記憶の舞姫2「銀髪異端児の決意」
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時を巻き戻すこと半日。
ラーディア一族の誕生祭前日の夜、ラーディオヌ一族の神殿には限られた高官貴族が集っていた。
夜の民、ラーディオヌ一族の夜は長い。
ラーディア一族と違い、呪術や不可思議な薬草で繁栄を誇ってきたラーディオヌ一族が活気付くのは、日が暮れてからである。眠らない街として有名なタロは、ラーディオヌ一族の首都であり、夜になると賑やかな夜市があちこちで軒を連ねている。
また外食産業も盛んで、不可思議な呪術具や薬草が取引される中、食欲がそそられる屋台も並ぶため、老若男女問わず人が集い、人々が眠りにつくのは丑三つ時から明け方にかけてだ。
王族主体となるラーディア一族とは違い、呪術の腕で競い合い、一族の総帥を選出してきたラーディオヌは実力主義の一族で、統治しているのは、古代ラーディアの血をひくアルス家の血族だった。
漆黒の髪とその瞳を持つラーディオヌが氏族は、一族の大半が同じ色素を持ち、血族内での繋がりは強く、故に他を寄せ付けない雰囲気をかもし出している。
一族の総帥は近年代替わりしたばかりで、僅か17歳の若者だった。
アセス・アルス・ラーディオヌ、ーークリスタルドールと異名を持つこの若き総帥が、明日ラーディア一族の生誕祭である祝いの席に招待される運びとなり、ラーディオヌ一族は今宵祝いの席を設けていた。
しかし若き総帥は、氷のような鉄面皮でその場所に鎮座しているだけだ。
ラーディオヌ一族では二つの貴族が政権争いを続けており、現時ではアルス家が他の貴族を統治するが、力関係は近差で、次の地位に次ぐフィラ家、ハプスブルク家などがあり、アルス家が王族、それに次ぐ貴族である二つの家は公爵家として君臨している。
緊迫した上下関係が続く情勢だが、ラーディア一族との交流を前に、今日の宴には貴族全員が出席していた。
総帥アセスの右隣には、フィラ家の若き主人タケル・フィラ・ラーディオヌが、そして左横にはハプスブルク家の古き重鎮、ハン・ハプスブルク・ラーディオヌが座る。
王族や高位な貴族が出席する宴の席とあって、タロの集会場は更に活気付いている。
錚々たる面子が揃う宴の様子を、なんとか見ようと集まった一族市民や、人の民衆も入り混じり、熱量はお祭り騒ぎだ。明日はラーディアの生誕祭とあって、人々は一晩中祭り気分で過ごし、眠らずに明日を祝うのだ。
だがどれほど周囲がお祭り騒ぎになっても、ラーディオヌ一族の若き総帥アセスは、当然のように笑みひとつ見せなかった。
アセスにとっては明日こそ公的に煩わしい1日になることが予想され、その前夜祭など苦痛以外の何物でもなかった。せめて明日が消えればいい最悪の1日であるのなら、ひと時でも1人の時間を確保したいというのが本音である。
俯いて斜め下を見る瞳は淀み、祭りの喧騒が後頭部の後ろを通り抜けていくようだった。
「総帥アセス、今日はタオでも有名な華陰楼の舞姫が舞うらしいですよ」
華美に装飾が施された椅子に片肘をついて座るアセスに、右側に座る青年が話しかけた。
アセスよりも年長ではあるが、同じように若年で貴族の家督を継いだ実力者のフィラ公爵家のタケルである。アセスと呪術の実力では同等と格付けされるタケルは、年下であるアセスに対し、気安く話しかけてくる。
その左側に座るのはハプスブルク家で、アセスの母方の血族であり、フィラ家のこうした振る舞いを無礼と思う節があって渋面のまま横目にそれを見ている。
これがアセスを取り巻くしがらみだった。
母方の出自で、後ろ立てとなるハプスブルク家がなければ、フィラ家の力を軽視することはできなかった。アルス家は代々続く王族の名家であっても、アセスの年齢差ゆえの未熟さで、いつその地位を取って変わられるかわからない。
