誰もがわかっている。しかし、
『大丈夫じゃない?よっぽどの事がない限りこの4人が死ぬことなんかないし。』
それを補ってあまりあるほどに彼らは自分の実力が確かだと知っていたし分かっていた。
『そりゃそうだ。』
『私の誕生日は明後日だからな。その前に帰ってくるぞ。』
『そんなすぐ行きますかねぇ・・・。』
最終的にオスカーは乗り気な2人に言いくるめられ、迷宮攻略を行うと決意した。
その間、誰1人死なせないように、誰1人別れないように・・と。
『では改めて。』
雰囲気を占めるためにも、フレアは玉座に座り直し、厳かな顔を作る。同時に3人は跪き、彼女の方へ頭を下げる。荘厳な言葉が彼女の小さな口から紡がれる。
『私と共に迷宮の攻略を行ってもらいたい。期限は2日。頼めるか?』
問いかけと言うよりかは脅迫のような声色で、彼女は問いかける。
『『『拝命致しました。国王陛下。』』』
荘厳な作りの城を出て、彼らは迷宮へと向かっていった。
結果だけを言うのであれば、剣聖は自殺し、ブラドは失踪。国王は狂った。
そしてオスカーは、オスカーはーーー




