24.キメラミノタウロス
しかし3分、3分か・・・。割と長いよ?3分間。だってこいつ明らか俺より格上だし。ドレットパイセンとルースパイセンに攻撃を当てずに守ることを意識して3分・・・。無理くねぇ?
「まぁ、やるだけやろう。文句はその後言えば良い!」
つきましては・・・ちょっとキトの方に力を貸していただけないか聞かないといけないわけで・・・。めんどいからいいや。
「最初からフルスロットルで行くぞ!!!」
血液魔法ーーー血液操作、集中分泌
短剣が喉を切り裂き、深紅の仮面が再び顔にハマる。血液が一気に体を循環し、直後、身体が溢れるほどの全能感に支配され、気分が高揚する。
「これが今俺が掛けれる最高級の強化魔法だ。なんなら3分かからずお前を倒してやるよぉ!!」
踏み込んで駆け出す。たった1歩分それをやっただけで彼我の距離およそ10メートルを一瞬で詰め、キメラミノタウロスの懐へ。
「おっらぁ!!」
短剣を振るい、その体に斬撃を走らせて確かに切り裂いた手応えを得る。と同時に右にステップ。間一髪で振り下ろされた龍の頭を避け、真上に跳躍。竜の頭から放たれたビームみたいな何かを全力で避ける。
「きっついきっつい!!」
振り下ろされる狼の爪を弾き、食らいついてくる竜の顎を避ける。小刻みにステップを刻みつつ肩と腕の間の関節に投げナイフを思いっきりぶっ刺して即離脱。獣爪を避けつつ最短距離で近づき、竜の頭を足場にして跳躍。握り締めた拳に血を纏って硬質化。思いっきり刺した投げナイフを拳でぶっ叩いて貫通させる。
「おらあああ!!!」
右腕・・・即ち、龍の頭が着いていた方の肩から大量に出血し、麻痺したように竜の頭がそこから動かなくなる。
「っし!!次ぃ!!」
獣爪を避けながら雄叫びを上げ、目に短剣を突き刺そうとした所で
「BRMOOOOOOOOO!!!!!」
咆哮が上がる。と同時にキメラミノタウロスが自分の右肩から先を一気に喰らい、竜の頭ごと飲み込む。
「え・・なん?は!?」
あまりに一瞬のことに理解が追いつかなかった俺は為す術めなく左腕の振り払いに直撃。なんとか受けたものの代わりに短剣が根元からポッキリと折れた。
「ゲフッ・・自分で自分の身体食うとかどうなってんだよ・・。」
気持ちわりぃ。しかもなんか再生してるんだけど・・・うわぁ。筋肉だけ再生して、皮膚がない・・・オエッ。
「しかも竜の頭ごと再生してっし・・・。まさかとは思ったけどやっぱ再生持ちかよ・・。」
キメラってのはだいたいゲームとかでも再生持ちとして語られることが多いが、まさかここまでとはね・・・。異世界来てからグロ系には慣れてきたかと思ったけど、まだまだみてえだ。
「チッ!考えてばっかでも埒があかねえ!」
威勢よく叫び、突っ込んで行って獣爪を弾き、竜の頭を避けようとしたところで気づく。
「え?なんか早・・!?」
先程よりも速くなって迫ってくる竜の頭を全力で体を捻って避け、回転しつつ左手側の肩に短剣を突き刺して今度は思いっきりその場で蹴り抜く。
「硬ってぇ・・!!」
何とか貫通させ、左肩から先を無力化。喰らわれる前にもう一本の短剣で何度も切りつけて無理やり叩き切った。直後、パキッという音と共に短剣が折れ、刃が地面に落ちる。
「マジかよ・・!!!」
急いでバク宙してその場を離れ、キメラミノタウロスから距離をとる。
「ここが間合いの外ってことか・・。」
今持ってる武器は・・折れた短剣と投げナイフが1本ずつ、刃こぼれした短剣が1本、それと新品の投げナイフが2本ってとこか・・・。
「こんだけの武器でどうやって勝ちゃあいいんだよ・・・。」
キメラミノタウロスの方を見ると、左肩から先を眺めて品定めするように俺の顔を見つつ、俺が持っている狼の左手を凝視している。
「これが欲しいって訳か・・。取れるもんならとってみやが・・え?」
啖呵を切った直後のこと、目の前からキメラミノタウロスが瞬間転移したと思うほどに速く消え、後ろに殺気を感じた。全力でヘッドバンキングするように首を前に倒し、頭上を通過した竜の頭を逆立ちして顎の方から上に蹴りあげる。蹴ったと同時に体を起こす。そのまま酷い刃こぼれをした短剣を竜の顎に突き刺して離脱。
腕に向かうフェイントを混ぜつつキメラミノタウロスの目に向かってステップを刻んで跳躍。したと同時に持っていた獣爪を顔面に投げつけて視界を遮り、キメラミノタウロスの寸前で体を落として後ろに回る。一瞬のみ目の前を覆った獣爪をこれまた一瞬で喰らい尽くして下に視線を落とすが、既にそこに俺の姿は無い。
「シッ!!」
うなじを投げナイフ1本で軽く切り裂き、そこにもう一本の投げナイフを全力で突き刺す。先程と同じ要領で拳に血を纏い、殴って投げナイフをさらに深く刺す寸前で・・・視界が揺れた。
身体が回転しながら吹き飛び、地面を転がる。殴られたのかと感じるのにそれほど時間はかからず、ブレッブレになった視界をなんとか戻そうと立ち上がろうとして倒れる。平衡感覚すら失った世界に吐き気を催しながら立とうとしては転び、立とうとしては転びを繰り返す。
「ガフッ・・。」
何が起きた何が起きた何が起きた何が起こった?殴りかかろうとしてそれから・・・急に『速く』なって、そして・・気づいたら殴られていた。
「喰らう・・・ことによる・・力とかの・・向上?・・・か?」
だとしたら納得は行くが・・・。
「自分の体も適応内とは驚いたな・・。」
思えば竜の頭を食べたときも速くなっていたし力も着いていた・・・。なんにしても・・。
「このまんまじゃ・・ダメだ。3分、時間を稼がねえと・・。」
震える体を酷使して立ち上がり、最後に1本だけ残った投げナイフを構える。
「来いよ。」
短く切られた啖呵はそれでも確かに奴に届いて・・直後、奴が俺に肉博した。
自喰
・・・禁忌。自分が自身を喰らうことになんの意味があるのか、なんの意味をなせるのか。
まあ要するに超低確率で強化されるけど超高確率で何も変わらないっていう行為です。RPGとかでよくある武器の強化するほどに難しくなるのが最初から成功率1%とかになってる感じ。これを連続で2回成功させてる時点でキメラミノタウロスは凄い人。
でもキメラは他種を体に取り込んでるから実質的に自喰は他喰と一緒なのでやっぱりあんまり凄くない。




