SP01-5【特別編】十桜と水浴びの乙女たち(終わらない夏)
特別編終わりです!
SP01-5【特別編】十桜と水浴びの乙女たち(終わらない夏)
ふわふわと、猫が編みだすシャボンの園。
赤面チラ見、水浴び乙女。
さあ、二人になんて言おう?
・二人とも、顔が赤いな。熱でもあるのか?
・花とか植物とか、いい感じの風呂だな。おかげで居心地がいい。
→・おっぱいボヨヨ~ン! ボヨッヨ~~~ン!!
――ピコォ~ン
(なんだ? 音が……?)
(まあ、いいや……)
十桜は、何を思ったのか、顔を真赤にしている二人の前で、
「おっぱいボヨヨ~ン! ボヨッヨ~~~ン!!」
愉快なジェスチャーをもちいて、
至極、明るく振る舞った。
「……」
「……」
しかし、莉菜もそらも微動だにせず、
水風呂はバカと赤面ガールズの園になっただけだった。
(あれ……スベった……)
(渾身のデキだったのに……)
(恥ずかしい……)
(う~ん……なんて言えばこの場が和むんだ……!?)
→
・今季アニメ何観てる? 俺はリコリスと異世界おじさんと
異世界ハーレム。あとオーバーロードと二股のやつ……
・地上波初放送のワンピーススタンピード観てたらナミのエチエチボディを
『ワンピース祭り豪華プレゼント』で隠しやがって
許さんぞフジテレビィィィ!! ってなったよな?
・おしりプリプリ、プリプリ光線ンンン!! ビビビビ~!! うわあやられたああ!!
(そりゃあもう……)
――ピコ~ン
「おしりプリプリ、プリプリ光線ンンン!!」
立ち上がって女子たちにケツを向け、
「ビビビビ~!!」
割れ目から手でビームのジェスチャー。
「うわあやられたああ!!」
二人に向けた攻撃なのに、なぜか自分がヤラれるというおもしろ仕掛け。
「ブクブクブク――……」
広い浴槽を活かし、水面の奥の方へ吹き飛んで沈んでゆく。
十桜は、心の奥底にある太陽を目覚めさせていた。
年長者だし、みんなのムードメーカーになるつもりなのだ。
(あれ……静かだな……)
水の中だからか?
笑い声が聞こえない。
代わりに、二人の脚とビキニの逆三角が視界に飛び込んできた。
縦長なかわいいヘソと大迫力な下乳も見える。
十桜は黄色と薄青の水着を交互に目に焼きつけると、
元のポジションに移動してゆっくりと水面に顔を出した。
おかしい。
二人は赤面顔うつむけのままだ。
(全然フラグが立たない……)
(しょうがない……)
→
・二人とも、顔が赤いな。熱でもあるのか?
・お前ら今日は帰さないぜ。
・結婚しようベイビーたち。
――ピコ~ン
「二人とも、顔が赤いな。熱でもあるのか?」
十桜も一応男だ。
彼女らは、男(兄だけど)と水風呂に入るのが少し恥ずかしいだけだろうが、
やはり顔色の変化はちょっと心配だった。
「……あ、あたしは全然、大丈夫ですよ……!」
「そらも……そんなに赤いかなあ……」
(おお、やっと反応があった……)
(やはり、人間らしい会話が一番か)
十桜は二人の熱を見た。
莉菜とそらのおでこに、同時に手のひらをくっつけたのだ。
「はっ……」
「ぁ……」
二人の口から息が漏れる。
(ん~別に熱はないかあ……)
莉菜もそらも顔は赤いが、おでこはひんやりしていた。
「平熱かなあ……」
十桜が手を引っ込めると、
彼女らは、にわかにもじもじしだした。
熱はないのに息苦しそうにもみえる。
「……でも……そら、ちょっと……寒いかも……」
そらはしっとりとつぶやく。
すると、十桜の横に並んで肩と肩をくっつけてきたのだ。
「あ、あたしも……冷えたかもしれません……」
莉菜もささやくようにしていうと、
そらとは反対の肩に寄り添ってきた。
(なんだ……なんだ……)
十桜は女子二人に挟まれていた。
人肌のぬくもりがジンとしている。
温かみを感じることで、結構な体温を奪われていたことを知る。
(あったかい……)
二人がくっついてきて、
頼られている感じがして、
保護者感が増した。
すこし気分がいい。
しかし、それ以上に体が固くなり、
胸がドキドキしている。
視線を左右に振ると、深い深い谷間にぎょっとなる。
(スゲエエエエエエエエエエエエエエ――――ッ!!)
