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魔王様、リトライ!  作者: 神埼 黒音
四章 魔王の躍動
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田原 勇

「田原よ、我が前に姿を現せ――!」



 その言葉と共に、白と黒の巨大な光が前方に現れ、それらが重なった時――

 一人の男性の形となった。

 その顔は寝ぼけたような面をしているが、身長も高く、その体格もガッシリとしている。



「んぁ……? 長官殿じゃねぇか。って、ここ何処だよ!」


(あぁ、田原だなぁ……)



 自分が創ったキャラクターが動き、喋っている姿に何とも言い表せない感動に包まれる。

 だが、気を抜いている暇はない。こいつも悠と同様、自分が九内伯斗でないと知れば、どんな行動を取るか分からないのだから。



「よく来たな。ここではなんだ、落ち着いて話せる場所へ行こう」


「お、おぅ……」



 田原があちこちを見回し、髪をガシガシと掻く。

 まぁ、無理もない。寂れた寒村の中に、目の前には温泉旅館があるという、よく分からない光景なのだから。



「ここは、新しい“会場”なのかよ――相変わらず、金を掛けてんだな」


「それも含め、ゆっくりと説明したい」



 温泉旅館のロビーへ行き、そこに設置されてあるソファーへと腰掛けた。

 ここなら灰皿もあるし、落ち着いて話が出来るだろう。ロビーに置かれたスピーカーからは琴の音が軽やかに響いており、中々に落ち着く空間だ。



「まず、最初に言っておきたいのは――ここは大帝国があった世界ではないということだ」


「はぁ??」



 以前、悠に説明した事を繰り返す。

 あれから知った事情も含めて話していくと、田原はその表情を百面相のように変え、呆れたように溜息をついた。

 まぁ、この態度が正常ではある……いきなり納得されるのも怖いしな。



「するとなにか、ここはガキの頃に見た、アニメみてぇなファンタジックな世界だっつーのか??」


「端的に言えば、そうなるな」



 自分の返答に、田原が長い沈黙を続ける。

 眠そうなツラで天井を見上げたり、頬を掻いたり、傍目から見れば間抜けな姿にしか見えないのだが、自分には分かってしまう。

 こいつを作った――自分には分かる。今、こいつの頭は恐ろしい速さで回転し、様々な推測や答えを導き出している筈だ。



「ま、あんたはこの手の冗談なんざ、槍が降っても言わねぇだろうが……」


「ちなみに、悠も居るぞ」


「げぇっ! あのマッド女が!? 冗談じゃねぇぞ!」


「悠とも協力し、事にあたって貰いたい」



 俺は何気ない仕草で煙草に火を点けながら、思わず吹き出しそうになっていた。

 こいつの悠への反応、俺に似てるよな。

 綺麗だけど、怖いもんな……何であんな設定にしちゃったんだろ。



「長官殿よぉ、一つだけ確認していいか?」


「どうした」


「ここは、本当にあの“大帝国”が存在しない世界なんだな――?」


「断言しよう。間違いない」



 田原はそれを聞いて安堵したように一つ息を吐くと、自身も煙草を咥えて火を点けた。こいつも俺に負けず、ヘビースモーカーなんだよなぁ。

 煙を幾らか吸って落ち着いたのか、田原がおもむろに口を開く。



「長官殿の前で言うのも何だけどよ、ここが大帝国の無い世界ってんなら、こんなに嬉しいこたぁないね。あんたにとっちゃ……どうか知らんがよ」



 最初は遠慮がちに、だが、はっきりとこちらの目を見ながら田原が言う。

 そんな事を言われても、“九内伯斗”ならまだしも、俺からすれば別に大帝国というのはあくまでGAMEの“背景”であり、あのサバイバルデスゲームを行う為に作った“舞台装置”に過ぎないのだ。


 遊ぶ人が“ゲーム”に入り込めるよう、入念に世界観は作り込んだが、別にプレイには何の関係も無い要素である。


 実際、山のように書いていた小話にまで、全て目を通していたような熱心なプレイヤーはそこまで居なかった筈だ。

 ライトなプレイヤーからすれば、スタート時に「あぁ、このGAMEはそういう国がやってんのね」ぐらいのものだったろう。



「別に、私の前だからといって遠慮する必要は無い。今の我々は、大帝国に縛られる事のない存在なのだから」


「そうかぃ? なら、ついでに幾つか聞かせてくれ――あんたは、この世界で何をする気だ? 最終的には元の世界へ帰るつもりなのか? 俺達を集めて、何をさせようとしてる?」



 難しい質問だった。

 何と答えればこいつは納得するのか、ではなく――

 俺もまだ、最終的な結論やゴールを決めかねているからだ。管理機能を、権限を、全て取り戻す。

 これはまだ良い。


 熾天使を調べて、いずれ元の世界へ帰る――それが本当に可能なのかどうか。

 そもそも、戻ったとして、俺は何をするつもりだ?

 変わらない日常と、仕事か?

 いずれ誰かと結婚して、子育てでもして、最後には墓の中に入って……。


 いや、その前に――呼んだこいつらはどうなる?

 元の世界に戻っても、もうGAMEは存在しないんだぞ?

 つまり、間接的に俺はこいつらを、あの世界全てを“殺した”といってもいい。

 自分の用事が終われば、まだ消して“殺す”のか?



