109.戦闘試験 其の三
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「経験さえ積めばお前もここまでこれるだろうよ。」
そう言ってあとのことをラシアさんに任せ、アルバートさんはこちらに向き直る。
「あと4人か・・次」
「私が行くわ」
なんの装備もしておらず、白いローブを着た黒髪の女が前に出る。こいつも蓮翔と同じで日本人っぽい顔立ちだ。と言っても、可愛いほうだろう。薫とはまた違うベクトルでモテるタイプだな。
「村雲 千歌。よろしくお願いします」
名乗ってお辞儀し、直ぐにバックステップ。アルバートさんから7メートルほど離れたところで腰だめに手を構える。・・・何してんだ?ジェスチャーか?あれは居合の構えだが・・・
「武器はどうした」
「問題ありません。始めてください」
さすがに不思議に思ったのか、アルバートさんが問いかける。が、千歌は問題ないと返答し、またアルバートさんを凝視する。
「・・分かった。ラシア、頼む。」
「・・始め!!」
「貯蔵解放。招来『三日月宗近』。」
号令とともに何やら呪文が呟かれ、正眼に構えたままそれを見ていたアルバートさんの目が驚愕に彩られる。当たり前だろう。俺もそれを見た瞬間はビビった。なんせ、小声で千歌が何かを呟いたのとほとんど同時に手元に刀がさやごと現れたのだから。
「っ・・!!?」
なんつー濃い気配!千歌の周りが霞がかっていてよく見えないが、恐らく俺の顕現させる安綱と同等かそれ以上の格の刀だ。
「暁一刀流ーーー『居合・抜閃』」
見えなっ・・・!!?ギィン!という弾いた音が響いたのと同時に、一瞬にしてアルバートさんの後ろに千歌が刀を振り切った姿勢で現れた。
「今のを防ぎますか・・!!」
「あっぶねぇ・・・ほぼ勘だったぞ。」
当然だ。初速は俺でも見えなかった。抜刀した瞬間に刃が光らなかったら防御とかほとんど無理ゲーだろあれ。つか霞を振り切った一瞬で鞘が見えたが、あの装幀でここまでの気配出す刀なら考えられるのは伝説の刀『三日月宗近』だろう。それなら安綱とも互角以上なのに納得がいく。問題はどうやって出したかだが・・・ぶっちゃけ、アイテムボックスを開いて瞬時に出したとしか思えない。ソースはベルパイセンの『天叢雲』。
「アイテムボックスに伝説級の刀か・・。」
同じことを考えたのか、アルバートさんもそれを指摘する。
「そこまで分かられたらもう意味が無いですね・・。わかりました。降参します。」
初見殺しだったから通用したが、多分二発目以降にあれを打たれたらよっぽどの搦手じゃない限り俺はともかくアルバートさんは喰らわないだろう。俺の戦闘スタイル搦手に割と弱いからな・・。
「引き際を見極め、あの速度の居合を当ててくる・・か。いい目を持っているな。」
「でしょ?」
会話しつつ千歌がサイモン達の方に移動する。・・てか、レベル高くないか?アッシュと言い千歌といい。化け物揃いだな。まあ、1番の化け物はそれを全部叩きのめしたアルバートさんなんだろうが。
「さて・・次だ。」
頭を振り、さっきの千歌の光景を振り払ったアルバートさんが口を開く。残るは3人。さあ、誰が行く・・・?
