世間を知ろうとしなければ世間知らずかどうかなんてわからないよね。
~前回のあらすじ~
魔界に転移しやすいように森の奥にあるパワースポットに向かった三匹と一人。暗いと視界が悪いから、ルイスはムックに乗っているよ。サーベルタイガーに乗って恐がりもしない人間なんて初めてだよ☆そして転移したら、更に驚きの事実だよ☆☆
―――ルイスが転移魔法酔いしました―――
「…気持ち悪い…」
「…まだ吐きそうかい?」
初めての転移魔法に酔ってしまったらしく、10分程ルイスは吐き続けている。そしてモッソはルイスの背中を擦っていた。
「はい、水。飲んだら少しはすっきりするよ。」
「人間でも転移魔法くらい使うんだろ?その度に吐いてんのかよ?弱っちぃな~」
「…まず魔法レベルがドベだから、転移魔法なんか使えない…つか、使える人がまず身近にいない…」
少しずつ落ち着いてきたらしく、ルイスはボソボソと答える。
「ドベってどれくらい?」
「炎系はファイアボール【※2階建ての建物が5分で全焼するくらいの火力】、氷系はアイスロック【※25Mプールが一瞬で凍りつくくらいの冷気】までしか使えない…」【※どちらも中級難易度の魔法】
「……それのどこがドベなのかな…?」
ダーキが震える声で恐る恐る尋ねる。
「?ドベじゃないの?うちの村から君らに会った村の辺りまでだと、それくらいしか使えない奴はドベ扱いだけど?使えない人はいないくらいの魔法だから。」【※繰り返すが中級難易度の魔法】
「「「………」」」(((下手に暴れなくて良かった)))
「…ルイスは村から外に出たこと無いの?」
「私の家は元から隣の村だから、毎日外に出てるよ。」
「違う!そうじゃない!」
「王都とか、都心に出たことは無いの?」
「何しに都心に行く必要が?」
「「「………」」」(((世間知らず、恐っ!!)))
吐き気が落ち着いてからも、「暗いし危ないから」とムックから下りさせてもらえず、ルイスはそのまま魔王城に到着した。
「ルイス、魔王城の門の傍にはとても獰猛な門番がいるんだ。」
「獰猛?」
「そう。だから衛兵と話がつくまで、此処から動かないでくれるかい。」
「せっかく連れて来たのに、間違って喰われたんじゃあ苦労が水の泡だしな。」
「此処ならギリギリ爪も届かないしね。」
「門番て、動物?」
「ケルベロスだよ。聞いたことくらいあるだろう?」
「頭が三つのワンちゃんか。」
「ワン……まあ、その魔物だから、じっとしててね。」
「わかった。」
三匹は途中何度もルイスを振り返り確認しながら門を通った。
「――というわけで、魔王様を治療出来そうな人間を連れて来ました。」
「その人間は本当に大丈夫なのか?」
「僕達を見ても、驚くどころか表情一つ変えませんし、攻撃しようとすることもありませんから…あとは治療が出来るかどうかですが…」
「ふん…まあ、仕方がない。入れろ。」
「わかりました。」
許可を得た三匹は再び門に戻り、固まった。
「~~~ルっ、ルイス~~!?」
「ん?お帰り。話ついた?」
「『話ついた?』じゃないだろーーー!!」
「何やってんのーーー!?」
三匹が見たもの。せれは、ケルベロスの頭やらお腹やらをモフモフと撫で回すルイスと、お腹を見せて尻尾を全力で振りながらウットリとした表情を見せてされるがままになったケルベロスだった。
多分次こそは魔王が出て来るでしょう。
ちなみに、話に出て来た魔法はどちらも余裕で三匹をお星様にできちゃう魔法です。下手に暴れてたら…気づかず命拾いをしていた三匹なのでした。