36.ありったけの全力攻撃
ーーー王都近辺の草原
ヴォン!という音と共に月明かりに照らされた草原の中に屋敷が出現する。
「ここは・・・」
「どうやら転移させられたようですね。」
「なるほど。あの少年か。」
どうやらアシュベートはこの転移を起こした人物について知っているようだ。
「例の空間魔法の少年かい?ブラドに引き取られたと聞いていたが・・・」
「ああ。まさしくその少年だ半年ほど前に突如・・・いや、この話はやめよう。」
急に言葉を切り、草原の方を窓から見やるアシュベートにオスカーは首を傾げる。
「なぜ話を切りあげたんだい?」
「窓の外を見ろ。」
窓の外。月明かりと夕日に照らされた草原には男が5人真っ直ぐ屋敷を向いて立っていた。
「ベル。・・・ここどこだ?」
「把握しといてくださいよギル先輩。さっきも言った通り、ここは王都から少し離れた草原のど真ん中です。」
「ああ、なんか言ってたな。」
「記憶障害乙って感じっすね。」
「被虐趣味乙」
「てんめ・・・このやろっ・・・!!」
「騒いでんなよ。屋敷の左から7番目の窓を見ろ。」
ドレットパイセンが指定した窓を見る。中に隠そうともしない巨大な魔力の反応。
「アレが・・・」
「ああ。雷魔法の使い手。アシュベート・フォン・ルーカルベルトだ。」
「作戦はさっき決めたもので。相手取りも先程の人をお願いします。」
「「「「了解。」」」」
べるパイセンの確認に全員が応じ、一斉に魔力を高める。
「それじゃあ先ずは先制の1発を・・・。」
手錠・・・というか、先程までは先が着いていた鎖をマフラーの上から1部ぐるぐる巻きにして血で強引に硬化。血の滴る深紅の鎖がジャラリと手のひらから垂れ下がる。
展開された魔法陣が血流を早め、体内で興奮剤が次々と分泌される。掻っ切られた首から大量の血が流れ出し、それが深紅の般若面を形取る。肉体に、今力が満ちた。
漆黒の魔法陣を3つ展開する。1つは屋敷の3分の1を覆うほどのもの、残り二つは手元に展開された大皿程度の大きさのもの。頭上に展開された巨大魔法陣からは徐々に刃先が出てきており、手元に展開された魔法陣からは既に片手剣が両手に1本ずつ召喚されている。
「慣れない二刀流とかをする趣味もないし、さっさと強化しちゃおうか。」
2本のうち左手に握られた1本が音もなく砕け散って残骸が塵となる。魔法陣とそっくり同じ、漆黒が身体を纏い、その体躯に並々ならぬ力が漲る。
「さあ、お披露目と行こうか!」
漆黒の巨大魔法陣から召された巨大な刃が屋敷へとその凶刃を振り上げた。
目を閉じ、集中して詠唱を口にする。両足にいくつもの紫の魔法陣が展開され、その全てが紫電を纏って雷電が弾けている。バチバチと脳内で音が反響し、展開された魔法陣から幾度となく魔力が踏ん張ったその両足に注がれる。
不意に音が止み、目を開けて足を見れば紫電のブーツが両足に履かれている。気合い1番。雄叫びを上げ、身体中に魔力を潤滑させて紫電を纏う。準備は完了した。後は、一直線に走るのみ。
緑、黄色、赤、青、紫。大小様々な5色の魔法陣がその場に展開され、エメラルド色の鷹が、トパーズ色の狼が、ルビー色の牛が、サファイア色の大蛇が、アメジスト色の馬がそれぞれ出現する。そして最後に・・・
純黒の魔法陣からその三首をもたげて黒曜石の犬が現れた。6匹と1人は屋敷を睨み、その身に魔力を漲らせて雄叫びと咆哮を繰り出した。
蒼い魔力がその身を覆い、手に持った剣に、左手に展開した魔法陣に魔力が流される。その身に漲る蒼碧の力は幾度となく行使した力を今1度使おうと感情を昂らせる。
「行きますよ。」
中心に渦を巻くようにして蒼の力が循環する。頭上に展開された魔法陣からは幾本もの剣が。
「僕の立つ瀬がないねー。」
「冗談を。」
短い応答ともに蒼に染った剣は引かれた弓から放たれる矢のようにして屋敷へと降り注いだ。
血液魔法ーーー血液操作、集中分泌、血流操作、出血
武器魔法ーーー武威解放、断天之剣
紫電魔法ーーー紫電装身、紫電轟閃、紫雷一閃
召喚魔法ーーー宝石動物、漆黒三首、従者召喚
空間魔法ーーー武装転移、座標転移、転紋装身
ありったけの全魔法、全力の攻撃が降り注ぎ、轟音が響いて屋敷が壊滅する。
直後、稲妻が屋敷内から疾駆。一直線に進む紫電と雷電が真正面から激突した。
更新遅れました。申し訳ない!!これからはちょっと高頻度での更新が出来ないかもです。すいません。
魔力感知・・・自分の魔力を空気中に張り巡らせて魔力を保有してる生命体や物品を探す。制度は魔法に対する熟練度や種類によって変わる。




