9月2日 3
なんか、なろうとアクセスしにくかった気がしました。
9月2日 放課後
やっと今日の授業が終わった。
正直隣が気になって、全然授業が身に入らなかったな。
今日は、何としてでもスマホを買い替えに行かなきゃいけない。
とりあえず、ブンコの事も話したいし、ダイキに声かけるか。急ぎ足でダイキの席に近づいた。
「ダイキ、スマホ買いに行くの付き合ってくれよ」
「いやあ、今日は部活有るから無理だわ」
すげなく断られた。
「アイスおごるから着いて来てくれよ~」
「無理無理」
あっさり断ってくれるじゃないの。
「ブンコの感想ヨロ~って言ってたじゃねえか」
「RINEで送って来いよ」
やだ、冷たい。
「お前にはやはりガリガリ様で十分なようだな」
「何言ってんだ? そういや、スマホはちょっと型落ちが安いぞ。 後は……最近アンドロイドの方がいい。 らしいぞ?」
お前が何言ってんだ?
だいたいダイキのスマホ、アイヒョンじゃねえか?
「まあ、ブンコでも誘えばいんじゃね?」
適当にのたまって去って行きやがった。今のブンコにそんな事、簡単に出来たら苦労しねえわ。
……だが、だがしかし、ココは引いたらダメだよなあ。引かずに媚びずに顧みないよなあ。
ブンコの席に目をやると、ちょうどカバンを持って立ちあがろうとしていた。
1学期からブンコが通学に使っている、スポーツブランドのバックパックだ。おお、カバンは前と一緒だな。変わって無くて安心するぜ。
まあ、カバン以外ほぼ見た目が一新されてるけどな。
よし、行くぞ。
「あ、ブンコさん。 今帰りっすか? 奇遇ですね?」
揉み手をしながら話しかけた。全力愛想笑い付きだ。
「何よ? その話し方?」
「いやあ、スマホを買い替えに行くんですがね、お付き合いいただけないかなあ、なんて」
「ちょっと用事が有るから無理よ」
「あ、無理ならいいんすよ。 すんません」
すぐ諦めて、一人で行こう。こっから食い下がる力は俺には無い。
「待ちなさいよ。 スマホ、何にするの?」
「そもそもスマホが無いから調べて無い。 けど安いヤツ。 あんまり金無いし」
「……日本製の春モデルが安いらしいわよ。 世界のPONYのこの春のモデルよ。 クチコミもいいらしいわ」
「お、おう、サンキュー」
そう言って、ブンコは教室から出て行ってしまった。
なんだ?調べてくれたのか?やっぱり優しいんだよな。見た目がちょっと……いや、すごく変わったけど、中身は急に変わらねえよな。
よし、スマホ買い替えに行くか。
帰りの河川敷の土手を自転車で走る。
この河川敷を10分程行くと駅前だ。そんなに大きい町じゃないが、駅前に出ればKINOKOショップが有る。俺の家はちょっと電波が悪いので、シロイヌやBUより少し高いがしょうがない。
スマホが復活したら、とりあえず皆にMINEしなきゃなあ。
しばらく走ると、見慣れた背丈で、見慣れたカバンを背負った、見慣れ無い髪色をした女生徒が目に入った。ブンコ?……と、隣を歩いてるのは……誰だ?
メチャクチャ気になる。気になるけど……こんなの、声かけれねえよ。
なんて声かければいいのか、分からんわ。ブンコじゃねえかも知れないし。
横目に見ながら、黙って追い抜く。
ブンコさんですね。
チラリとブンコと目が合った気がしたが、特に何を言うわけでもなかった。
隣を歩いてたあいつは、確かバスケ部の2年でエースの人だったと思う。人気があるイケメンさんだ。
あいつが、ブンコの?いやいや、まだ分からんね。そんな、急にね。まさか、ね。
モヤモヤしたままスマホ屋に到着したが、待ち時間は1時間。
短いのか長いのかわからんが、とりあえずぶらついて時間をつぶす。
あと5分程で時間だな。近場の本屋でパラパラと立ち読みに勤しんでいた俺が、ショップに戻ろうと、書店を出た時の事だった。
……ブンコだ。またブンコを発見した。今日は御縁が有りますね。
2度目ともなれば、後ろ姿ですぐ分かりますよ。少し離れた交差点で、また別の男が隣にいらっしゃるね。
大学生くらいの男と話をしている。なんだかチャラそうな男だな。距離近くね?
アレが彼氏か?
またもモヤモヤしたまま、スマホ買い替え終了。
店員さんは最新夏モデルのアイヒョンを激押しだった。しかしせっかくダイキにもブンコにもおすすめされたので、型落ちPONYの黒のスマホを選んだ。確かに少し安かった。
「……ブンコ」
店を出るとブンコが歩道の柵に腰掛けて、俯いてスマホをいじっていた。
「あ、ジュンタだ。グーゼンだね」
今は男連れじゃないんだな。なんて口に出せるはずもなく。
「スマホ換えれた? 何にしたの?」
「これこれ、やっぱ古いとちょっと安いのな」
まだケースも付けていない、買ったばかりのスマホを見せると。
「ふーん……アタシのと同じヤツだね。 グーゼン。 もう行くね」
ブンコは自分のスマホを軽く振ってみせると、さっと立ちあがってどこかに行こうとする。
一緒のスマホはなんか嬉しいが、もう帰るのか?もうちょっと話がしたい。
「帰るんなら、一緒に帰ろうぜ?」
「この後、アカリと会うんだ」
すげなく振られ、ひとり自転車で帰宅した。
「みんなにRINEしなきゃな」
友人一同に、スマホを買い替えた事を報告した。
ダイキからは、もうゲロるなよ。アカリからは、おめでとうのスタンプが送られた。
クラスメート達からもボチボチ返信が来たが……ブンコ、既読スルー。
この後メチャクチャ不貞寝した。
1時に起きてチェックした。
既読じゃなかった。