術者には階級があった。第7級までを地導士、そしてその上の3級が天導士といい、アセスとタケルは最上級のメニス級地導士だった。
同じ実力を持ち、総帥の座を分けるのは、味方する力によるものが大きい。
名家の位は、天導士を何人所有し、そして高位の地導士を何人使役できるかで格付けされている。アルス家ではアセスが飛び級で昇格して才を見せたが、フィラ家の勢力は依然として劣る事がない。
右隣に座るタケル・フィラ・ラーディオヌは、自分とは対照的な男だった。
表情豊かで生気に満ち、誰からも親しみを持たれるような精悍な顔立ちをしている。一方のアセスは女性のように整った容姿だがにこりともせず、愛想の欠片も持っていない。
総帥の継承権をめぐって比較検討された結果、アルスの血筋からアセスが総帥の地位に着いた。
自分の劣等感を刺激してくるタケルは、アセスが苦手とする人物像そのものだった。
「すごい美人が舞うそうだ」
タケルの方はアセスの思いなど眼中にないようで、次の演目に興奮した様子で、目を輝かせている。街でも評判の名妓が舞うとあって、半身を乗り出して楽しんでいる。
シャンーー!
鈴の音とともに現れたのは薄い紅色の布をかぶった女だった。
片膝を着いて、こちらに向かって頭を下げ、挨拶してきた。
白く華奢な肩が露わな服で、肩から袖にかけての布地がすき通り、指先に絡んでいる。
女が顎を揚げ、顔を上げた。
注目とともに当たりが一瞬静かになり、息を飲むのがわかる。
年の頃はアセスと同じくらいだろうか。
少女というには妖艶で、女というには肉付きが薄い。
艶やかな黒髪に大きな黒の双眸は、ラーディオヌの民らしい容姿だった。けれどラーディオヌ広しといえど、これほど目を惹く舞姫は少ない。絶世の美女と称するに値する凛とした様相に、タケルがアセスの横で「ほう」と吐息まじりに呟くのが聞こえた。
軽やかな足取りで舞姫は舞台の上を跳ねた。
しなやかに伸びた四肢が高く舞い上がり、身に纏う衣装がそれを彩る。衣の描く円弧すら計算しているかのようにな優美な動きは、人の目を捉えて離さない。
束の間だったが、辺りは彼女の舞に耳目を奪われ、足にくくりつけてある鈴の音しか聞こえなかった。
それくらい人々は、彼女の動きのひとつ一つを目で追ってしまう。
演目は三つあるようで、初めの演目は眠りから目覚めた精霊のようなもの、続いて躍動感溢れる炎のようなもの、そして最後は祝福を表すような軽やかな舞だった。
「なんという名だ?」
タケルが側仕えに確認するのを、アセスは傍で聞いていた。
「華陰楼の看板名妓、レヴィーラ殿です」
アセスの耳にもその名が届いた。
演目も終盤に差し掛かり、アセスは玉座から彼女を見下ろしていた。
アセスも同様に彼女の優美な動きには、眉目の端が動いた。
周囲を圧倒的に魅了する技に興味が湧いた。
今まで目にしてきた舞とは違い、彼女は独特の間合いをとって動いている。
明日、アセスはラーディアで剣舞を見せることになっている。そんな機会を得ていたので、いっそう興味を持って彼女の動きを目で追っていた。
その時ふっと、舞姫と目が合ったような気がした。
彼女は自分を見上げながらも舞を続け、ふわりと笑みを浮かべたように見えた。
なるほどこの容貌で見つめられ微笑まれたら、人は虜になるはずだ。
アセスは顎に手をやって、冷静に彼女の舞を観察した。
そして最後の演目が終わる時、彼女はアセスの方に向かって左右の手首を寄せるようにして両手を伸ばした。
それは全身全霊で祝福を表したようにも見え、また一見すると相手に全てを差し出すといった大胆な動きだった。
華陰楼のレヴィーラという名を、アセスは珍しく興味を持って記憶した。