(……すげえええすげえええッけどッ! いかんいかん!)
(俺はお兄ちゃんで先輩なんだ!!)
(みんなの楽しい保護者なのだ!!)
そうだ。
色欲に流されるなぞ、三流の保護者ではないか。
漢、三日月十桜は、誰もが認める一流の保護者になるのだ。
(……いや、それいつ決めたんだよ……)
ひとまずその話題は置いといて、
人知れず謎の葛藤をしていた十桜は、
――ぐぎゅうううう……ポン……
(腹が、減った……)
腹が鳴り、口を半開きにして遠い目をした。
(なんか食わないと……)
(何食おうか……?)
(う~ん……)
(……俺はいま、何腹なんだ……?)
「先輩、お腹すきました?」
「うふふ、ご飯用意してあるよ。あ、ここに持ってきてもいいかなあ?」
「え? 風呂場で食うのか?」
「うん……ダメかなあ……」
「いいんじゃないか? 母ちゃん出かけてるし……」
「やった……!」
「やったねそらちゃん……!」
二人はるんるんしながら風呂場をはなれた。
いまだ泡まみれの猫にシャワーを浴びせたら、
やつは鬼のようにブルルルッとして出ていった。
(メシ用意してたのか……)
(保護者の俺より保護者じゃねーか……)
(しかし、風呂でメシとは……)
そらが変わったことをするのは慣れっこだが、
風呂場で食事というのは初めてのことだった。
お腹がもう一度鳴ると、すぐに二人は戻ってきた。
「お兄ちゃん、見て……」
「すごいですよ~」
脚をガチャっと組み立てるテーブルを二つ並べて、
その上に置いたのは、
「流し……そーめん……機」
それは、大型犬が寝そべり、頭を上げているくらいの大きさのマシンだった。
「これで完成……!」
そらは、マシンの高台にノボリを立てた。
超、満足げな笑顔だ。
この商品には、小人サイズのノボリがおまけでついている。
その文面は『流しそうめんはじめました』などの煽り文句なのだが、
三日月家のノボリには、うさぎさんとねこさん、
そして、じゅーろーくんが描かれている。そらオリジナル仕様だった。
「今年、まだやってなかったでしょ?」
「うふふ、たのしーなー……こんなのあったんだ~、すごいね~」
「ね~」
莉菜もそらも、心底楽しそうに食事の準備をしていた。
(ちょっとした旅館のような風呂場で流しそうめんか……)
(こいつは風流なんじゃないの……?)
そらがマシンに水と氷をセットした。
底の流れるプールからモーターが水を引き上げて、高台から流水がはじまる。
十桜はテーブルの前にベタっとあぐらをかく。莉菜は隣に正座する。
そらは向かいでそうめん係だ。
石床の風呂場で、水着美少女二人とおもちゃの流しそうめん。
なかなか奇妙で貴重な光景だ。
(今年はダンジョンだクエストだでハードだったからなあ……)
(風呂とおっぱいとそーめん……)
(こんな夏も、悪くないんじゃないの……?)
「じゃあ、第一弾いきます……!」
「は~い……あ、最初は先輩が取ってくださいね。莉菜は次です……!」
そらと莉菜がきゃぴると、
竹を模したウォータースライダーをすべって、
白い糸の束がくるりんしゅ~っと落ちてくる。
(よっ……と……!)
