26.暴走
ちょっと短いけど更新です
気付けば目の前に転がる獣爪に俺は無我夢中で飛びついていた。
牙を立て、血を吸う。やり方は自然と頭が理解しており、あとはそれを実行に移すだけ。
「ジュルル・・ジュ・・・ジゥーー・・」
血を吸う音だけが響き、それ故に牛野郎が俺の存在に気づく。まだ死んでない俺を見て、一瞬戸惑った(俺にはそう見えた)後、音だけが炸裂する踏み込みで接近。
上から喰らおうとするように竜の頭が口を開けて迫り来る。
あとちょっと、もうちょっと・・・ここ。
スパァン!!という小気味いい音が辺りに反響し、同時に上に跳ね上げられた牛野郎の右腕がブレる。
『赤い何か』が尾を引いて牛の右腕、すなわち竜の頭を切り落としたのだ。
『ふふっ。魔物の血を吸うとか、正気の沙汰じゃないわね。ほら暴走しちゃった。しょうがない。手伝ってあげないとね。』
「UUURAAAAAAAAAAA!!!!!」
禍々しい手の形をとったマフラーが深紅に染って通り過ぎた場所に尾を引いて、美しく流れるような銀髪が残光を残し、白い閃光をこの世に刻んで反転した白色の瞳孔が牛を睥睨する。
「BRMOOOOOOOOOOO!!!!!」
雄叫びに雄叫びを返すようにして牛が吼え、殺気と殺気がぶつかり合う。
先に動いたのは牛。しかして最初に攻撃を通したのは紅であった。振り抜かれた深紅の剣が牛の体を真正面から切り開き、一瞬にしてバツ印をその身に刻む。
巨大化し、手の形をとったマフラーが先程まで落ちていた石斧を拾って全力で振り下ろす。それだけで牛のアタマが潰された。
だがしかし、牛もキメラである。一瞬にして切り飛ばされた竜の頭を喰らって生やし、叩き潰された牛の頭をその竜の頭で食らって再生。ほとんどノーダメージとなる。
「ふふっ、あんまり手を煩わせないでね。」
再生したばかりの頭部でキトを視界に捉えようとして牛は気づいた。既にそこに紅はいないのだと。
声が聞こえた刹那の後にまだ辛うじて肘の部分まで残っていた左腕が落とされ、
「こんなものもう要らないわよね?」
牛の体の後ろ半分が切り飛ばされる。
「二本足で歩くことは簡単でしょう?」
気付けば真正面にいた紅を完全に捉えたと思い込んだ牛は右腕を一瞬で彼女に接近させる。かますのは超速のラリアット。しかしてそれは真上への跳躍で容易く避けられ、
「遅いわね。」
痛みを感じた頃には体が十字に切り結ばれていた。
「ここまでしても両断出来ないのね。本当にお兄ちゃんは力が無いんだから。もっと鍛えといて欲しいかな。うん、決めた。今後の課題はそれで行こう。」
斬撃が走り、血が滴る。しかし、牛の体は両断されておらず、未だ半死半生であった。
「じゃ、あとは先輩方に任せようかしら。」
飛びかかる様に突進を敢行する牛を華麗に躱したキトは一足飛びに後ろに下がりドレットとルースの後ろに隠れて精神内に自分の意識を戻す。
自然、意識の入っていない肉体がその場に転がる。が、何とか現実に帰還した男は動かないからだを無視して一言。
「あと、頼んだっす。」
「「ああ、頼まれた。」」
飛びかかる牛に向かって相対する二人が笑った
暴走
・・・この場合吸血鬼の暴走ということになります。吸血鬼の暴走は魔物の血を吸って体内に取り込むことによって身体の中の魔力が混ざり合わなくて荒れる事で起きるものです。暴走した時の症状として、正気を失う、白目と黒目の色が入れ替わる、魔法を暴発させて使用するなどです。