どこか憂いを含んだ黒い瞳は、アセスの印象に残った。
※
生誕祭の衣装を見に纏い、リンフィーナは鏡の前に立っていた。
絹糸で折られた純白の衣装が美しくシンプルだが、それでいて見る角度によって模様が現れる布地は、ラーディア一族の技術を駆使して折られた西陣織だ。胸元に施された青い刺繍は、王族の紋章を表し、リンフィーナは初めて自分が神殿に住むはずの身分だったことを確認した。
どこかで自分は、王族ではないという思いが芽生え、兄という細い糸だけを頼りに生きている存在だと、認識を持ってしまっている。
「綺麗ですよ、姫様」
リンフィーナの側仕えのタキという女官が、歓喜する声色で彼女を褒めた。
朝一番湖に水浴びに行ってきたことで、先ほどはかなり小言をもらうことになったが、ドレスに身を包んで、彼女のいう通りに従うと、タキは満足したようにうなづいた。
彼女は涙さえ浮かべている。
「あんなに幼かった姫様が、こんなに成長なされて……」
自分が預かり知らないところで、彼女は感動しているようだ。それだけ生誕祭というのは貴族にとって重要な儀式ということなのだと、リンフィーナは緊張した。
「サナレス殿下もお喜びになりますね」
タキの横で腕を組んで意見するのは、もう1人の側仕え、ラディである。貴族は側仕えを生まれたときから2人側に従え、彼らを双見とよんでいた。
タキという小柄で華麗な側仕えと違って、ラディという側仕えは男のように背が高く体格がいい。元々がサナレスの率いる君主直属の近衛兵に志願してきた女性だったらしいのだが、リンフィーナの側仕えになった経緯は、耳に蛸ができるほど聞かされた。
兄が妹リンフィーナを心配し、直々に警護役として彼女に頼み込んだという話だ。
女性にしては珍しい、肩上で切りそろえた髪はうなじに行くほど短くなり、浅黒い肌によく似合っていた。筋肉質ではあるが、サナレスのことを語る時だけは、女性らしい一面を見せる可愛らしさだ。
このラディがリンフィーナを腕白に育てているのだが、一方のタキはそれを嘆いた。没落した貴族の娘という出生のタキは、リンフィーナに王族らしい振る舞いを望み、事あるごとに2人は口論していた。
「姫様、タキは嬉しゅうございます。これでいつでも立派な殿方に嫁ぐことができますね」
その言葉に、リンフィーナは眉目を寄せる。
「嫁ぐって誰が?」
言葉尻が尖ったようになることに自覚があったが、リンフィーナは黙ってはいられなかった。
「もちろん、姫様の話ですよ」
にっこりと笑うタキに、リンフィーナは更に唇を尖らせた。
「私は、誰にも嫁いだりしないわ」
とんでもない、というようにリンフィーナは片眉を上げた。
「リンフィーナ様!?」
タキは何を言い出したのかと、慌てて彼女の意思を確かにくる。
リンフィーナは斜め上から視線を下ろし、ここぞとばかりに断言する。
「私は兄様のような素敵な人でないと結婚しない。よってそんな人がいないから、絶対に嫁ぐことはできない」
言い放った言葉の切れ味に、リンフィーナは満足した。
あと万が一の可能性があるとすれば、兄サナレスが文句のつけようのない才女と結婚してしまい、リンフィーナを全く構わなった場合である。それであれば自分は兄の側にいることを諦め、この離宮を出なければならない。
兄が婚儀を挙げるなんて考えたくもないけれど。
リンフィーナは本心でそう思った。
見た目は青年ではあるサナレスは、ジウスの血を引くだけ合って当年とって100歳を超える。この年まで妾1人迎えず、まして正室を拒否し続けてきた兄は、すでにラーディア一族内でも問題児だった。他の兄弟が次々と王家の血族を誕生させているというのに、それだけ見るとおかしな噂が立っても仕方のない状況だった。
けれど当のサナレスは一向に気にする様子はなく、義兄弟が血族を残すのでそれはいい、と縁談を全て断っているのだった。