素早く注意深くメンをたぐる。
(八割取れた)
(俺は昔からそーめん名人なんだよ)
残り二割は、底の流れるプールをくるくる回っている。
メンをつゆにひたして、つるりとのどに流しこむ。
(食道がヒヤッとする)
(空きっ腹に効くなあ)
(俺の全身が胃袋のようだ)
「せんぱい、上手ですねえ……次は莉菜です……!」
「じゃあ、二番手いきま~す」
「は~い」
そらがメンを流す。莉菜は瞳がキラキラしている。
しかし、
彼女の手前で男の腕が動いていた。
(よっ、と……)
「ああ~せんぱ~~~いッ!?」
「お兄ちゃん……!!」
なんと、莉菜の分を十桜が奪い取って胃袋に流し込んでしまったのだ。
(うおおおおん。俺はいま、川上の略奪者だ)
(水辺のバンディットなのだ)
「も~、お兄ちゃんは一回休みだからね……!」
「せんぱい、いじわるですぅ~!」
さすがに、次のメンは莉菜に譲った。
十桜も鬼ではないのだ。
絶対に取るぞ! と意気込んでいた彼女は、
「ああ~……!」
「うふふ、莉菜ちゃん慣れだね」
(ふふふ、慣れだな……)
流れきたメンの四割しか取れずにいた。
そのときのアクションとリアクションで
二つ実ったパッションフルーツがぷるぷるんと揺れていた。
(ふふふ、目にも美味しいのかこのスタイルの流しそーめんは)
(これ、流行るんじゃないの?)
(よし、毎年やるか)
(いや、その前に冬があるじゃないの。冬もなんかできそうだぞ)
そして、妹に一回休みをくらった十桜は、次の次に七割キャッチ。
取れたメンが少なめだったので、
「え? そらにくれるの……?」
(ああ、俺はやさしいお兄ちゃん保護者なのだ)
そらは小声で「おにいちゃん……」とささやくと、
ちいさな口をあけ、
かすかな声で「あ~ん……」をする。
そのとき、なぜか目をつむっていた。
――むぐむぐ
「おいちぃ……お兄ちゃんありがとう……」
「……せんぱい」
(ん? なんだ後輩?)
隣に座るちっちゃな莉菜が、
なにか、もじもじしている。
足はくずして女の子座りだ。
もじもじ、もじもじしている。
「その……次も、せんぱいの番でいいですよ……」
莉菜は、こっちを向いて、しかし、うつむいていた。
(なんだ? 控えめな後輩だなあ)
(まあ、いい。後輩め、俺のそうめん捌きに見惚れたんだな)
莉菜の望み通り、十桜は次のメンをキャッチ。
それを口に運ぼうとしたとき、
隣のちっちゃな生き物が、
鳥のひなのように口をあけていた。
かすかな声で「あ~ん……」をして、
なぜか、目はつむっている。
もちろん、十桜はそのまま胃に流しこんだ。
(う~ん、後輩の分のそーめんは、んまい)
「……」
しかし、となりの後輩は黙っていたかと思うと、
――ぐりぐりぐりぐり……
頭を、十桜の二の腕にぐりぐりドリルしてきた。
――ぐりぐりぐりぐり……
(なんだ? 失恋したリスみたいなやつだなあ……)
(まったく……最近の森のなかまたちは……仕方ない……)
莉菜が無言で二の腕を削ってきたので、
十桜は次のメンをぐりぐりされながらキャッチした。
ぐりぐりされ、震える手で八割をたぐれた。
(なぁ? 保護者だろ?)
鼻が高い。
しかし、いまだぐりぐりしている頭に、
こんッと頭突きをかます。
「いたいですぅ……」
眉をハの字にする莉菜に、箸に取ったメンを見せると、
パーッと笑顔になったので、
(いまだぁ……!)
やつの口にそれを放り込んだ。
――むぐむぐむぐむぐ……
莉菜は瞳をとじたまま。
メンを30回以上咀嚼してごっくんした。
それから、十桜が自分の分を食べると、その次と次は、
「あ~ん……」
「あ~ん……」
妹と後輩が口をひらく、という謎のモードに突入していた。
(これじゃあ、俺はひなにエサやる親鳥じゃないか……)
(フッ……まあいい。これが一流の保護者ってやつだ)
(孤独の保護者だな。ふふっ)
何度かひなたちにメンを配ると、
彼女らは目を細めて、何かをやりきったような、天国にいきそうな顔をしていた。
そのとき、一人がハッとなった。
「……あっ、ごめん。取りにくかったね。お兄ちゃん天ぷらも食べてね」
メガネの女子が、どことは言わないがぷるんぷるんさせながら、
何かのかき揚げらしい天ぷらが山盛りの皿をつきだしてきた。
一口大のちいさなそれを、つゆにちょびっとだけつけて口に運ぶ。
――サクッサクッサクッ
おもしろいほどに口から快音が響く。
衣に通した歯は、むちっとした感触を得て、
同時にぷちっとした気持ちいい食感がかさなる。
そして、咀嚼するごとに、油と野菜のかおりが鼻をぬける。
(これはいいぞ……!)
