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 授業はたんたんと進み、学習委員の義務である荷物運びもそれなりにこなし、給食も終り、あっという間に放課後だった。五時間目で終わる水曜日は、すぐに家に帰ることができるけれども、反面、店の手伝いもしなくてはならないのが難点だ。部活をやっとけばよかったと思うのはこういう時だ。それほどやりたいのがなかったし、それよりクラスの連中と遊んだりする方がいいと思ったから、何もしていなかった。

 もっとも最近は、おとひっちゃんにつきあって生徒会室に入り浸ることが増えたけれども。今日は行こうかどうしようか迷った。

 昨日は総田と、内密の電話をしてしまったしな。

 もしおとひっちゃんと総田のふたりが顔を合わせているところに立ち会って、俺か総田かどちらかが口を滑らせたら大変なことになるしな。

 君子は危うきに近寄らず。今日はおとなしく帰ろうっと。

 

 生徒玄関で靴を履き替えていると、三組女子側のすのこ台にさっきたんがやってきた。右手に週番用の腕章を持っている。帰りもちゃんと職員室廊下で整列して、挨拶するのが常だった。本当に大変だと思う。

「週番大変だよね、さっきたん」

 けさに続いて、今日はやたらとしゃべっている。

 三組の連中がたまたまいなかったので、変にかんぐられることもない。僕はさっきたんがにっこり頷いて、先の丸い黒い靴に履きかえるのを待っていた。なんとなく、一緒に帰りたい雰囲気だった。もっとも、他の女子だったとしても僕は同じようにしていただろう。たまたまさっきたんとはかえる方向が一緒だったし、英語の授業中に練った例の案をなんとなく、試してみたくなったというのもある。

「そういえば、帰り際に、関崎くんを見たわ」

「あいつ疲れ果ててただろ」

 玄関をふたり一緒に出て、砂利道をゆっくりと歩いた。遠くのグラウンドでは野球部の連中がウォーミングアップ運動を声出しながら行っていた。そろそろ秋大会が近いからだろう。陸上部の連中もまた、グラウンドをゆっくりと走っていた。長袖シャツはいいけれど、学生服を羽織るのはなんだか暑苦しい。僕も襟を開けてのどを楽にした。学生帽はとっくに、かばんの中にほおりこんである。

 でもさっきたんと歩く時は、少しでも背を高く見せたい。

 かぶってみた方がいいかもな。

 かろうじてにぎりひとつぶんの差しかない僕の背丈が情けない。

 保健体育で習った通り、高校に入る頃には背が伸びるんだろうか。

 僕はかばんを開けて、学生帽をかぶりなおした。

 ちょっと重たくてうっとおしいけれど、とりあえずはさっきたんよりにぎりこぶしみっつぶんくらい、背が高くなった。

 さっきたんは不思議そうに僕を見ていた。続けた。

「あれだけがんばっているのに、認められなかったらいやね。でも、佐川くんが言っているほど、辛くはなさそうだったわ」

「そうかなあ。たぶんあいつ隠しているんだよ」

「ううん、廊下で関崎くんが、私に聞いてきたの。生活委員会の中で、学校祭座談会の話は盛り上がっているかどうかって。その時は心配そうだったんだけど」

 さっきたんは口篭もりながら、しばらくうつむいたまま校門まで歩きつづけた。気になる。あの、女子に話し掛けるのが極稀なおとひっちゃんが、なぜさっきたんに、そして何を話し掛けたのか、想像がつかない。

「私、今朝、佐川くんから聞いていたから」

「まさかあのこと話してなんかないよな!」

 僕としたことが、あせって声が荒くなってしまった。びくっとした風にさっきたんは一歩立ち止まった。

「ううん、そんなこと、私しない。佐川くん、内緒のことを教えてくれたってこと、私だって、わかるから」

 さっきたんの声はきれいな細い糸のようだ。次に続く言葉は生まれて初めて聞く、凛とした響きのものだった。他の女子のように語尾を延ばさず、あいまいな言い方でもない。僕の目をしっかりと見つめたままだった。

