31.お値段、なんと1台800000!
「さて、3人ともゆっくり休めたかな?」
1日しか休憩よこさないでよく言うぜ全く。その休みの日だって銭湯騒動のせいでなんも休めなかったし。
「不満げな顔だねぇ。まあ、銭湯でのことは割と君達の自業自得的な部分もあるけどね。」
「で?今日の要件はなんすか?」
「今から説明するよ。」
やけに勿体ぶってんな。なんかあったんか?
「君たちが先日倒したミノタウロス型のキメラ通称・・と言ってもそのままだけど・・キメラミノタウロスが人工の魔物であることが判明した。」
「「!!?」」
「・・・・・」
なーる。どーりで狙ったようなタイミングでミノタウロスが入ってきたわけだ。恐らく、俺の推測通りなら・・
「そして、キメラミノタウロスの前の姿、つまりキメラとミノタウロスの内、キメラの方が人工のものだったそうだ。」
「ミノタウロスの方はなんだったんすか?」
「口の中に刻印のようなものがあった。・・・あとは分かるね?」
「テイムかー・・・。」
「確かにテイムなら証拠らしい証拠も残らねえ。精々体のどっかにつけてある刻印でバレるぐらいだ。」
「それも探そうと思って探さないと見つからないぐらい変なとこに隠してあんだよねー。」
でもその理論で行くと・・・
「じゃあなんで口の中なんて言うわかりやすいところに刻んだんだろうね?」
「今回はたまたま未発見の魔物だったために精密検査を行った。故に製作者の想定しないところで、この刻印に気づくことが出来た・・とかっすか?」
でもさすがにそんな甘い考えは・・・
「勿論違う。そして、僕達はこれを行った容疑者を既に特定している。」
「人数はー?」
「具体的な特徴。」
「写真とかないんすかね?」
「うわなんか引くほど怒ってんだけど。」
そんなもんひとつしかないじゃないっすかー。
「会ってぶちのめす。」
「とりま復讐はしときたいよねー」
「ツケ払わせてやるっすよ。」
「うわぁ暴力的手段だー。」
「で?容疑者の目星はついてるんすよね?」
「これが昨日の午前中にカーネリアが爆速でまとめた容疑者リスト。」
「すげえわかりやすいんすけどこのリスト。作んのに何時間ぐらいかかったんすか?」
「普段の仕事と並行してやってたからギルドメンバー全員分で3時間とかかかってた気がするよ。」
「鬼」
「クソ上司ー」
「パワハラ男」
「君たちもう僕への苛立ち隠す気ないよねぇ!?」
軽口を叩き会いつつリストの方を詳しく見てみる。メインとして載ってるのはざっと4人ぐらいか?それ以外はなんか取り敢えず集めました感がすげえけど・・・。
「容疑者1人目:デブリ・ルーカス」
小太りでハゲのおっさん。加齢臭とか臭そうだし絶対に犯人じゃないだろ。いやまあ、独断と偏見ではあるけどね。
「容疑者2人目:アシュベート・フォン・ルーカルベルト」
鍛えてあると言われても納得の恵体。背も高く、白馬の王子様とかが似合うタイプのイケてる人って感じか。こういう奴に限ってなんか余計なことして事件に首突っ込んで死ぬんだよなぁ・・・。
「ちなみに彼貴族だからね。」
「言葉には気をつけまーす!」
「容疑者3人目:ライリー・フォン・テレスタジア」
フォンっつーミドルネームがあるやつは貴族だと言っていいな。で?茶髪で少しくたびれた感じのお姉さん感が漂う若くて美人なヒトって感じか。どうしよう性癖どストライクの美人さんでいらっしゃるんだけど・・。
「んでよう4人目:オスカー・ベルト・ベスター」
黒い癖のある巻き毛に目の下にこさえられた大きな隈。睨みつけるような視線と少しくたびれた白衣が印象に残るおっさんだ。
「見た目からして絶対犯人この人だろ・・・。」
「確かに、特徴的には1番怪しいよねー。」
「で?俺たちは何をすればいいんすか?ブラドさん。」
「君たちにはこの4人目『オスカー・ベルト・ベスター』の監視を引き受けてもらいたい。」
「「「了解!」」」
「あ、言うの忘れてたけどオスカーは僕の10年来の友達だからね。彼を信用して、仲良くしてきてね。」
「え、それ今言う・・・!?」
「じゃ、頑張ってきてねー。ほかのギルメンもそれぞれの容疑者と見張りに行ってるから情報共有するのとかも有りだよ。」
最後に結構特大の爆弾を投下したブラドさんが右手を上げたのを合図に、回線が切られ、目の前から『ホログラム』でできたブラドさんが消失する。
「この科学技術前世超えてねぇ・・・?」
さすがは都市国家だ。まだまだ知らねえこととかわかんねえ事がいっぱいあってワクワクが止まらねえよ。
物思いにふけりつつ、先程の話を頭の中で反芻し、思考をクリアにしていく。
「(科学者ってことは、エリクサーも持ってると考えていいのか?いや持ってそー。・・・それとなく探したりしてみるか。)」
「さて、容疑者4人目『オスカー・ベルト・ベスター』。一体どんな人物なんだろーねー。」
「ああ、楽しみだな。このオスカーとか言うやつが犯人だったら、その時は俺がこいつをぶん殴ってやるよ。今からその瞬間が楽しみでならねえ。」
「っし、俺も腹は決まっt・・・」
俺がパイセンふたりに習って、かっこよく啖呵を切ろうとした瞬間、バァン!という扉を思いっきり開ける音が響き、目を輝かせた状態のブラドさんが勢いよく入ってきて、開口一番に
「さっきのホログラム投影どうだった?めっちゃ良かったでしょ?いやーちゃんと成功してよかったー。1台800000とかするけど、今月のみんなの給料とか食費とかちょっと削るだけで賄えるからいいよね。」
ああ、もう、これは本当に・・
「ギルド長?」
興奮し、熱を帯びてきたブラドさんの言葉を切り裂くようにして冷徹な鈴のような声音が鳴り響く。
「私たちの給金を削ってまでその装置が欲しかったのかしらぁ?それとも・・・?まさか遊び半分じゃァないわよねぇ?」
ガタガタと震え始めるブラドさんに対し、笑みを崩さずにドンドンとそんな彼に近づいて追い詰めるように言葉を展開するカーネリアさん。
「この場合俺たちはどうしたら・・・」
「最適解はここを出る。だよねー」
「それじゃあまあ、ブラドさん。」
呼び掛けに応じ、助けを乞うような顔でこちらを見るブラドさんに一言。
「あと、頑張ってください。ではカーネリアさん、俺達はこれで失礼するっす。明日からも任務るんで。」
「はぁい、おやすみぃ。しっかり寝るのよォ。」
その夜、ブラドさんの部屋からは延々と怒号と罵声、そして何かが割れる音が響いていたそうな。
「「「「「ね、寝れねぇ・・・」」」」」
ホログラム投影機
・・・空気中に漂っている魔素に反対側の機械をとおして魔力を流し込み、その波長と魔力の形でその者の立体映像をその場に投射してコミュニケーションをとれるようにした画期的な機械。製作者はオスカー・ベルト・ベスター。数年後にはこれの改良版としてあまりコストのかからないものが産まれる予定だ