「今はまだ言える事は少ない。だが、そうだな、少なくとも――」



 田原の眼が、こちらを見ている。とても静かで、不思議な感覚だった。

 心のヒダを掻き分け、全てを読み通そうとしている目付きだ。



「私は、大帝国とは正反対の道を往こうと考えている」


「――へぇ」



 以前、悠との会話で出てきた言葉をそのまま口にする。実際、俺はあんな血塗られた道を歩もうなどと夢にも思っていない。

 アレと同じ道を往くという事は、武力で世界を支配していく事なのだから。何が悲しくて、こんな異世界にまできて、殺しあったり恨まれなきゃならんのか。



「……まぁ、いいさ。あんたにゃ、たっぷり稼がせて貰った恩がある。あんたが居なけりゃ、真奈美ともども野たれ死んでただろうからな」


「……その、妹の事だが」



 こいつは重度のシスコンだ。

 自分が設定したんだから、それだけは間違いない。

 妹と会えない環境に居る事についてはどう思ってるんだろうか?



「良いんだよ。こんなヤクザな商売やってる兄貴なんざ居ない方が、良いに決まってんだから。創玄のじじぃに預けてるし、心配要らねぇよ」



 創玄……そういえば、田原の小話でそんな爺キャラを描いたな。

 大帝国の上層部にまで顔が利く由緒ある神社の神主であり、大地主だ。

 描いてて良かった……そんな設定を作ってなかったら、今すぐ戻せと銃口を突き付けられてたかも知れん。



「で、当面は何をすりゃ良いんだ――?」


「まずは、この寒村の運営だ。施設は野戦病院、温泉旅館、銭湯の三つがある」



 村全体の構図を変える作業、従業員の教育、利益を生み出す経営、トラブル処理、貴族との折衝、子守り。

 それらを伝えていくにつれ、田原の顔が愉快な程に曲がっていく。



「無茶言うなっ! 俺ぁ青い猫型ロボットじゃねぇんだぞ!」


「お前は“天才”だ――必ず出来る。私が言うのだから間違いない」


「う”ぁ! ぉ……が……」


「どうした?」



 田原が急に飛び上がり、妙な顔付きになる。

 前に悠もこんな反応をしてなかったか?



「な、何か体にビリっと……んだ、こりゃぁ……」


「体調でも悪いのか? 悠に見て貰え」


「やめてくれ! あんな奴に見られた日にゃぁ、体をバラバラにされちまわぁ!」



 ――随分な台詞ね、田原。



「げっ! マッドおん……い、いや、悠じゃねぇか……ははっ……」



 振り返ると、そこには風呂上りに浴衣を纏った悠が居た。

 その頬はほんのり赤みが差していて、とてつもなく綺麗だったが、目が怖い。

 思わず、俺までそっと目を逸らす。



「魔王様、その方はどなたですか??」


「何かいやらしい顔してるわね……あんた、魔王の手下でしょっ!」


「……綺麗な色。優しい人なの」



 その後ろに居た子供達まで騒ぎだし、ロビーは途端に喧騒に包まれていく。まぁ、田原ならこいつらを上手く守りながらやってくれるだろう。

 これで、ようやく俺も子守りから解放……いや、仕事の分担が出来るというものだ。



(さて、マダムを迎える準備を進めなくてはな……)




 こうして、魔王の下に“常軌を逸した”戦力が続々と集まりつつあった。

 世界から見れば、こんなものは脅威以外の何物でもない。

 望む望まないに関わらず、この集団がいずれ、世界を巻き込む騒動の中心となっていくのは、むしろ当然の事であったといえるだろう。






  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □






田原 勇(たはらいさみ)

種族 人間

年齢 31


武器 ―― 銃器多数

47丁の中から、任意で選択。

マニアックな古い銃から、スナイパーライフルなど、あらゆる銃器を使いこなす。

彼女ら(?)は田原を熱烈に好いており、敵には容赦の無い弾丸をぶち込む。

普段は異空間の中で漂っているが、戦闘時は宙に浮かび、全面展開する。

弾丸無限。


防具 ―― ケブラージャケット

全身のあちこちにホルスターなどが付いており、

銃を取り出しやすくなっている。

接近戦に持ち込まれた時を考え、防刃に優れているのも特徴。

耐久力無限。



所持品 ―― 赤外線暗視ゴーグル

闇夜であろうと視界を確保する。

装備中、命中率に常に+20%してくれる優れもの。



所持品 ―― ラッキーセブン

大帝国製の煙草。

気力を40回復させる効果がある。

銘柄に対してこだわりはなく、他の種類も所持しているようだ。



レベル 1

体力 5000/5000

気力 600/600

攻撃 50(+可変)

防御 40(+12)

俊敏 50

魔力 0

魔防 0


属性スキル

FIRST SKILL ― 連射

SECOND SKILL ― 弾幕

THIRD SKILL ― 乱射


戦闘スキル

榴弾 面制圧 焼夷弾 さきがけ 大破 必中

リベンジ カウンター 痛恨 深慮遠謀


生存スキル

情報操作 罠解除 罠知識 職人 大花火 草不可避

回復 スリ 怪盗 神速 学習 医学 賭博


特殊能力

天才

-?-

-?-







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