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コボルドさんはご飯が欲しい

作者: るぶる

コボルドさんがそこにいた。4歳くらいの知能しか持たないと言われているコボルドの中には収まりきらない大天才のコボルドさん。

彼はほかのどのコボルドよりも頭が良かった。そして食い意地がほかのどのコボルドよりも張っていた。

彼は人間の街から漂って来る美味しそうな匂いに我慢がならなくなっていた。


故に取るべき行動はただひとつ。


「このコボルドは何がしたいんだ?襲って来る様子も無いし。」

街の門番さんに媚びを売ってご飯を恵んでもらうこの一択である。


コボルドさんは大天才である。そう、4歳程度の知能しか持たないコボルドの中での話なのである。


「目の前で武器捨てて腹出して寝転がるコボルドなんて初めて見たな。」

コボルドさんは必死である。どうしても美味しそうな匂いのする人間の食べ物を食べて見たいのである。

「なんか敵意もないみたいだしな…。いくら魔物と言っても一方的に殺すのも忍びねえよなぁ。」

コボルドさんは必死である。この人間が美味しい匂いのするご飯をくれるまで必死で背中を地面に擦りつけくねくねするのである。

そうコボルドさんは大天才であるから知っていた。人間に飼われている小さなオオカミがこうやってご飯を貰っているのを見たことがあるのである。

「あー、モンスターテイマーでも連れてくるか…。俺じゃあこいつの意図がわからないしな。」

頭をがしがしかきながらコボルドさんを見下ろす門番に瞳をうるませくねくねゴシゴシ背中を地面に擦り付ける。

コボルドさんは欲しいのである。なんでもいいからいい匂いのする人間のご飯を食べて見たいのである。


コボルドさんは門の中に入っていく門番さんを見送ることしか出来ない。門番さんはコボルドさんの意図を理解するためにモンスターテイマーを街に呼びに行っているのだが、コボルドさんはそんな事わからぬ。

自分の力は理解しているコボルドさんは決して街の中に無理やり入ろうとかこっそり潜入しようとか考えないのである。大天才であるから死んだらいい匂いのするご飯どころじゃないのを知っているのである。

故に呆然とするしかないのである。その辺に捨てた愛用の棒切れを見つめながら転がった体勢のまま体の力を抜ききっているのである。


コボルドさんは悲しい気持ちになった。同時に諦めない心を学んだ。体に力は入らないが決意はみなぎっていた。コボルドさんは明日もきっと物乞いにやってくる。


仕方が無いので捨てた棒切れを拾い帰ろうとし始めたコボルドさんの視界にさっきの門番ともう1人別の人が一緒に近づいて来るのが見えた。


コボルドさんは大天才であるからすぐに理解した。彼らはご飯の人であると。それ以外には考えられないと。大天才であるコボルドさんに間違いは無いと言いたいところだが所詮は4歳児程度の知能の中での大天才である。一緒に近づいて来たのはモンスターテイマーである。

コボルドさんはそんな事知ったことじゃないので拾ったばかりの愛用の棒切れを捨てて再びオネダリポーズをかます。


「な?なんかおかしいのがいるだろ。」

「コボルドではあるみたいですけど…。確かに妙な行動をしてますね。別にテイム済みってわけでもなさそうですし。」


コボルドさんは一心不乱、ご飯のためにくねくねゴシゴシ背中を擦り付ける。魔物だから丈夫だとはいえちょっと心配になるくらい背中を擦りつけている。


「ねえ、それご飯欲しいんじゃないの。」


コボルドさんは大天才だけにとどまらずものすごい強運の持ち主なのかもしれぬ。たまたま門番とモンスターテイマーの会話を聞いたその辺を通りすがった何やら大きな剣を背負った危険人物がコボルドさんの気持ちをピタリと言い当てた。


「昔、仲間のテイムモンスターのオオカミが同じようなことしてエサねだってたんだよね。」

「へえ、私オオカミ系テイムしてないから知らなかった。」

「ほらほらコボルドさん干し肉食べるかい?」

大きな剣を背負った危険人物が懐から干し肉を取り出し見せびらかす。コボルドさんのくねくねはよりいっそう激しくなりしっぽもちぎれんばかりにブンブン振り回されている。

コボルドさんは危険人物が地面に干し肉をおき少し離れるとおねだりをやめ干し肉に飛びついた。

コボルドさんが普段食べている生の肉とは違い、塩漬けされているため味素材の味以外のが存在した。

コボルドさんにはあまりにも革命過ぎた。あっという間にもらった干し肉を食べきり喜びのあまりにあっちへこっちへ跳ね回りながら喜びを全身で表現している。

そのまま嬉しさのあまりに愛用の棒切れを忘れたまま森へと跳ね回り帰って行く。

「そんなに美味しかったのかな、干し肉なのに…」

「あいつまた来ないかな、魔物は魔物なんだがあいつは可愛いやつだな。」

「俺も門番の詰所に干し肉準備しといてみるか?」


なんとも幸運で問答無用に殺しにくる人間とは会わずに無事いい匂いのご飯にありつけたコボルドさんであった。

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