半分は自分のせいかもしれない、とリンフィーナは思っていた。
妹とはいえ、幼い頃から養育係で、自分という子育てを始めてしまったから、相手を娶ることができないのではないか。その点について、多少の責任を感じている。
けれど子育てに入る前の80年あまりの時間、なぜ兄サナレスが正室を認めなかったのか。
聞いたことはなかった。
自分に似て理想が高いに違いない。
そしてこのような兄妹であるから、生涯結婚することがなかったとしても離れることなく幸せに暮らせるはずだ。
勝手な思いであることはわかっていた。
ただ今になって、兄が結婚することなんて認めたくはないし、自分が兄以外の人間を見染めることがあるなんて、考えもしない。ましてこの銀色の髪である自分が、誰かの元に嫁ぐ可能性は皆無であることを自覚している。
貴族は老いることはない。
だからこそ、誰と一生の時間を過ごすのか、考えることは大切だった。一時の思い込みで間違った選択をする等、合ってはならないと思っている。
兄を崇拝しているラディには悪いけれど。
心の中でリンフィーナは呟く。
自分が長い生涯を共に過ごすと決めた相手は、兄サナレスでしかない。
それが世間知らずの子供の戯言と言われても、兄以上に素晴らしい人を見たことがなかった。疎ましい銀色の髪の容姿ですら、サナレスによって褒められれば、リンフィーナは自分のことを認めることができた。
ドレスを着た自分を客観的に見つめてみる。
白い肌に大きな青い双眸が写っていた。銀色の髪は、見事に光を反射して輝いている。
不吉ではあるかもしれないが、不細工というわけではないのではない、はず。たぶん。
正直、胸は小さい。
淑女と言うには無理がある幼い容姿ではあるが、年々兄サナレスの側に並んでも似合うようになってきているのではないか。
今一番容姿を気にする年齢になっているリンフィーナには、兄と女性として釣り合うかどうかと言う一点に興味が集中している。
兄の腕に鳥の軽さで乗っていたあの幼さから比べれば、これでも随分釣り合うようになったのではないか。
鏡の前で、リンフィーナは問答した。
兄が来たーー!
リンフィーナは小さな馬車の音を聞いて感じ取った。
自然と足が動いて、玄関に向かって駆け出していた。
「ドレスがっ!」
タキが驚天する様子を脇目に、リンフィーナは兄の元に向かうため、階段を駆け下りた。
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水月の宮のロビーで、サナレスがリンフィーナに声をかける前に、彼女は兄の胸に飛び込んでいた。待ちくたびれた飼い主にすり寄る仔犬さながら、リンフィーナは鼻をすり寄せる。
かなり助走をつけて飛び付かれたサナレスは、それでも体幹をブレさせることなく、リンフィーナの全身を抱きとめた。
「兄様! サナレス兄様!」
擦り寄ってくる様子に恥じらいもなく、サナレスはそれを困ったように相手する。
「そんなに待たせはしなかったはずだ」
サナレスは妹の頭を撫でながら言った。
水月の宮に来るたび、リンフィーナの歓迎がサナレスを待ち受ける。おそらくそれは一日経っていなくても同じような歓迎で、サナレスは苦笑する。
これだから、妹を放っておけず、余暇ができれば離れの宮を訪ねてきてしまうのだ。
妹リンフィーナは、貴族の姫君というよりは、どちらかというと、(本人には言えないことだが)野生み帯びた動物に近かった。嬉しさを表現するとき、彼女は躊躇なくサナレスに頬擦りした。首筋に頭を押し付け、左右に動かし、撫でてもらえるように愛想を振った。
仕方がないとは思う。
