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第十二話「天邪鬼と国王姉弟」


「ってあれ、俺生きてる!?」


「普通に生きていますよ、勇者様」


 俺が目を覚ますと大きな赤い瞳をした美少女に見下ろされていた。そして、何より後頭部に温かくて柔らかい、人の温もりを感じている。これはもしかしなくてもクラウに膝枕されているのか?


「もう、アーデったら。魔力の扱いが得意なわけではないのに無茶をして」


「申し訳ありませんクラウディア様。リクもごめんね、許して」


 俺は名残惜しいながらもクラウの膝枕から起き上がり。


「いや、大丈夫だ気にするな。むしろアーデに殴られることでクラウに膝枕してもらえるんだったら、何千発でももらってやる」


 人によっては両方ご褒美みたいなもんだからな。


「あらあら、私にいっていただけたらアーデに殴られなくても膝枕ぐらいしてあげますわ」


「リク、私にいってくれればいつでもぶん殴ってやるぞ?」


「何故だろう、個別でいっているのにセットに聞こえる」


「それにしてもアーデと勇者様は随分仲がよろしくなったのですね」


 いわれてみればたしかにそうかもしれない。もっともそれはクラウにしても似たようなものだとは思うが。


「リクの人柄です。この者を見ていると自分が片意地を張っているのが馬鹿らしくなるので」


「ひどい言い草だな、俺もアーデの空回りを見ていると退屈しない」


 そういいあっている俺達を見てクラウがにこやかに笑っている。


「どうした? 俺とアーデの仲がいいことがそんなにうれしいのか?」


「ええ、だって……」


 クラウはさらにニヤニヤしている。

そして――


「勇者様と私が結婚して、もし勇者様とアーデが結婚したら。アーデと姉妹になれるじゃないですか!」


 笑顔で爆弾を投下する。

 これには流石の俺も言葉を無くした。


「クックラウディア様! な、何を言っているんですか!?」


「えー、でもアーデが男の子とそんなに仲良くしているところなんて見たことがありませんよ」


「それはそうですが結婚なんて私には早すぎます!」


「私とひとつしか違わないじゃない、そうだアーデ、姉妹になったら敬語は取ってもらいますからね!」


「クラウディア様~」


 これ以上はアーデも限界だろう。


「クラウ、そこらへんにしといてやったらどうだ?」


「何ですかー勇者様、私は後妻や妾の一人や二人。気にいたしませんよ? むしろアーデだったら喜んで家族に加えたいくらいです」


 ここらへんの考え方はクラウもしっかり王族なのだと思う、というか本妻を譲る気はないんだな。


「どうですか? 勇者様、アーデはかわいいですし、スタイルも私よりいいです。考えていただけませんかね?」


 アーデはもう顔がゆでだこの様になっていた。


「クラウ、結婚の話は保留にしておいてくれないか? まだこっちに来たばかりで落ち着いてないんだ」


「むぅー、わかりました。でもアーデのことも含めてちゃんと考えておいてくださいね!」


「わかったよ。そういえばなんでここにクラウがいるんだ?」


 俺は話題の矛先を変えるために今更な疑問を口に出した。これ以上続けたらアーデ自然発火するだろう。


「アーデに呼ばれたんですよ、勇者様が魔法を使えるようにしていたら気を失ったと」


「なるほど確かにそんな話をしていたな」


「アーデも考え方は悪くないんですけどね、勇者様ちょっと両手を貸してください」


 俺は双方の手を前にだした。クラウはそれを自らの手で互い違いに握り、かすかに握力をこめる。すると、何か暖かいものが右手から左手に流れてくるという感覚がくる。それが、胸の真ん中に徐々に溜まってきた。そして、胸の中心が爆発するような感覚と共に全身に血液がめぐるような解放感が訪れた!


「うおぉーー!」


「ふふっアーデみたいに衝撃でオドを叩き起こすのも不正解ではありません、でも、もう少し器用ならこうやって徐々に自分のオドを循環させて、一気に全身へと相手のオドを巡らせることもできるのです」


