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SP01-2【特別編】十桜と水浴びの乙女たち(見すぎジュン)

暑いっす…


 SP01-2【特別編】十桜と水浴びの乙女たち(見すぎジュン)


「お兄ちゃん、プール~」

「……プールはお前……みんなにおっぱい見られて恥ずかしくないのか?」

「お兄ちゃん、莉菜ちゃんのおっぱい見てるでしょ?」

「あっ!?」

「せ、せんぱい……」

「み、見てねーし……!」

「お兄ちゃん、そらのならいいよ」

「見ねーし! 見てねーし! はあ? なにが!?」


 十桜がそらをあしらう。

 すると、グイッと虫あみが沈み、目の前にノイズがはいる。

 また“凝”を邪魔されてしまった!


(だが、まだ終わらん……!)

  

 十桜はあみあみでもがんばって後輩を見守った。


「つかまえたんだからいこ?」

「せんぱい……見すぎですよぉ~……」


(三杉淳がなんだって……?)


 そらは訳のわからないことをいい、莉菜はキャプ翼の話を振ってきた。

 そのとき、


 ――ゴンッ


 頭に拳が降ってきた。

  

「痛てえッ……!!」


 母の鉄拳が刺さったのだ。


「あんた莉菜ちゃんがかわいいからって見すぎなんだよ!

 莉菜ちゃんもなんで胸隠さない!?」

「あ……あの、先輩はわんぱくだから……」

「なにいってんだいあんた!? もっと自分を大切にしな!!

 じゃないとあたしのババシャツ着せるよ!」

「耳元でうるせーよ母ちゃん!」

「お兄ちゃん、プールぅ~……」

「そうだよ十桜! そらと莉菜ちゃんをプールに連れてってあげなよ~!」

「え~!」


 母は殴った頭を網越しになでなですると離れていき、

 のそっとかばんを肩にかけた。

 そろそろ出かけるらしい。


「いや暑いじゃんかあ。外出たら溶けちまうだろう」

「まだ涼しいからいいだろ~!

 あんたお兄ちゃんなんだから妹の面倒みるんだろ~!」

20歳(はたち)のお兄ちゃんが18歳の妹の面倒見る世界なんてあるかよ!

 外めんどくせ~んだよ~!!」

「そらは、お兄ちゃんが100歳になってもなでなでしてあげるよ」

「介護だろそりゃあ!!」

「いーなぁ……そらちゃん……」莉菜がもごもごしている。

「莉菜ちゃんもいっしょだよ」そらはささやいた。

「ほんと?」

「うん……!」

「やった……!」

「なに話してんだオマエら……」十桜はあみあみのままだというのに。

「とにかく、十桜はそらと莉菜ちゃんをプール連れてってやりな!」

「あ~……うるせ~な~……」


 十桜はそらと莉菜の網をかぶったままテーブルの上の猫を抱いた。

「ぐるう」と鳴いたそいつをあぐらのうえに乗せる。

 少しでも室内が似合う雰囲気作りにつとめたのだ。

 

「な~? おうちがいいもんな~?」


 猫の首あたりをもみながら話しかける。

「はぁ~」とあくびがかえってくる。

 

「じゃあ、おうちであそぼ、お兄ちゃん……」


 そらはささやくようにいうと、虫あみを引っこめてどっかにいった。

 すると、莉菜も十桜の拘束を解いた。

 かと思えば、目の前に正座してひざのうえの猫をなでなでした。

 

「あの子どこいったの? まあいいや!

 十桜、プールで莉菜ちゃんに変なことするんじゃないよ!」

「するかよッ!」

 

 猫はビクッとした。


「じゃあね! お母さんいってくる!」

「いってらっしゃいおばさま」


 母はどてどてと出かけていった。

 トドの行進に思えた。

 玄関が閉まると「はぁ~~」と大きな息がもれた。

 肩の力が抜ける。

 地球の重力から解放された気分だ。


「せんぱい……変なことってなんですかね?」


 対ラスボスの強制敗北イベントから逃れたかと思えば、


「せんぱいは……りなに変なことするんですか……?」


 変な後輩が変なことを言ってきたのだった。


「おめえ何いってんだよ」

「……いたたたッせんぱぁい……!」


 十桜はつい、いつものアイアンクローをしてしまっていた。

 彼女がかぶる麦わら帽子がプルプル震える。

 この技もやりなれたもんで、

 前はあったクロー後の罪悪感がいまは薄れている。

 それに、莉菜もアイアンクロー耐性がついていてそんなには痛がってない。

 

「いたた……も~いたいですよ~……!」

 

 そんなには痛がってない。


 だが、クローとセットのように彼女は十桜の両頬をつねってくる。


「えい……!」

「ぐッ……はなせぇ……!」

「いやですぅ……!」

「いてぇ……!」

「おたがいさまですぅ……!」


 などとやり取りしていると、


「ていっ……!」

「うわッ……!?」

 

 妹が虫あみで奇襲をしかけてきた。

 顔に再び網がかぶせられた瞬間、握力がゆるんでしまう。

 そのタイミングでそらが莉菜を引き剥がした。

 そして、二人は二階へとあがっていったのだ。

 

「チィッ……なんなんだあいつらは……!

 宇宙そらに上がって何をする気だ……!?」


 十桜はマスドライバーで星の海へ打ち上げられる気分で

 こっそりと二人のあとを追った。

 そのとき、後輩が階段を登りきる瞬間、


(白いモビル……!?)


