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0.プロローグ
ある雨の日・・・
コツコツコツと、誰もいない夜中の通りに足音が響く。
男は手になにか大きなものが入った籠を持っており、涙を流しながら町外れの教会へ向けて足早に通りを抜けていく。
「ごめん・・・ごめんなぁ・・・。」
男はそう呟き、教会の前にそっと籠を置いて、寒さを凌げるようにと上から赤いマフラーを被せる。
「あぁ、忘れていた・・・」
体を起こしたと同時に手紙を書いたことを思い出し、懐に入っていた手紙を抜いてカゴの中に入った『赤ん坊』の隣に置いた。
「済まない・・・ダメな両親で・・本当に・・・。」
男は目から涙を流し、堕ちた涙が手紙を濡らした。そうして子供の入ったカゴの蓋を下げ、雨で濡れないように祈りの言葉を呟いてから、迷いを振り切るように走ってその場を去っていった。