「枝豆ととうもろこしのかき揚げだよ。どうかな?」
(枝豆ととうもろこしのかき揚げだって……?)
(いいじゃないか)
(こういうのでいいんだよ)
一つ目をまたたくまに噛み砕いて胃に流す。
気づいたときには、二つ目を口にはこんでいた。
今度はつゆをつけない。
それから、一気に三つ目を食べ終える。
こいつを調理した妹と後輩は、にこにこしてこちらを見つめていた。
(なんだ……俺……いま三つ目を食べたんだっけ……?)
かき揚げに夢中になっていた。
口の周りは、テラテラとした光沢が生まれていることだろう。
薬味に箸をのばす。
様々なそれは、流れるプールの中洲に盛られている。
しそ、万能ねぎ、オクラ、プチトマト、きゅうり、白ごまなど。
何種類か取ってつゆにつけ、
ガラスのお椀にちょろっと残る、メンとともに口をさっぱりとさせる。
そして、にこにこ妹が流す新たなメンを口にする。
すると、にこにこ後輩が天ぷらを十桜の口に運んできた。
――つるん
――サクッサクッサクッ
(……そーめん、かき揚げ、薬味の永久機関……)
(こいつは無限に食えるぞ!)
「……せんぱい、美味しいですか? 莉菜も手伝ったんですよ」
「莉菜ちゃん、天ぷら揚げるの上手になったよね」
「えへへ……」
(後輩の成長を見ることのできる風呂場そうめん……)
(いいじゃないか)
「せんぱい……? おしゃべりしないんですか?」
(後輩、俺の食いっぷりと表情を見ろ)
(言葉ってのは、口にせずともどこにでもあるんだ)
十桜は背中で語った。
しかし、後輩はきょとんとするばかり。
やがて、じーっと兄を見つめていた妹が口を開いた。
「……いけないんだぁ……」
「どうしたのそらちゃん?」
「お兄ちゃんの悪いくせなの……」
「くせ?」
「うん……お兄ちゃんいま孤独のグルメごっこしてるでしょう?」
(なんだ? なんでわかったんだ……!?)
「いま、なんでわかったんだって思ったでしょ?」
「なんでわかるんだよ!?」
「やっとしゃべった……!」
「そらちゃん、すごい……お兄ちゃんのことなんでもわかるんだね……!」
「900パーセントわかるの」
「エヴァのシンクロ率越えてるな!!」
(……なんなんだこのメガネは……)
「いま、なんなんだこのメガネ美少女はって思ったしょ?」
「思わねーわッ!」
(くそッ……俺の本気見せてやる……!)
十桜は、おおきく息を吸って吐いた。
お兄ちゃんは、心の中の声だって手を抜かないのだ。
(当てられるもんなら当ててみろ……!!)