掌に乗るような赤子だった時から、サナレスがこの離れの宮で育てた。姫として育てる方法等、全くわからないけれど、人の手に養育を任せる事を躊躇って、しばらくは双見もつけなかった。とりあえず元気に育てばいいと思い、今ある環境で伸び伸びと育てたのだ。
それを受け、素直に成長し、彼女の行動は未だ幼さというよりも、少し野性味を残してまっすぐ育っている。
このままではまずいかと考え、タキという、貴族淑女たるやどういうものなのかを教えてもらえるような女性を側仕えとして任命したが、いかんせん自分1人で育てた期間が長く、野放図である。
それでも可愛さは目に余るものがあって、サナレスはリンフィーナの頭を撫でた。
しばらくではあるが、ハグをしたり、頭部を撫でたり、頬擦りを甘んじて受けていると、彼女は落ち着くらしく、おとなしくなった。
ヨシヨシを続けながら、サナレスは妹の肩を抱いて、居間に移動する。
「そろそろ離れて。わたしが贈った衣装を見せてくれないか?」
そう提案すると、リンフィーナはスキンシップに満足したのか、照れた様子で2、3歩後ずさった。
「……どうかな?」
そう言って恥ずかしそうにくるりと回ったリンフィーナの愛しさに、サナレスは目を細めて微笑む。
「想像どおり、とてもーー」
可愛い、とか愛しいとかいう言葉をのみ込んで、サナレスはリンフィーナが一番喜びそうな言葉を一瞬で選んでいた。
「とても綺麗だ」
途端、妹の顔が、花が開いたかのように綻んだ。
本当にとても綺麗になった、と頭を撫でたいぐらいである。
最近の妹の様子は、サナレスにとって少し成長が見られ、向こうから飛び込んでくる時は容赦がないが、子供扱いをすると拗ねてしまうのだ。
反抗期かもしれない、と嘆息する。
「今日は記念すべき日だからな。何か贈り物をしたいんだが、何がいい?」
そう提案すると、リンフィーナは計りかねた様子で「このドレスだけで十分」と首を傾げた。
「15歳になった祝いだ。ドレスもいいものだが、何か装飾品を見立てたい」
サナレスは言った。
ラーディア一族の首都には、貴族が顧客となる店舗が立ち並んでいるため、リンフィーナにそこで彼女が気に入ったものを贈りたかった。
「装飾品??」
それがどういうものなのか解らないリンフィーナは、未知の物に対する好奇心でいっぱいだ。
「それってもしかすると、剣とか、盾とか??」
無知ゆえの質問にサナレスは首を竦めた。
確かに周りにいる大人が、装飾品を身に纏っていることが少ない故の無知さだった。
「剣なら、とても欲しい ! 」
リンフィーナの率直な願いにサナレスは複雑な心境になったようだ。「そう言った類の贈り物は次回にしよう」と説明する。
「今回は、身を守る物ではなく、いつも気に入って身につけていられるようなものを贈りたい。私はいつも側にはいられないから、自分の代わりにお前の身を守ってくれるような宝石がいいと思っているんだが、嫌か?」
「嫌じゃない! でも兄様の代わりになるものなんてあるかしら?」
ないと思うのだけれど、と断言する妹は幼すぎて無欲で、尚のこと愛しかった。
「とりあえず、ダイナグラムを散策する時間を見越して迎えに来たんだ。お気に入りが見つかるまで探してみよう」
そう提案すると、リンフィーナはサナレスの左腕に自分の右腕をからめた。
物怖じした様子から緊張感が伝わってくるが、しがみついてくる態度をじっくりと観察していると、決して嫌がっているようには見えなかった。
「いくつか、いいと思う店に商品を届けさせてある。気に入ったものがあるといいな」
リンフィーナはサナレスを見上げて、こくりと頷いた。
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました」
記憶の舞姫②;2020年8月9日。
一章の読了時間が10分から25分程度で治るように連載しています。