9.俺が言うのもなんだけど
「う、うぅん・・・。」
右腕の痛みと頭痛で意識が朦朧とする中、目が覚める。
「あれ?ここは・・・?」
ついさっきまで雪原の上にいたはずの俺の体は何故かベッドの上にあった。
「俺はフェンリルと戦ってたはずじゃ・・・?」
「ふむ、やはりフェンリルであったか。」
「・・・。」
え?いきなり?つか誰よあんた?ん〜?あっ!
「し、神父様!?」
ビックリしすぎてベッドから落ちると思った。え?てかなんで神父様がここにいるんだ?急に出てきたし。
「フォッフォッフォッ。なんでわしがここにおるのか気になってるようじゃの?」
「は、はい・・・。」
マジでなんなんだこの人・・・。
「安心せい。取って食ったりなんぞせんわ。」
「そ、そうですか・・・。」
キツい・・ノリがキツいよ神父様!!
「お主も目が覚めたことだし、ラミアを呼んでくるかのう。」
そう呟き、神父は部屋から出ていった。てかここどこやねん?だいたい察しは着くけどな。教会の医務室とかだろうとは思う。んで持って、俺の魔法属性は・・
「血液魔法・・・まあよーするに血魔法なんだろーな。」
フェンリル戦での最後に打ったあの魔法は間違いなく強化系。てことはつまり、俺の種類・属性は種類:強化 属性:血 ってことになるのだろう。
「特殊属性か・・・やっぱりキトの魔法属性とは違ったか・・・。」
「キト!!」
バンッ!と、勢いよくドアが開かれ、ラミアさんが俺の右腕のことなんかお構い無しにギュゥッ!と抱きついくる。
「い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」
結果的に右腕の骨事情が悪化した。
「ごめん・・ホンットにごめん・・・。」
「大丈夫、大丈夫。なんてことないよこれしき。」
まあだいぶ痛かったけど折れるまでは行かなかったからな。良かった良かった。
「それでの、お嬢さん。お主の適正な種類・属性が判明したんじゃが、聞くかの?」
「はい!勿論です!」
「お主は種類:強化で属性:特殊(血)の血液魔法使いじゃ。その顔だと、既に知っておるようじゃのう?」
「まあ、そうですね。」
あの空間?場所?でフェンリルとやり合ったことは言った方がいいのだろうか?
「さて、お主にひとつ聞きたいことがある。」
「な、なんでしょうか・・?」
「何と戦った?」
「・・・雪狼の王であり、白銀の主と呼ばれる者フェンリルと、奴は名乗っておりました。」
「・・・成程のぉ。」
「ちょ、ちょっと待ってください!フェンリルと戦っていたのなら、何故キトにこんなに傷がないのですか!?私や神父様ならまだしも、キトはただの子供ですよ!?」
確かに俺もおかしいと思った。あっちであんだけボコられたのに実際の不調らしい不調は右腕ぐらいだし。
「それついてはの、あの水晶の能力なんじゃ。」
「「・・?」」
「あの水晶は、元々フェンリルの魔力核を削って作られたものじゃ。ここまで言ったらわかるかの?」
「!!?」
「・・・?」
ラミアさんがわかった!!みたいな顔をし、俺はなんの事やらと思いつつ首を傾げる。
「つ、つまり魔素と魔力への適性が高ければ高いほど意識が引っ張られる可能性があるということですか!?」
「その通りじゃ。お嬢さん、お主、何体のフェンリルと会った?」
「子供のフェンリルが一体とフェンリルの長と名乗るものが一体現れました。」
「長・・か。そいつにやられた訳じゃな?」
「は、はい。最終的に魔法を使った全身全力のパンチでやっと互角でした。」
つーか負けてたなあれ。
「なるほどなるほど。フォッフォッフォッ!笑いが止まらんわい。いや、なんでもないんじゃがの。そうかそうか、互角か・・・。」
「あ、あのぉ神父様。」
ラミアさんが至極楽しそうに笑う神父様に申し訳なさそうにしながら口を開く。
「特にこれといって用事がないのなら、私達はこれで帰ってもよろしいでしょうか・・・?」
「おお!勿論だとも。時にお嬢さんや。」
「な、なんでしょう?」
ホントになんだ?俺なんかやらかしたか?
