第十四話「天邪鬼と式典」
「……ハァハァ」
カサンドラは今日も通常営業だ。やたら構造が複雑な礼服をテキパキときせてくれるのはいい。だが、ボディタッチの多さはなんとかならないんだろうか?
さっきからムニムニっていうかグニグニってレベルでその豊満な胸があたっている。
「そういえばリク様、昨夜はお楽しみでしたね」
「忘れてた、なにアーデにえらいことを吹き込んでくれたんだ?」
おかげさまで仲良くなれましたと皮肉をいえたら楽なんだろうが、そんなことをいったら俺の噂は城中に広がるだろう。
「まさか闘技の相手を気に入って寝室へとお招きになるとは、クラウディア様に聞かされた時は耳を疑いました。リク様は闘技の最中に一体なにをお考えになっていたのですか?」
「俺にはカサンドラの考え方の方が理解できないよ」
「別に城のメイドになら手をつけても構いませんが、いかんせん王族というのは立場を気にしますから。そのようなことをするのはできれば花嫁を選んだ後にしていただいたほうが私達としては助かります」
そっちの方が問題があるのではと思うのは俺が現代人だからだろうか。
「それに味見がしたいのでしたら、私にいっていただけたらなんなりと……」
「遠慮しておきます」
こういっておかないといつか本当に襲われてしまいそうだ。
そんなことを喋っていると、礼服の準備ができたようだ。にしてもこの服は暑い上に重い。シャツにベスト、ジャケットを着て、さらにその上に引きずって歩くほどのローブ。王族の正装ってのはこんなにも動きずらいものだったのか。
「よくお似合いです」
「この格好で謁見の間までいくのか?」
「いえ、まだ頭髪のセットが残っています」
「さらにかぁー、ですよね」
俺はもともと短髪はだったが、床屋に行くのが面倒だったため前髪で目が隠れるいかにも根暗なショートヘアになっていた。いやもうそろそろ行こうとは思っていたんだが、死んでしまうとは情けない。
「少し髪の毛の量が足りませんね、痛いとは思いますが。なんとか快楽に変えていただけたら」
「俺にそんな特殊な性癖はないって痛い痛い痛い!」
今日なんかこんな目ばっかりだな俺。
「プフー、リク、似合ってるナー」
「プリシラお前、ものがものだったら語尾にwがついてるからな」
まぁ俺もいまここに鑑があったら自分の姿に大爆笑していることだろう。体の体積が二倍になるほどの服装に身を包み、頭には似合わない編み込みが入っている。しかもそれを無理に作ったせいで顔の皮が張って非常に痛い。
「いやいや、ちゃんとした格好をしたリクはかっこいいよ。それでリク、私はどうかにゃー?」
クルクルと服装を見せつけるように回る。
プリシラは緑を基調とした民族衣装に身を包み、なんともエキゾチックな印象を受ける。元の世界でいうとポンチョみたいなものだろうか。どことなく神秘的な衣装だが、彼女のもつ明るさからか近寄り難いという印象は受けない。
とくに頭に被った頭巾越しに動くネコミミが可愛らしさを演出していた。
「似合っているよ、見直した」
ふふんとプリシラは胸を張っている。
「ふふ、勇者様、私はどうでしょう?」
クラウは逆に真珠のような色をしたシルクでできている胸元の大きく空いたドレスを身に纏っていた。そしてその頭上ではふんだんに宝石のあしらわれたティアラも輝きを放つ。また、随所に煌びやかなアクセサリーを使っているのにそれらが付属品に見えるほどの美貌も健在だ。
確かにこんな人物が姉だったらエゼルがシスコンになるのもわかる。
「いやー、女神様が間違って降臨してきたのかと思ったよ」
フェオが明らかにこっちを睨んでいる。一応本物なんだから対抗心を燃やすなよ。
「それほどでもありませんよ」
「私の時とリアクションが違うナー」
「何故かプリシラは素直にほめると負けな気がするんだよ」
プリシラはほめるとそれに乗じていじってくるだろうしな。
「リク、あまりクラウディア様に色目を使うな。許したのは友達までだからな」
アーデにそう釘を刺されてしまう。そういうアーデは昨日の金色の鎧にさらに装飾を付けた格好をしていた。もっともその体に宝剣マクシミリアンを携えておらず、代刀なのかレイピアのような細剣を装備している。
「まぁまぁ、アーデったらやきもちを焼いちゃって」
「なっや、やきもちなどではありません!」
「なになに? 何の話?」
そういえば昨日からプリシラはなんやかんや蚊帳の外にいるな。
「ところでエゼルがまだ来ていないようだが」
「あぁエル君なら……」
ジャラリ、ジャラリ――
何の音だ?
「皆のもの待たせたな」
そこには黄金の意匠や宝石、真珠が随所に敷き詰められている赤と紫の礼服に身を包んだ、というより包まれているエゼルの姿があった。
「これはひどいな、別のサイズとかないのか」
マントの上に王冠が乗っているんだが。アメフトの選手じゃないかこれじゃ。
「……これらの衣装はサンブリア王国に受け継がれる神聖なものである。そのためサイズなどという概念はない」
「そいつは……頑張ってくれ」
「うむ、これで式典の参加者は全員そろったな」
「他の花嫁候補は来ないのか?」
「彼女らのお披露目は夕食会の時になる予定である。それともまさか、リクは王族認定の儀で自慢がしたいのか? 他の貴族たちや民草に喧嘩を売っているようにしかみえんと思うが」
「はは、確かにな」
この人たちが私の花嫁候補なんです、すごいでしょうといったら。流石に転生勇者信仰があるとはいえ普通いい気はしないだろうな。
「にしても誰か忘れているような気が……」
とそういいながらクラウは謁見の間を見渡していると。
「あら、皆さんごきげんよう。準備がお早いのですね」
ヘンリエッタが入って来た。全員の視線を集めて不思議そうな顔をしている。
「皆さん、どうかなされましたか?」
それをみたエゼルが一言。
「うむ! これで全員揃ったな!」
あれだけのことをやって忘れられるヘンリエッタ……
リクの外見ですがノゲノラの空とあの花のじんたんを足して2で割って筋肉をつけた感じです。
見た目は悪くないですけど目つき悪い、いかついで若干怖いんですよ




