NEO UNIVERSE
「大野さん、本気ですか? ここを消すって」
「消すと言うか、新しく生まれ変わらせるって感じですよ」
「いや、消すって事じゃないですか。変な誤魔化しは止めて下さいよ」
「誤魔化しとかじゃなくて、次へ持っていくって事ですよ」
カタカタカタカタ。
チャットが鳴る。
1999年。
恐怖の大王に世間は大騒ぎ。
「ここを、この空間を楽しんでいる人はどうなるんです?」
「勿論、そのまま次の方へ来てもらえれば」
「……大野さん、勝手ですよ。そりゃ、貴方の作ったゲームでしょうけど」
「得た経験や知識を、次に引き継ぐってのは普通の事だと思いますよ」
カタカタカタカタ。
チャットが鳴る。
恐怖の大王なんて居なかった。
2000年。
NEO UNIVERSE。
世界は新たなページを開く。
「それって、切り捨てられる側の事は考えてませんよね?」
「切り捨てるって……さっきから言い方が大袈裟じゃないですか?」
カタカタカタカタ。
チャットが鳴る。
Millennium
何処もかしこも大騒ぎ。
だって、世界が変わる。
「僕はここが好きでした。だから、次なんて言われても正直、腹立たしいです」
「きっと、満足してもらえるようなものにしますよ」
「何か、さっきから話が噛み合ってないんですけど……」
――XXが入室しました。
「お前ら、さっきから喧嘩しすぎwwこんな時に揉めんなよwww2000年だぞ! ウェーイ! 飲め飲め!」
「僕はそんな気分じゃないですね。今日は落ちます」
――XXXが退室しました。
「参ったなぁ……喜んでもらえると思ったんだけど」
「あいつはここ、メッチャ好きだったもんなwww実家レベルwww」
「次のゲームの方が絶対面白いんだよ。ぶっちゃけ、自信がある」
「お前はほんと自信家だよな。ウチにもハロワに行く勇気を分けてくれww」
「じゃあ、飲んでないでハロワ行けよ(笑)」
「イヤでござる! 記念すべき2000年に働きたくないでござる!」
カタカタカタカタ。
新しい千年紀が始まる。
2000年。
さぁ、輝かしい一歩を踏み出そう。
「……何つーか、出会いと別れってあるもんだな」
「はい?ww酔ってんのか?ww」
「まぁ、良いさ。見とけよ、次はもっと人が集まるゲームにしてみせるから」
「おぅよ、お前が何処へ行こうとウチは付いていくわww暇だしww」
「いや、仕事しろよ」
カタカタカタカタ。
「つかさ、恐怖の大王来なかったじゃんww世界ぶっ壊してくれっかなーって期待してたんだけどwwノストラダムスまじ使えねぇwww」
「お前、あれ系のオカルト好きだよな……」
「晶はあぁいうの嫌いだろ?ww」
「何が恐怖の大王だ。次のゲームで、本物の魔王ってやつを見せてやるよ」
カタカタカタカタ。
世界が消える。





