お前誰
Get ready for
慎重に事を進めなければならない。
面倒な連中を敵に回してしまったことを後悔する。
やっとの思いで手に入れたこのUSBドライブ、一体どうして奴らにくれてやるものか。
忌々しい唸りと共に、2、3のヘッドライトがまた近づいてくる。直管仕様のマグナ50に乗った男達。
来たな、死のコンチェルト。
「そこを動くな、お前!両手を上げてこちらに手のひらを見せろ!」
バリバリうるさい原付バイクに乗った男の1人がこちらに呼びかけてくる。
左手で何かをこちらにかざしているように見えるが、ライトが眩しくて何を持っているのかよくわからない。
男の顔もよく見えないが、レザージャケット風の上着を羽織っているようだ。
「もう一度言うぞ。両手を上げるんだよ!」
どうやら分が悪い。おとなしく従っておくことにする。
ゆっくりと両手を頭上までかかげ、そして手のひらを開いて見せた。
「行け。チェックしろ」
レザージャケットの男に指示を受けた部下たちがバイクを降り、こちらに近づいてくる。
若い男が2人。手には拳銃。顔はフルフェイスヘルメットで見えない。
1人が俺の体をまさぐり始める。上から順に、胴体、腰回り、パンツのポケット。
もう1人の男は数メートル先からずっとこちらに銃口を向けている。
「あったぞ」
ピンク色のUSBドライブが俺の右ポケットから引っ張り出された。
「持ってこい!」
ジャケットの男に呼ばれた部下二人は駆け戻り、USBドライブを彼に見せる。
「違う。これじゃない!舐めた真似してくれてんじゃねーぞ、てめえ!」
俺に言っているらしい。部下二人が再び近寄ってくる。
片手で荒っぽく構えた拳銃をこちらに向けつつ。
「今すぐ出せ!さもないと」
ぱらららら、と連続で花火が弾けるような音がした。フルフェイスヘルメットの男二人が、フェイスシールドの破片を周囲に散らしながら崩れ落ちる。まるで電源が切れたように。
「特別捜査チーム6354DOだ!全員動くな!」
どこからともなく、周囲の暗がりからおじいちゃんが5人ほど現れた。
全員手に拳銃を持っていて、長いマガジンがグリップ下方から飛び出ている。
「マルコかよ。クソが!」
ジャケットの男が慌ててスロットルをふかし転回する。
おじいちゃん達は全員ものすごい連射速度の拳銃を一斉に放ったが、男の背中は止まること無く遠ざかり、やがて角を右に曲がって姿を消した。ちりんちりん、と大量の薬莢が転がる音だけが残る。
「USBはあるか?」
おじいちゃんの一人が話しかけてくる。
俺はパンツの左側のポケットから白色のUSBドライブを取り出して見せる。
「約束通りじゃな。それをくれ」
USBを受け取ったおじいちゃんはそれを点検するように見回し、何度か頷いた。
「ようやった。これやわ。協力感謝する、えーと…」
おじいちゃんが額をぽりぽりとかきながら顔をしかめ、言葉を詰まらせる。
詰まらせるのは餅だけにしてほしいですよね。
俺は軽くため息をついてから声を出した。
「ブチュブチュまさしだ。ブチ殺すぜ」
お前これヤバイでこれ マルチカムやんけ