「僕が行きましょう。」
続いて前に進み出たのはもはや見なれた漆黒の髪色。蓮翔とは違い、物腰柔らかに返事をしたのは純白の鎧を纏った優男だった。こいつも武器を身につけておらず、微笑みながらアルバートさんを見ている。
「あっと、自己紹介か。僕は大橋 修人です。よろしくお願いします。」
「お前も武器がないようだが・・。」
「ああ、大丈夫ですよ。」
返事を返しつつ、チラッとラシアさんの方を見てほほ笑みかける。準備が出来たという合図なのだろうが、妙に鼻につく。無性にあの顔を殴りたくなってきた・・・。
「は、始め!」
蕩けた顔をしていたラシアさんが、アルバートさんに睨まれて正気に戻り、慌てて号令をかける。
「サモンコール『EX』。泉の精よ、僕に力を。」
「「ッ・・・!!?」」
俺とアルバートさんの驚きが重なる。それも当然だろう。なんせこの修人とかいう奴は、『なんの魔力反応もなしに』地面から神々しいオーラを放つ剣を引き抜いたのだから。
「聖剣エクスカリバー・・僕の切り札だ。」
普通、スキルや魔法で何かを召喚する場合ら魔道具でも一定の魔力反応が召喚する時に感じ取れる。が、こいつはそれが全くなかった。それの意味するところはつまり・・
「千歌との戦いを見ていて、この程度は安全と判断しました。気合いで避けてください。」
サモンコール『S』ーーーマルチソード
何も無い空中から、なんの予備動作もなしに次々と鉄の剣が高速で射出されていく。
「ぐっ・・!!」
「まだ行きますよ?サモンコール『K』。全てを貫く物よ、顕現せよ。」
またもや何も無い空間から魔力放出なしでエクスカリバーと似た装丁の黄金の槍が出現する。
「聖槍カレドヴルフ・・・僕にこれを抜かせるとは思いませんでしたよ。」
砲台から放たれた弾のよりも数倍早く。音速の衝撃波を起こしながら聖槍が轟音と共に放たれた。ラシアさんが慌てて結界を貼ってサイモン達を守り、衝撃波から全員を守る。
「はy・・・!!?」
速いなどと言う前に轟音が響いて、アルバートさんのこめかみのすぐ側にカレドヴルフが突き立った。
「・・・俺の負けだ。」
両手を挙げ、アルバートさんが降参の意思を告げる。カレドヴルフは確かにアルバートさんに当たらなかった。が、それは修人が当てられなかったのではなく、意図的に当てなかったのだ。それが分かるからこそ、アルバートさんはこの場で降参し、修人も素直にそれに応じてラシアさんの所に歩いていった。座った瞬間にサイモンやリスト達に囲まれていたが、そりゃあ気になるよな。俺やアルバートさんですらあの方式の武器の出し方は知らない。ましてや最後の槍の一撃。強すぎるにも程があるだろう。
「・・・次だ。」
眉間に手をやってトントンと叩き、思考を落ち着かせつつ次を言い渡す。先程の戦いで死を間近に感じたはずなのにもう立ち直ってる・・。すげえ精神力だな。
残るは俺ともう1人、16歳ぐらいの少年。目配せしあってどちらが先に行くかを目線だけで話し、結果、太古から伝わる厳正にして公平な勝敗決定手段。通称ジャンケンで俺が先に行くことになった。
「俺が行きます。」
俺が前に出たことでラシアさんの後ろにいる奴らがサイモン以外ザワついたが、まあどうでもいい。ぶっちゃけ、俺とアルバートさんの力量差はそこまで大きくない。ルイスパイセンほどでは無いのは分かるが、ドレットパイセン達よりちょっと上だろう。ということは、俺と同じか少し下。若しくは少し上くらいだろう。勝ちの目は十分にあると見た。
「名前は?」
おや、そちらから振ってくれるとは。では名乗らせてもらおうか。さっきの修人とかいうやつのせいで若干プレッシャーがあるが関係ねえ。勝ちの目もあり、勝てる策もある。それに・・
「キト。ただのキトです。」
弟子の前で格好つけねえ師匠なんざいねえんだよ。
戦闘試験、3話で終わらせるつもりだったんだけどなぁ・・・。
補足:召喚されただけで特に何もしなかったように見えた聖剣ですが、マルチソードの時、全部の剣に修人の思考を反映して軌道を変えたりするというなかなかにえぐいことをしています。なんならカレドヴルフの軌道制御もしていたので、これ無かったら地味にアルバートさん死んでました。因みに、他にも特殊効果はあります。
マルチソードを言葉に出てないのは出現させるのが簡単だからです。寧ろ、聖剣や聖槍がおかしいだけであって、基本は修人君は無詠唱で武器を出します。




