12.『限定解除』
どうしても1話にしたかったので今回文章多めです。誤字等あれば報告ください。
いや、いやいやいやいやそうはならんやろ・・・。
「まあ、なってるからなんも言えねえんだよなあ。」
呟きつつバックステップで距離をとって踏みつけを回避。近くにあった木の枝をぶん投げてみるが、やはりと言うべきか
「そら燃え尽きますわなあ・・・。」
さっきより無理ゲーになったんだが?もうちょっとで殺れそうだったのになんか傷完治してるし角も元に戻っ・・なんか一段と太くなってるように見えるのは俺の気のせいか?
「事実だろうなぁ。」
さて、うかうかもしてらんねえし作戦を立てよう。
「つーかそろそろ村の大人衆が来ると思うんだけど・・・。」
実際、ここまで派手に戦っているので村の人達はとっくに気づいてるし、村に駐屯してる騎士や冒険者が集まって向かっている最中だ。
「ま、来てるかどうか知らねえけどあの人達が来る頃には俺は死んでるか、勝ってるかだろうからな。あんまり関係はないか。」
思考を無理やり先頭に戻し、どうやって炎の竜巻を纏った牛を殺すか考えを纏める。
一撃で仕留める・・・火力が足りない
ヒットアンドアウェイ・・・近づいただけで死ぬのにどうやってアウェイしろと?
ちまちま遠くから削る・・・すぐに再生されるしまず木の枝や矢程度じゃ表皮に着く前に燃え尽きる。
「うーん・・・ダメだなぁ。」
なんもいい考えが浮かばねえ。
熱魔法ーーー火焔突進
「どわぁっ!?」
一瞬にして牛の体が燃え上がり、こっちに向かって爆速で突進してくる。
「熱魔法??」
今の魔法だよな?強化系?いや、そんなことはどうでもいい。あの炎が魔法によって勢いを増したってことは体に纏ってるあれは魔法によるものってことだ。
「魔法は魔法で防げる。」
つまり、俺の体を魔力で覆えば・・・魔法を使い始めてまだ1週間ぐらいしか経ってないのにそんなこと出来るわけねえよなあ・・・。
「ま、物は試しだ。やってやろうじゃねえの。」
イメージするのはフルフェイスの金属鎧だ。敵を見るための穴があって・・装飾はいらない。よし、イメージ終了。
「ふっ!!」
体に力を込めて、右手と左手、両足に開いた切り傷から血が滝のように流れ出る。
血液魔法ーーー深紅之鎧
流れ出ていく血を一滴残らず自分の体に纏って硬質化。更にそれを鎧状に加工して・・・。
「よし。」
短く呟き、一瞬で踏み込み、かけ出す。灼熱に身を包まれようとお構い無しかのように牛の顔の前まで来て、首に直接跳躍。着地する前に先駆けて一閃を首裏に叩き込み、体を捻って二閃、三閃と首裏を切りつけていく。
「おおおお・・・らぁっ!!」
渾身の力を振り絞って角に肉切包丁を叩き込んで無理やりへし折る。
「しゃおらああああ!!もう一本ーー!!!・・・は?」
突如として体から力が抜ける。、自身の体に起きた問題を解決しようと体を見るが、特にどこにも異常はない。強いて言うならば、鎧となっていた血が所々剥がれて・・・ああまじかそういうことかよクソッタレ!!
振りかぶった肉切包丁を下ろし、完全に身体が燃え尽きる前にその場から全力でバックテップして後退。
牛の炎の射程圏内から出た瞬間、血でできた鎧がボロボロと崩れていく。
「硬質化解除」
ドロッと流れる血が1点・・・それ即ち俺の右手の傷に集まり、そこから体の中へと入っていく。
「多分だがさっきのは熱中症かなんかだろう・・・。」
実際には貧血と熱中症があわさったという、なかなかに地獄な状態だったが本人は知る由もない。
「まあ、振り出しに戻った訳だが・・・。」
首裏を3回切りつけて角を折ったが・・・
メキメキメキ・・・!!
「ま、だよなぁ・・・。」
いやーコレマジでどうしようか?倒そうにもどうしていいか分からんし・・・。
「速攻で一撃入れて殺すぐらいしか方法が思いつかねえ・・・。」
近くにかける水もないしなあ・・・。森に引火し始めてるし。俺が水属性の魔法とか使えたら話は変わってたのかもしれんが、あいにく血液魔法なんでね。
「いや、マジでほんとに一撃で殺すぐらいしか手段がない。」
つまりはノーガードの殴り合いって訳だが・・・。
「一撃で殺す火力も、何より武器のリーチもねえんだよなあ・・・。」
力の有る無しはこの際放っておくとして、
「問題は武器の長さ・・・か。」
どうしようか。伸ばせるもんでもない・・・いや待てよ?
