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恐ろしい彼女

作者: とまと

ノストラダムスの大予言も忘れ去られた20XX年。人類は本当に滅亡の危機に陥っていた


「5年前に初めて観測されてから、数多の防衛システムをもかいくぐり、着実に地球を目指して落下しているオメガ彗星。いよいよ衝突予告日時が明日にせまってまいりました。各国の宇宙ステーションでは、少しでも多くの人を救おうと今日も脱出用ロケットの発射が進められています」

種子島宇宙センターの中継を眺めながら、俺は静かに自室でくつろいでいた。正確にはくつろげてなどいなかったが、もうどうしようもないと腹はくくっていた。俺が割り当てられた脱出用ロケットの整理番号は一週間後、地球の消滅は明日の12時~14時の間という予測らしい。明日は最愛の彼女と、初デートのスカイツリーから生まれ育った日本を眺めながら死んでいこう

俺は隣でもたれかかっている彼女を見つめる。美人で仕事も出来て家事もできて、何でもできちゃうスーパーガール。当然、職場でも人気で、普通なら俺なんか相手にされないような女性だ。平凡すぎる俺と何で付き合ってくれているのかは、いまだに分からないが、最期の瞬間を共に過ごせるならそれも悪くない

「明日はどこに行きたい?」

いちおう最期の地の希望を聞いてみる。彼女は少し悩んでから、「空がよく見えるところ」と答えた


翌日、俺は予定を変更して渋谷にいた。

空はよく見える。彗星もはっきり見えた。


ーー終わりだな


眺めながらそう思っていると、彼女が呟いた

「終わらせませんよ」

彼女を見ると、最期とは思えない生き生きとした表情で、俺を見ている

「終わらせません。私とあなたは、まだまだ一緒の時を歩む運命なんですから」

「それってどういう……」

俺の質問は観衆の悲鳴にかき消された。いよいよ燃えている彗星が、その熱を感じるほど近づいてきた

人間とは不思議なもので、無駄だと分かりながらも思わず彼女を抱きしめた。少しでも俺がかばえればーー

しかし彼女は俺を払いのけ、彗星を指差した

「失せろ」

つられて俺も指先に見える彗星を振り返る。すると、突然彗星が眩い光を発し、俺は咄嗟に目を閉じた

どれぐらいそうしていたのだろう。しばらくして、彼女が言った「もう大丈夫ですよ」

恐る恐る目を開けると、きれいな青空が映った。先ほどまで燃えていた彗星はどこにもない

「……あれ?彗星は…?」

「ブラックホールまで飛ばしました。もう安全ですよ」

「……君がやったの?」

彼女は俺の質問には答えず、ただニヤリと笑った

「私とあなたの時間は、まだまだこれからだって言ったでしょう?」

ようやく状況に気がついた何人かが、歓声をあげた。次第に歓喜は周囲へ伝播する。誰かがニュースを確認した。人類が滅亡の危機を逃れたのは本当らしい。それを彼女がやったのか?ついに地球まで救ったのか?

理解が追い付かない俺に、彼女がいつものような優しい笑顔で言った

「さ、ご飯でも食べに行きましょう?」

恐ろしい彼女だ

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