大魔王の孫と偽物の姫君 十年後 ダークサイド
なろうラジオ大賞2第三十一弾。これにて打ち止め! ありがとうございました!
第二十九弾『大魔王の孫と偽物の姫君』、第三十弾『大魔王の孫と偽物の姫君 十年後』の続き、所謂『ざまぁパート』です。そちらから読んだ方が楽しめるかと思います。
下衆な策を練った大魔王と王妃の報いをお楽しみください。
……余は何を見ておるのだ。
偽りの結婚式。人間を嘲る為の場。
後継として威厳を持たせる為、男として育てた孫娘。そこに人間の姫を嫁がせ、嘲笑う算段。
なのに何故花嫁衣装を着ている!? 見事なまでに美しいが!
隣の男は……、セリン姫!?
怒りが込み上げる! 余の策を見抜いて偽物を寄越したのか!
可愛い孫娘が嫁に行くなど許さん! 席を立って二人に駆け寄る!
……一体何が起きてるの?
国王陛下のお手つきの女役者。それが男を産んだ時、娘しか産めなかった私は焦った。
幸い流行病で死んだが、陛下の血を引くセリンが残った。だから私は直ぐ引き取って存在を隠し、婚姻に利用した。
セリンは大魔王を騙した罪で、投獄される筈なのに……。
何で男の格好であそこに!? しかも隣にいるのは花嫁衣装のルビデ!?
……つまり、ルビデは女? セリンと結婚? そうしたら、セリンの存在が公になる! 娘が王位を継げない!
「させるもんですか!」
私は席を蹴立てて、二人へと詰め寄る!
「どう言う事だ!」
「貴方達、何を……」
血相を変える大魔王と王妃に、ルビデとセリンは涼しい顔を崩さない。
「お祖父様、偽りの婚姻で人間を貶める企て、これで潰えましたね」
「そ、それが気に入らなかったのか! ならばその策は捨てる。だから結婚など!」
「いいえ。私は十年を共にしたセリンを愛しています。私は彼に嫁ぎます」
「ば、馬鹿な……。余の宝が、ルビデが……」
「……宝と思っていたのなら、こんな策に使わないで欲しかった。大好き『だった』お祖父様」
「ぽへ」
大魔王は泡を吹いて崩れ落ちた。
「王妃様、残念でしたね。僕を始末出来なくて」
「ち、違うの、違うのよ……」
「僕は王位を継ぐ気は無かった。母の死後、育てて貰った恩があったから。でも今は違う。ルビデを守る為、見合う男になる為、王位は頂きます」
「ぱにゃ」
王妃は泡を吹いて卒倒した。
二人が壇上に上がると、参列者はどよめいた。
「諸君! 私は後継となるべく男として育てられた! だが不憫に思った大魔王様は、密かに人間の王子セリンを私の伴侶としてくれた!」
「王子が国を捨てたと思われれば、国民に動揺が走る、そう判断した王妃様は、私を姫としてルビデの側に行かせました」
参列者が感嘆の溜息を漏らす。
「この思いやりこそ絆!」
「その優しさが縁!」
『この結婚が人間と魔族の架け橋となる事を疑う者は居るまい!』
歓声と祝福が会場を包む。温かい空気の中、二人は永遠を誓う口付けを交わした。
読了ありがとうございました!
連作になっている以上、ここだけが音読される可能性は無いに等しいのですが、千文字制限は守ってみました。もっとたっぷり嬲って欲しかったと言う方がいたらごめんなさい。
楽しかったぁこの企画! 沢山の評価や感想を頂き、『小説家になろう』の楽しみ方が分かった気がします!
これからも連載や短編を上げて参りますので、今後ともよろしくお願い致します!