 ひらりとしたもののなかを、

 ちらりと目撃したような

 そうじゃないような感じで、

 計算外のエロに遭遇してしまったのだ。


 だが、


(……ガンバル18メートル、ガンバルマークツー18.5メートル、

 ゼータガンバル19.8メートル、サイコガンバル40メートル、

 ダブルゼータガンバル19.86メートル……)


 起動紳士ガンバルシリーズに出てくるモビルボットの身長暗唱で冷静さを保った。

 いま、十桜は好奇心のスパイなのだ。

 ささやかなえっち(幸運)はポケットにしまっておこう。 


 二人はそらの部屋にはいっていき、

 もちろん、十桜は妹の部屋のドアにほっぺたをくっつけたのだ。


(……はあ……ひんやりする……)


 莉菜につねられ、熱をもったほほが気持ちよい。

 ピンクのうさちゃんのドアノブカバーを見つめる。

 ちょっとボケッとしていると、


『……莉菜ちゃんいいな~』

『え~……』


 なぜだろう、女子たちの声が聞こえてくるではないかッ……!!


(……聞こえる! 聞こえるぞッ!!)


 どういうことだ……!?


(俺にも聞こえる……!!)


 これが人類の革新だとでもいうのか……?


 まあ、そういうのは置いといて、

 ちょっと虫とり少女たちの声に耳をかたむけてみよう。


『……どうしたらそんなにアイアンクローしてもらえるの……?』

『え~……ん~……されるまえに、

 おめえ何いってんだよって言われたのね……あたし変なこと言ってて……』

『なんて言ったの……?』

『先輩はプールであたしに変なことするんですか? って聞いたの……』

『ん~……変なことかあ……プールでするの? ……なんだろう……?』

『あたしが思ったのは……』

『あ、プールサイドって滑るよね……? するとお兄ちゃんが……』

『そうそう! あたし、そらちゃんとおんなじこと思った……』

『え~……きゃ~……!』

『きゃ~……』


(なんなんだ……)

(こいつらなんか似てるし、ホント仲いいなあ……)


『お兄ちゃんが滑って転びそうになった娘を……』

『抱きかかえて……大丈夫? って聞いたあと……』

『きゃ~……!』

『きゃ~……!』

『……これ、変なことかなあ……』

『ううん……すてきかも……せんぱいと……』

『お兄ちゃんと……きゃ~……!』

『きゃ~……!』


(なにいってんだアイツら……)


 両ほほをよく冷やした十桜は地球に、ではなく居間に降りた。


 さっき着信したメッセージを見る。


『 三日月!今日遊びに行っていいかあ!?

 別に莉菜ちゃんとそらちゃんが目当てじゃないからな!! いいよな!? 』

 

 パソコンの電源を落とす。

 扇風機を座布団の近くにおく。

 テーブルに浮かぶ水滴をぬぐう。

 その横で寝ている猫をひざにおろす。

 模造紙を広げる。

 鉛筆を握り、ダンジョンマップを描きはじめる。

 風鈴の音がなくなる頃、二階から二人の足音がおりてきた。


「……こういうのすきかなあ……」

「……うん、いがいと……」


 居間にはこない。

 台所方面でなにかしているようだ。

 一階と二階を何往復かしていたような気がする。

 手を動かしているので記憶はあいまいだ。

 体がじわりとあぶられる。

 スネに汗をかく。

 猫とあぐらの脚の間に冷えピタを二枚はさむ。

 雑音がなくなると虫とり少女たちが居間にきた。


 といっても、もう麦わらと一連の装備はつけていなかった。


(なんだ……チャーシュー縛るタコ糸は取ったのか……)


 プチダノンはブルガリアに戻っていた。


 色違いおそろいノースリーブ少女たち。

 身長は10センチ差なのでデコボコ感はある。

 莉菜は一瞬中学生に見えるが、顔は高校生で胸は大学生だ。

 そらは普通のメガネ。


「お兄ちゃん、どこにもいかないんでしょ?」


 メガネボインが正座して十桜のひざの猫をなでる。


「ん~……手詰まりだ……裸で霧吹きする」


 えんぴつを動かしたまま答える。

 それは、居間でパンツ一丁になって水を浴び、風に吹かれるという作戦だった。


「そっか~」

「そうだ~」

 

 そらは猫をなでなで。

 視界の隅っこになにかぷるぷるんと揺れてるものがある。

 でもなんにも気にならない。

 薄青の布地に包まれたふくらみの揺れなんて別になんでもない。

 その証拠に、十桜は模造紙上にねこコーナーを作った。

 オリジナルのダンジョンにプールを描き、そこに猫を入れてやっている。

 猫は『きもちいいにゃ~』っていってる。


「お兄ちゃん裸になるんだ……」

「ん~……んん……」

「……じゃあ、ちょうどいいね莉菜ちゃん……!」

「う、うん……」

「ん~、なにがちょうどいいんだよ? おまえらも裸になるのか?」


 十桜はそういって笑った。

 莉菜とそらが裸になるとは思わないからだ。

 そうだ。軟弱な最近の若者(二個下)が裸になんてなれっこない。

 しかも女子だし。乙女だし。

 清らかな乙女たちが男子おのこの前で裸になんてなるわけがないじゃないか。


 アハハハハハ――ッ


「お兄ちゃん、いっしょにお風呂はいろ」

「あ?」

「オフロだよ」

「あぁ?」


 嘲笑に似た笑いをかましていた男は、

 その、妹の奇怪な提案に二度聞き返したのだった。

 右目の端を通る傷痕がかゆい。

 爪でこする。


「だから、そらと莉菜ちゃんといっしょに、お・ふ・ろ」

「ああ?」


 男は、キズをぽりぽりとかきながら三度聞き返した――

  



読了ありがとうございます。


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次回!入水します!



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