 こんなさっきたんを僕はいまだかつて見たことがない。

 びくっとさせられたのはこっちの方だった。

「関崎くんに話したの。私は、関崎くんが一生懸命努力しているところを、五、六年の頃から知っているから大丈夫だって。他の男子だって、みんな関崎くんのいいところを知っているし、応援しているって。女子も」

 ここで口ごもった。そりゃそうだ。僕も女子がおとひっちゃんをどう思っているかなんて想像つかなかった。

「話すのは苦手だと思ってるかもしれないけれど、味方になりたいって思っている女子はたくさんいるわって」

 絶句。しばらく、言葉が見つからない。

 僕はさっきたんの言葉を頭に繰り返しながら、必死に質問を捜した。

 なんとか見つかった。

「つまり、さっきたん、おとひっちゃんに、味方だって言ってくれたんか」

 俺が頼むまえにか? 

 英語の授業中考えた計画を、さっきたん、一人で勝手にやってくれたんか?

 でもなぜだよ? 

 どうしてそこまで勝手にやっちゃうんだよ。

「佐川くんが必死に、そうしてくれる人、探しているって気がしたの。私、余計なこと、してしまったかな」

 

 いままでまさかそういうことはないだろうと、考えないようにしていたことだったのに、僕の頭の中ではするすると答えが出てきてしまった。

 ちっとも照れないで、いつも通りのやわらかい笑顔で側にいるさっきたん。自分でどういうことを言っているのか、わかっているんだろうか。たぶん、わかっていないに決まっている。でなかったら、こんなこと冷静に受け止められるわけがなかった。

「そんなことないよ。おとひっちゃん、よろこんでくれただろ?」 

 ごまかし笑いをしながら僕は心でつぶやいた。

 まさか、やっぱり。さっきたんは、俺が。

 まずいよ、おとひっちゃんに気付かれたら、えらいことになるよ。

 予定外だよ、そんなこと。


 僕がもっと鈍感な奴だったらよかったのかもしれない。話している感じだと、さっきたん本人も自分が何を言ったのかよく理解していないみたいだった。勝手に僕が告白されたもんだと勘違いしているだけなのかもしれない。

 でも、このことはかなり前からのことだった。

 あくまでも僕の直感のみ、でだけど。

 途中の横断歩道前で手を振ってわかれた後、僕はしばらく空を見上げて数回口をぱくぱくさせた。何かしゃべりたかった。薄くだいだいがかった、さめた空に向かって、どうしてか聞いてみたくてならなかった。

 いつもだったら、帰り道一緒に歩くおとひっちゃんに、僕の感じたことや、頭をひねったことなんかをずっとしゃべりつづけるのだろう。幼稚園の頃からそうしてきた。おとひっちゃんもないがしろにしないで、

「そうだよな、うん、わかる。雅弘の言うこともわかるけどさ」

と、自分の考えを懸命に語ってくれた。

 そうだねそうだね、おとひっちゃんの言うとおりだよね。

 いつからそういえなくなってしまったんだろう。

 おとひっちゃんはずっとひたむきなままだ。

 ずっと僕を親友だと信じて、本音をぶつけ、受け止めてくれる。

 でも、この僕はどうなんだろう?

 総田におとひっちゃんの秘密をひとつ、暴露して裏工作活動をやらかそうかと、思ったりしている。さらに、おとひっちゃんには内緒で、『関崎乙彦は水野五月のことを思っている』ことを他の連中にばらしている。その気持ちを利用して、さっきたんにひとつ、頼みごとをしようとまで思っていた。

 結局、僕が意図しないうちに、さっきたんは勝手にやってほしいことをやってくれた。きわめつけだ。全く。

 おとひっちゃんはさっきたんが僕の方に気持ち傾けているらしい、なんてこと、想像すらしていないにちがいない。いや、絶対そうだ。同じ小学校で、同じ二年三組だからよく話をするだけだ、と思っているだろう。