「いや、やれなくない・・・って危な!?」
突進を横にステップして回避し、追撃のしっぽによる薙ぎ払いを包丁で逸らして即離脱。
「とりあえずやってみるしかねえ・・・!!?」
そうだ、落ち着け。俺は何も見ていない。包丁の木でできた持ち手があと人差し指1本分ぐらいの太さまで燃え尽きてるとこなんて俺は見ていない。
「あぁもぅ・・・!!やったろうやないかい!!!」
血液魔法ーーー血流操作
体内にある血をほとんど全部右手から包丁をそうようにして体外に放出し、包丁に血が纏わりついた瞬間から硬質化させていく。
「俺の体の全部の血使ってやっと5センチ伸びたぐらいかよ・・・。」
元々の刃渡りが30センチぐらいなのにもう5センチ伸びたところでこの牛の首を断つのにはたりねえだろうよ。
「じゃあどうするかって、どうも出来ねえんだよなぁ。」
取り敢えずこのままやって見るしかねえだろ。
「やるだけやってやろうじゃねえか!!!」
そう叫び、踏み込もうとした勢いを止めるように、脳内でふたつの声が響いた。
『止まって!!』
『止まってくれないかな?』
「・・・は?」
ひとつは知ってる声・・・っつーかキトの声な訳だが、もうひとつは誰だ?聞いたこともねえな。
『お兄ちゃんはそうやっていつもいつも勢いだけで突っ込んでくから大怪我するんだよ。』
『君は止まって冷静に考えるということをしないのかい?よくそれでここまでこの牛と戦えたもんだよ。まあ、それもここまでの事さ。』
『だから私が手助けしてあげる。』
『僕が君の手助けをするんだからね。』
「え?な?はっ??」
『さっさとしてよ!また突進が来ちゃう!!』
『さっさとした方がいい。あの体躯からの突進は喰らえばタダじゃすまないだろう?』
2人して似たよーなことばっか言いやがって。
思考を巡らせ、イメージをする。想像したのは特大量の血液が包丁に纏わりついてできた刃渡り2メートルの大剣。
『おっけー、それがオーダーね。』
『了解した。では君は集中してくれ。』
スゥ・・・と目を閉じ、息を大きく吸って
ハァ・・・と目を見開き、息を大きく吐いた。
直後、身体の中の魔力を操り、自分の体内から辺りにころがっている狼の死骸にアクセスする。
『限定解除』血液魔法ーーー血液制御
狼まるまる1頭分の血液が球体となって浮遊し、包丁へと次々に纏わりついていく。その全てが包丁に着いた瞬間に硬質化し、刃を、峰を、持ち手を形成していく。
全てが包丁に着いた頃には、刃渡り2メートルの紅の大剣の柄を俺が握っていた。
「何か知らんがサンキュ〜2人とも!これで、殺れる!!」
限界まで集中したことによって周囲がスローに見え、自身だけがその中で等速に動けるように強化を施す。
血液魔法ーーー集中分泌
熱魔法ーーー火焔突進
強化効果が全身に行き渡ったのを感じた瞬間に踏み込み、莫大な量の熱を持って突進してきた牛の顎の下へと潜り込み、先駆け一閃。下から首を半分斬り裂く。
続いてさらに踏み込み、ほとんど同時と言っていいほどの速さで四本の足の腱を切る。牛が腱を切られて倒れるよりも早く揺れ動く尻尾を掴んで上空へ。
天に足、地に頭を向けて、いつの間にか首に巻かれていたマフラーを足元に投げて硬質化。足場として踏み込み、落下の勢いと重力による威力の加算で大上段からの振り下ろしを牛の首に叩きつけるようにして斬り落とす。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
雄叫びと共に斬り飛ばされた牛の首が高らかに飛んだ直後、勢いよく茂みから飛び出してきた冒険者達の中からラミアさんがガンダッシュしてきて落ちてくる俺に抱きつき、
「無事で・・・良かった・・・!!」
そう囁くように泣いたのを聞いて、夜空の映る視界は暗闇へとその景色を変えた。
「フフフフフ・・・ハハハハハハハ!!!」
まさか、まさか殺ってくれるとは思わなかった!まるで予想外だ!!彼女なら或いは僕らと行動を共にし、僕らの目的を達成出来るかもしれない!!いや、できるに違いない!!!
シスターによって手厚く介抱されている少女を凝視しながら、森の木々の更に上、崖の方で男は高笑いを繰り返す。
「アハハハハハハハ!!!!いいよ、いいよ!!君は最高だ!!!」
高笑いが響いたのを最後に、口から伸びる銀色の歯を煌めかせ、黒いローブを翻して男は颯爽と森に飛び降りて行った。
一応ここまででプロローグ?的なやつは終わりです。次話からが本編ですね。これからも拙作をよろしくお願いします。