(おちんちんおちんちんおちんちんおちんちんおちんちん……)
とても、乙女のまえではしらふで言えない言葉を連打したとき、
流しそうめんマシーン越しの眼鏡がキラめいた。
「あ……」
「なんだ? 言ってみろ!!」
「言えない……」
「ッ……!! なんでわかんだよお前ッ!?」
「そら、言えない……」
「……じゃあ、あたしが当てます……!」
「え……? なんの時間なんだよコレ……」
「先輩は……そらちゃん、莉菜ちゃん、
いつも美味しいごはんありがとう。いつも可愛いねって思いました……!」
そういう莉菜は、最後の方は小声になっていた。
彼女のピュアなまなざしを受けた男は、
おちん、おちんいっている己のワードセンスを呪った。
だから、
「……そう、です、ね……ぼくは、そう……思いました……」
ウソをついた。
「えへへ、当たっちゃった……!」
「うふふ、よかったね、莉菜ちゃん……!」
(……)
その後、十桜は無心で涼風そうめんを楽しんだ。
乙女たちは、きゃぴきゃぴしていた。
食後、片付けをすると、
山手線ゲーム、お題『夏の終りにありがちな事』で腹ごなしをして、
ちょっと水につかってから風呂を出た。
居間で扇風機をかけると、三人でスイカを食べた。
十桜は志村食いを見せ、
莉菜とそらは全くインパクトのない
素朴なげっ歯類みたいな食べかたをしていたので、
十桜は、勝ったなと思って愉快だった。
おやつもおわってテーブルの上の猫をどかすと、また模造紙をひろげた。
莉菜とそらは、まったりとおしゃべりをしてから横になった。
畳のうえで、座布団まくらに並んでお昼寝。
二人が姉妹にみえた。
居間の熱気がやわらいでくると、母がおみやげをさげて帰ってきた。
「ローマ特製ピッツァだよ~」
トマト、バジル、チーズのシンプルな一枚。
十桜が、ピザ三人で分けるの? と尋ねると、
母は、二人の分はもう一枚あるから、一枚はまるごと十桜の分だといった。
十桜は保護者だから一人前なのだ。鼻が高い。
母は、寝ている二人を起こさないように、そろりそろりと二階にあがっていった。
ピザの半分は切って冷蔵庫にいれ、
もう半分をトースターで温めて食す。
だが、小さな二切れは残しておく。
一枚を手にして、仰向けになってかわいい寝息を立てている後輩と妹に近づく。
あ、ちなみに、二人とも水着からTシャツ短パンに着替えています。
(すげええええええええええええ――……!!)
どことは言わないが、Tシャツのイラストはぼっよ~んと歪んでいた。
そのやわさゆえ、重力にしたがって潰れてはいても富士山は富士山。
しかし、それは置いといて、
ピザの先をそらの鼻先に近づける。
起きない。
次は莉菜。
よつん這いで、覆いかぶさるようにそらを跨いで莉菜の鼻にピザを持っていく。
顔がピクッとした。
しかし、起きない。その一切れをまたそらに近づけたとき、
――トンッ
誰かに背中を押された。
そのせいで、バランスを崩してしまい、
(うわッ――)
――むにゅうう
莉菜の歪んだたぬきさんに顔からダイブ。
ピザをつまんでいた手は、
――むぎゅうう
そらの歪んだうさぎさんを鷲掴み。
じゃあ、ピザは?
「十桜おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――!!」
ピザの所在の前に、母が地球に降りてきていた……
「いやッ! ムフッ、これは……!!」
十桜がたぬきさんとキスしてジタバタしている間、ピザは、
「おいひい……」
莉菜のお口にすぽっと入っていた。
「……ん……いいにおい……ピザ?」
目を覚ましたダイナマイトうさちゃんTシャツメガネっ娘は、
何を寝ぼけたのか……
「おいひい……」
自身の胸の上にあった兄の指をはむはむしていた……
「何してんだアンタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
「違ッ、うップ……」
「ぬぅわにが違うんだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアいイイイッ!?」
「なぁ~」
母は絶叫。
猫も鳴いた。
十桜の背中を押した犯人はこの猫のおたまだった。
連続ジャンプで背中を通り、テーブルに渡ったおたまは、
皿にのこったピザ一切れをクンクン嗅いでいた……
「しぇんぱい、おいひいれす……」
「お兄ひゃん、おいひい……」
後輩と妹はずっと寝ぼけていた……
「十桜オオオオオオオオ二階においでエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」
(吊るされるうううううううううううううううううううううゥゥゥ――――!!)
そして、熱い夏は延長戦にはいったのだった。
「しぇんぱい……また、おふろ……」
「お兄ひゃん、あしたも……おふろ……」
読了ありがとうございます。
気に入っていただけたら、高評価・ブックマーク・いいねを押していただけると、作者の励みになります!!
俺たちの夏は終わらない!!
追伸、いつも誤字脱字報告ありがとうございます!
ほんとにたすかっております。