 おとひっちゃんは知らない。さっきたんが自分から話しかける男子っていうのはほんのわずかだってことを。そのうちの一人が僕だった。一緒に廊下を歩いて平気そうな顔をするのも、僕だけだった。

 一対一でしゃべっていて、最も楽しそうな表情を見せる男子も、僕だけだったようだ。僕は一度も、他の連中とさっきたんのツーショットを見たことがなかった。


 総田と約束していた通り、夜八時きっかりに僕は電話をかけた。

 別のクラスだったのにどうして電話番号を知っているのは簡単だ。生徒会室の壁にちゃんと、連絡網が貼り付けてられていた。こっそり、全員分を手帳にメモしておくのは簡単だ。おとひっちゃんには気付かれないように。

 よくあることだ。

 僕はしょっちゅう、いろんな人の電話番号を集めて、よく友達に聞かれた時教えたりしている。

 「佐川はたぶん、水鳥中学で一番情報網が広いんじゃねえか」とは、よく言われるのも、このせいだ。

 店では相変わらずレジ閉めの声が聞こえる。さっさと下りていって電話を掛けた。まだ母さんはいない。

 手短に終わらせなくちゃ、何を言われるかわからない。

 ワンコールした後、すぐに奴の声が出た。

「総田ですが」

「俺だよ、佐川です」

 待ち受けていたんだろう。硬い声はすぐにやわらいだ。

「時間、きっちりしてるよな、佐川」

「もちろんだよ。俺の方から昨日切ったんだから。でも今、親がいるからあまり長く話できない、だから、手短」

 僕はポケットに潜ませた紙きれを取り出した。

 英単語を暗記しているふりをして、さっきまでずっと、メモで整理していた。

「おい、いきなりなんだよ」

「一度しか言わないからさ」

 早口で、総田の言葉を遮った。

「今日、生徒会室でおとひっちゃんと会ったんだろ。それで反応はどうだった? 少し、俺なりにできること、しておいたけれど」

 どういうことをしたか、言ったかなんて、決して言わない。いう気もなかった。

「俺の方が聞きたいことだ。佐川、いったい関崎に何を言ったんだ? 昨日の今日だろ? 一体、何をたくらんだ?」

「やっぱり、変な雰囲気だったんだね」

「あれが変でないなんて、思うかよ」

 総田の芝居がかった語り口調に、僕は笑いをこらえながら聞いていた。

 生で様子を見てみたかった。


「関崎ときたら、生徒会室に入ってくるなり、すっかり機嫌よさそうにしてさ、俺にフォークダンスの流れについて、たずねてくるんだぜ。あの関崎がだぞ! 今、俺も火気関係の問題で先生と最後の詰めをやっているんだけど、ちょっと、書類関係とか、時間の調整とかでいろいろうまくいかなかったりしているんだ。先生がいろいろ細かいからさ。ところが、関崎ときたら何したと思う? 俺が書いている書類を勝手に見てさ、さらさらって一筆書いた後、楽しそうに鼻歌歌ってコピーしにいっちまった。あのあとは、俺がその紙を持って、先生に出しにいって一件落着になったけどさ」

「おとひっちゃん、何を書いたんかなあ」

 鼻歌歌いつつ総田に何か、手伝いをしたらしい。

「ちょうど問題になっていたのが、生徒会側の火に関する扱いのことだったんだ。せっかくだから、ファイヤーストームやりたいだろ? でも中学生には危険だからって声が多くて、結構危なかったんだ。だからどうやって話を通すかで、かなりもめててさ。そうだな、俺としては、先生とコネのある三年の先輩に頼んで、いろいろ袖の下計画をたくらんでいたりしたんだけどな」

