33.本当につまらない
「これは・・・すごいねー。こんなにいっぱいの武器や防具なんか何に使うんだい?」
「研究ですね。主に魔物の耐久性と武器の耐久性を調べたり防具の耐久性能を検証したりするのに使います。」
「へぇー。やっぱ銃とかそういうの、僕も作れるようになった方がいいのかなあ?」
「ま、便利になることは確実っすよね。」
客室を出たあと、俺たちは真っ直ぐに研究室へと足を運んだ。幸い、ミーヤさんがこの複雑な屋敷で長年働いているメイドだったので、今のところは迷ったりしなくて済んでいる。が、トイレの位置は既に忘れた。
「ま、んなことなどうでもいいんすけど、ミーヤさん。コレなんすか?この金色に光ってる液体的なやつ。」
「ああ、それはエリクシールです。」
え?今なんつった?エリクシール?エリクシールって言ったか?
「勘違いしないでもらいたいのですが、それはエリクシールであってエリクサーではありません。つまり、所詮は我が主オスカー様の実験と研究の副産物です。」
「エリクシールが作れるってことはエリクサーがここにあるってことすか?」
自分でもわかるほどに声が低くなり、そこに威圧感が込められていく。
「いいえ。エリクサーはエリクシール、マスタリーポーション、ポイゾナルトニックの製造過程で全て失われてしまいました。」
「なるほどねー。」
「で?エリクサーはどこで見つけたんすか?」
剣呑な目付きでミーヤさんを睥睨し、俺は囁くように声を振り絞って問いを投げる。
「私はその旅に着いて行っていませんでした。故に、どこかのダンジョンで得られたことはわかってもどうやって手に入れたらいいのか、正確な場所がどこなのかが分かりません。」
「ミーヤさんもこう言ってるんだし、キト君も怒りを押えてよー。妹さんのことがあるのはちゃんと分かってるつもりだからさ。」
「そう・・・っすね。ちょっと取り乱しちまった様っす。ミーヤさんも睨んだりしちまってすんませんでした。」
「いえ。私は何も・・そう、何もまだしていないのですから。」
「で?キト君。こっからどうする?粗方研究室も探し回ったわけだけど。」
正直、もうちょい見て見たさはあるんだけど・・・
「ドレットパイセンにあんま心配かける必要も無いし、戻りますか!」
「りょうかーい。」
「じゃ、引き続きミーヤさん。案内よろしくっす!」
「承りました。」
直後、失礼しますというつぶやきが聞こえたと同時、俺とルースパイセンはその場に倒れた。
な・・・!?何が起きた!?何をされた??失礼します??ミーヤさん?・・・嵌められた?罠?だとしたら何で倒され・・
「あら、まだ意識があったのですね。こっちの方は既に気絶しているのに・・。」
「な・・・にを・・」
「あなたがたの魔力の波・・とでも言いましょうか。それを研究室に入った直後に読み取り、たった今その波を崩させてもらいました。大抵の人は魔力機関に直接干渉されるとこんなふうに倒れてしまうんですけどね。」
そう言って少女はルースパイセンの頭を軽く2、3回踏みつける。
「て・・めえ・・!」
「その体じゃあもう何も出来ないでしょう?大人しく気絶しててください。その方がこっちのためなので。」
振りかざされた手刀が首裏に命中し、意識が瞬間的に刈り取られる。そのまま俺の意識は暗闇に落ち、
「す・・ま・・」
そんな囁きが聞こえた気がした。
「終わりました。」
白髪のメイドが客室に入ったと同時に雷鳴が響き、赤髪の男が目の前で倒れる。咄嗟に顔を少し背けたせいか、オスカーが言った言葉が聞こえずに終わった。
「お、ミーヤ。そっちは滞りないかい?」
「ええ。この3人も牢屋に・・?」
「ああ。まとめてぶち込んどいて構わないよ。時期にもっといっぱい来るからね。」
ガサ・・・と物音がし、下を見ると赤髪の男が少しだけ顔を上げて笑みを浮かべていた。
「おま・・・えら・・が、ど・・んな・・罠を・・・しかけ・・てて・・も、あいつら・・・が・・そんな・・もんに・・・屈する・・と、思ってんのか・・よ。」
「何を言い出すかと思えば。愚かなことだけ口走って意識喪失か。本当につまらない愚物共だ。・・・ミーヤ、運んでくれ。」
嘲笑が客室に響き、白髪の少女はそれをただ感情の凍った目で見つめていた。
エリクシール・・・エリクサーの強化効果を抽出し、何百倍にも薄めた物。これ単体を飲むだけで常人でも城壁を片手で殴って穴を開けたりできるようになる。強化系の魔法が適正のやつが使うとTASじみた動きになる。
マスターポーション・・・エリクサーの回復効果を抜き取り、何百倍にも薄めたもの。単体を飲むだけで部位欠損、重度の病気などを治すことが可能。他にも、見えている範囲の傷ならば地面に振りまくだけで回復する。値段はめっちゃ高い。ホログラム機の大体7、8倍
ポイゾナルトニック・・・エリクサーの毒効果を抽出し、何百倍にも薄められた物。単体を飲むだけで体の全細胞が活性化し、強制的な細胞分裂の繰り返しで体が爆散する。又は、細胞が瞬間的な融合を幾度となく繰り返して単細胞のドロドロに熔けた人間だったものになる。どっちにしろ自我は消え、3分後には死に至っている。