「流石です、クラウディア様」


 主の活躍にアーデも嬉しそうだ。


「すげー、今なら何でもできそうだ。アーデ、また腕相撲やろうぜ」


「いいの?」


 この腕相撲は木剣勝負の前にも参考のためにやったが、瞬殺された。魔力補正は偉大だな。

そして、俺達は腕相撲の為に地面に寝っ転がった。衣服が汚れるがどのみち鍛練用のものだ、構うまい。レフェリー役だったフェオが飛んでくる。


「レディー、ファイですよ!」


「ふんっ!」


「痛い!」


 またしても瞬殺である。南無三。ていうか「ふんっ」って。


「当たり前、まだマナが体に循環しただけじゃない。ほんの少し身体能力があがった程度」


「うーん、アーデ打倒の道は遠いな」


「私が目標になってて嬉しいやら悲しいやら……」




「それじゃ俺はもう魔法を使えるのか?」


「そのはずです。といっても勇者様のマナの許容量は覚醒直後だからかどうかは知りませんが少なかったですし、属性適性もわかりません」


 そっちの方は正直、期待していなかった、そもそも『現世界展開』がある以上、強い魔法を使えてもとれる戦法がちぐはぐになってしまう。

 まぁそうはいっても能力の相性が悪い→敗北じゃお話にならないから、ある程度は使えるようになっておきたい。あまり理外魔術に頼るのもどうかと思うしな。


「適性検査みたいなものはできないのか?」


「あまりおすすめはできませんが属性抵抗力というのが簡単な試験ですね。魔法が使えるなら総当たりが一番いいのですけど」


「どういう内容なんだ?」


「属性魔法を片っ端からあてて、そのきき具合を見る」


 それはおすすめされないのも頷ける。


「それにアーデは風しかつかえないですし、私も木と雷は使えないのでそのどちらかだった場合無駄骨になってしまいます」


 木と雷が使えないって、それ以外は使えるのかよ。


「エゼルバルト様に見てもらうのはどうでしょう?」


「その手がありましたか、よく思いつきましたねアーデ」


 アーデが自分の主に褒められて誇らしげにどうだ? という視線を向けてくる。


「エゼルは適性属性が解るのか?」


「いや『天網恢恢』で未来の魔法を使っている姿を見ていただくんだ」


「そんなこともできるのか、流石は理外魔術」


 今度はフェオが誇らしげにどうだ? という視線をこっちに向けてきている。お前は微妙に関係ないんじゃないか?


「でもエゼルは忙しいんじゃないか、国王様をこんなことで呼びつけるのか?」


「うーん、ダメ元でよんでみましょう」


 クラウが呼ぶのか、展開が読めるな。

 そしてその約五分後、庭園の端っこに金髪の男の子が見えた。と思ったらこっちに走って来た。すげぇ国王が走ってる。


「クラ姉様、余を朝早くから呼び出すとは何用だ?」


 多少すごんでいるが、全力疾走で息を切らしていては品位のかけらもない。


「勇者様の適性属性が知りたいので、彼の未来を見てほしいのです」


「うむ、承った」


 そういいながらエゼルが歩み寄ってくる。

そして、左手をかざし


「『理外魔術(チート・ソーサリィ) 起動(エミュレート) ――天網恢恢(プレコグニション)――』」


 理外魔術を起動させた。


「常時使っているわけじゃないんだな」


「魔力は使わないが、脳の疲労はあるのだ。それにこの予知も万能というわけではない」


 おそらくそれは射程距離があるということだろう。この点はフェオにいわれた。特に俺の能力は範囲を世界全体とかにすると、この世界に与える影響が大きすぎるとのことで厳しめにされたらしい。


「うーむ」


「エル君、どうしたんです?」


「……わからん」


 アーデとクラウが驚きの表情を浮かべている。それだけエゼルの持つ理外魔術は信頼されているということだろう。


「どういうことだ?」


「おそらくだが、リクの持っている理外魔術『現世界展開』の影響であろうな。使わなくても、使う可能性があるということだけで余の予知を阻害する。全くつくづく厄介な御仁を引き込んでしまったものだ」


「理屈はわかるが無茶苦茶だな。結局、俺はどうすればいい」


「うむ、覚醒直後なら総当たりは難しいであろうな。しかし、余とクラ姉様が揃っておるなら問題はない」


「なんでだ?」


「属性抵抗力検査だ」


 またそれか!


「確かにエル君は火と雷、木が使えましたね。私と合わせれば全種類網羅できます」


「クラ姉様、忘れていたのか?」


「エル君が戦うところなんてもうずっと目にしていませんから」


「うーむ、そうなのだ、国王というのも難儀なものだな。というわけでリク」


 もはや嫌な予感しかしない、今日実は厄日なんじゃないか? 式典中止にしようぜ?


「余の肩慣らしになってくれるか?」


 そういいながらエゼルの左手には炎、右手にはバチバチとした光が。そして背後には木のツタが蠢いていた。俺がその光景に後ずさると、背中にドンという衝撃がある。


「ふふふ、勇者様、逃がしませんよ?」


 そこにいたクラウの左手には風が渦巻き、右手には水塊が凝結していく。そして背後には土の壁が出現していた。


「余は魔法を使うのが久しぶりであるから加減ができんやもしれん。リク、気を抜くなよ?」


 不安でしかない。


「勇者様、心配しないでください。私は回復魔術も使用することができますから」


 チート王女が。


「やっやめろぉー!」


 そんな断末魔がバーニシア城の庭園に響く、サンブリア王国は今日も平和です。


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