 袖の下。賄賂。その辺はさすが総田教授の発想だった。

 でもなあ、何もわざと話を裏の方にひっぱっていかなくたってやりかたあるだろうに。

 総田は続けた。

「関崎が書き残した案がさ、『生徒会でホースを用意し、さらにペットボトル、およびバケツを全クラス分あつめて水を用意し、ファイヤーストームの間中、水を絶やさないようにします。また、火の側には生徒会役員が全員待機します。当日は水鳥東消防局の方に直接お願いして、フォークダンス前に一言、挨拶をお願いするというのはどうでしょうか』俺からすると、何考えているんだ、くそまじめに、と思うよ。でも、変なもんだな。先生たち、その案を見て、全員あっさりOKだよ。『まあ、そこまでしなくたっていいかもなあ』は、は、はっは、って感じ」

 さすが、おとひっちゃん、先生受けする案は見事だよ。

 おとひっちゃんでなければ、思いつかないよな。

「おとひっちゃんなら考えそうなことだよね」

 少しだけ気持ちが楽になった。鼻歌を歌いながら生徒会室を去ったおとひっちゃんの姿を想像するとめまいがしそうだった。そんな軽いのりのおとひっちゃんを見たことがない。

 おそるべし、水野五月さま。

 

「なあ、佐川。お前、いったい何をたくらんだんだ? 俺がお前に話を打ち明けたのは昨日だよなあ」

 総田は少しずつ、さぐりをいれるようにゆっくりと間を空けて質問を打ち出してきた。

「そうだよ、昨日聞いたから、俺のできることを少しだけやってみただけだよ。もしうまく行っていないようだったら、総田にも協力してもらうつもりでいたけど、もう大丈夫だよね」

 さっきたんのことを言うべきかどうか、ちょっとだけ僕は迷っていた。でも、おとひっちゃんをここまで、舞い上がらせてしまい総田にもいい影響を与えていたところをみると、もうこれ以上はいいだろうと思った。付け加えて早く電話を切ろう、決めた。

「でさ、総田。しばらくおとひっちゃんの様子を見ていてほしいんだ。昨日総田の計画していた案は、しばらく投げておいたほうがいいなって思う。確かにおとひっちゃんは、一度ショックを受けるとお前の言うこと聞いてくれるかもしれないけど、そういうのが必ずしも、生徒会にとっていいとは思えないんだ。副会長という形でもいいから、総田は生徒会に残りたいんだろ」

 弱点と思われるところを突いて見た。

「言うな、佐川も」

「もっと川上さんと付き合いたいんだろ」

「だからなんでそういう話題になるんだって! 余計だぞ。あの女とどう関係があるんだよ!」

 やっぱり総田は、川上さんのことになるとやたら向きになる。おとひっちゃんは、さっきたんだし、総田は川上さんだし、なんだか副会長ふたりとも、同じことを考えているような気がしてならなかった。

 似たもの同士だよ。

「どっちにしろ、僕が言いたいのは、お互い来期は仲良くやっていく方が、うまくいくんじゃないかなあ。仮にだよ。おとひっちゃんが生徒会長を引き受けてくれたとしたら、総田は副会長、立場としては逆転しちゃうよね」

「心ならずも」

「もちろん総田はそんなこと、絶対しないと思うけれど、おとひっちゃんは舞い上がると思うんだ。今みたいにさ。総田がうまくいきそうにない、って思ったところをすぐに手助けしてくれると思うんだ。学年トップの頭脳は伊達じゃないから」

「どうせ悪かったな。俺は万年二番だ」

 ひがんでるひがんでる。僕は笑いたくなるのをのど奥に押し付けて続けた。

「どうせ利用するんだったら、総田、とことん利用すればいいじゃないか。ね、総田って俺から見たら、魔術師だって思う時がある。昨日、おとひっちゃんの後輩をからかってパニックさせたりさ、あれはうまいよ。俺、あれはおとひっちゃんに出来ないと思うもん」

 ほめてほめてほめつくそう。黙り込んだ総田の様子を、受話器の穴から感じ取ろうとして僕は耳をぎゅっと当てた。

「お世辞言っていると思ってるかなあ。そんなことないよ。俺、素直に思ったことを言っているだけだよ。それだったら、総田は得意技に磨きをかけておいて、先生受けする問題についてはおとひっちゃんに任せてしまえばそれでいいんじゃないかなあ。俺だったら、たぶん、そうするよ。だって、そっちの方が楽だもん」