「また面白いことがあったらぜひわしにも話してくれんかの?」
「は、はい!」
「フォフォッ。そう畏まらんでいい。ではまたの?」
「はい!今日はありがとうございました!!」
「こっちこそ面白い話が聞けて良かった。ありがとうの。」
そう言い合い、神父様に手を振って俺とラミアさんは医務室から出る。
医務室に残った神父は今まで隠していた、枯れ枝のように細い右腕を医務室の窓から見える日光に晒し、独り言ちる。
「あやつとやり合って互角とは・・・。面白いことになってきたのぉ。」
或いは、彼女であればいつか自身の願いを叶えてくれるのかもしれないと信じて。
「楽しみだのォ、アルベルトよ。」
さて教会から出ようとした俺たちなんだが、中々外に出ることが出来ない。というのも、まあ絶賛ラミアさんが絡まれてるんだよね。理由は単純明快。
「あんたみたいなのがなんで複合属性なのよ!」
生まれつきで別れるものに対してケチを付ける馬鹿な女が1人。しかもこいつ、聞けばシスターとかではなくて普通に学院時代にラミアさんのことを勝手にライバル視してた愚か者らしいのだ。
「(うわめちゃめちゃ面倒くさそう・・。)」
確かに複合属性は希少だからな。嫉妬したくなる気持ちも理解はできるが・・・。
「ぶっ殺してやる!」
いやいや待て待て。どうしてそうなった?急に物騒じゃねえか。
「あんたのせいで、私はァ!!」
「・・・・・。」
ラミアさんの額に青筋が何本かできている。
「(あ、コレ相当キレてるね。うん。)」
「はぁ・・・。もう何回言ったかも分からないのだけど、貴方の魔法理論よりも私の魔法理論の方が学院は面白いと思ったのでしょう?だから私の魔法理論が選ばれたわけだし。それに、それと私が複合属性だってことは何の関係もないわよね?」
「(おおう・・。まさか何の関係もないとは・・・。)」
こういうのって魔法属性で嫉妬とかそういうのじゃないの?単にラミアさんのほうが成績が良くて頭の出来も良かったってだけじゃん。
「あんたみたいな最初から持ってる奴なんかが私みたいな持たざる者の気持ちを理解できるわけが無いのよ!あんたなんかどうせ大した努力もしてないでしょう!!」
馬鹿女がそうのたまった時、俺の頭の中で何かが切れた。と同時に女が杖を振り上げ、魔法陣を展開する。
「攻撃魔法を使えないあんたじゃ、これは防げないでしょうねえ!炎魔法ーーー炎熱球!!初級魔法でじっくりなぶり殺しにしてあげるわ!!」
「人の努力を・・・。」
血液魔法ーーー血流操作
足に流れる血液を加速させ、一気にエネルギーを行き渡らせる。の直後に、貯めたものを一気に解放。一瞬で展開した魔法陣に肉薄し、予め切って血を出していた左手の手刀に血を纏わせ、硬質化。魔法陣を切り裂き、女の顔面になんの躊躇もなく左足で後ろ回し蹴りをぶちかます。
「プゲルッ!??」
「バカにするならまだしも、無いものとして扱ってんじゃねえよ!!!!」
まあ、俺が言うのもなんだけど。とかを考えつつ、気づいたらラミアさんに腕を引っ張られて教会の外の路地に連れ込まれていた。
「このバカァ!!」
開幕の一声がまさかそんな園児じみたものだとは思わんかったなあ・・・。