 僕の言葉に嘘はない。誉め言葉をうまく引っ張り出しているのもまた確か。僕はいつもそうだった。誉め芸がうまいというのだろうか。けなすよりも、むしろ相手のいいところをみつけて、しゃべり尽くす。そっちの方が気持ちいいし、相手も機嫌よくなっていい。おとひっちゃんと付き合ううちにマスターしたことでもあった。

「佐川。どうしてそこまで、わかるんだ」

 搾り出すように、総田の声が耳に響いた。

 がさがさと、声に疲れがにじんでいる。

「わかんない。ただ、なんとなく、俺の中でそう感じたから」

「もうひとつ。どうして、俺に協力しようって思うんだ。『関崎の親友』だっていうのに」

 しつこいくらい繰り返された『関崎の親友』と言う言葉。。

「俺から見たら、水鳥中学生徒会が一番いい形って、おとひっちゃんが生徒会長、総田が副会長で仕事を分担してやっていく方法だと思うんだよね。俺が総田の親友だったとしても、たぶん同じことを言ってたよ」

 僕は用意しておいたせりふを読み終えた。


 総田はまだしゃべり足りないようだったが、両親が夜間金庫から帰ってきたのでさっさと切った。

 なにはともあれ、総田におとひっちゃんの秘密をばらさないでよかったとつくづく思った。やっぱり、それだけは最後の一線として守りたい。でも、これ以上話題が広がっていったとしたらたぶん、僕は口走ってしまっただろう。


 別に、俺が言わなくたって、総田もそろそろ気付くよな。

 自分に言い聞かせた。

 きっと総田は、おとひっちゃんが舞い上がっている理由をうすうす感じているはずだ。たまたまさっきたんの姿を目撃しなかったから、気付かないだけであって、これから先さっきたんがさらに行動をエスカレートしていったら、もう隠しようはない。それは僕が、さっきたんに対してどう接していくか、にもかかっている。

 さっきたんが僕へ、『同じ小学校出身の佐川くん』という感情を大切に抱えてくれているのは、伝わってくる。本音をいうと、嬉しい。さっきたんは性格もいいし、親切だし、女子の友達としてはたまらなくいい人だと思う。

 好きとか嫌いとか恋だとか愛だとか、と問われると困る。

 全く、そんな感情なんてないのだから。

 もちろん僕だって男子女子の間に、いろいろ複雑怪奇なものがあるのは知っているつもりだ。おとひっちゃんを見ていればよくわかる。でも、僕には全く、そういう気持ちが湧いてこない。小学校時代の単なる仲良し同士として、一緒におしゃべりできるだけで楽しい。それだけだ。

 まあ、僕の方としてはそうとしか、言いようがない。

 もし告白されたりしたら? やっぱりそう言うしかないだろう。

 付き合おうなんて思わないから、と。


 問題は全く別のところにある。

 『佐川雅弘が関崎乙彦の親友』であるということを、知らない奴はほとんどいないだろう。僕もおとひっちゃんもよく認めていることだ。

 もちろんさっきたんはよく知っているはずだ。

 もし、おとひっちゃんが、この事実『水野五月の片思いしている相手は佐川雅弘である』ことを知ったら、どういう反応を示すだろう?

 おとひっちゃんと付き合いの長い僕には大体想像がつく。

 荒れるなんてもんじゃすまない。

 学年トップから滑り落ちるくらいの衝撃だろう。

 さっきたんへの思いは、僕の目が腐っていない限り、四年間ずっと続いているはずだ。総田の言ったとおり、さっきたんの一言ですっかり舞い上がり、天敵に対してうまくいくようなお手伝いまでやらかしてしまう始末なんだから。

 だけど、実は僕のことを、ということに気付いたとしたならば。

 ダメージは想像つかない。

 僕が望んでいなくても『女子』がきっかけで友情がこなごなになるなんて、しゃれにならない結末、絶対に避けたい。

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