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魔王様、リトライ!  作者: 神埼 黒音
三章 神都動乱

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19/82

桐野 悠

「悠よ、我が前に姿を現せ――」



 その言葉と共に、白と黒の巨大な光が前方に現れ、それらが重なった時――

 一人の女性の形となった。

 現れたのは、白衣を着た美麗と言って良い女である。

 長いストレートの黒髪に、抜群のプロポーション、女として理想的な姿形と言っていいだろう。



「お呼びでしょうか、長官」



 その響きに、“俺”は何とも言えぬ懐かしさを感じた。

 大帝国における九内伯斗の正式な肩書きとは“国民幸福管理委員会”の長官であったのだ。その肩書きに相応しい態度で言葉を返す。

 少しずつ、慎重に、相手の様子を探りながら行くとしよう。



「うむ、よく来てくれた――」


「長官のお呼びとあればいつでも。……ここは、新たな“GAME会場”でしょうか?」



 悠が見慣れない景色に目をやり、困惑したような表情を見せる。

 氷のような女が、困った表情を浮かべる様は妙な可愛らしさがあったが、こっちの内心は緊張で破裂寸前であった。



(しゃべってるな……やはり、自分の意思を持っている)



 自分の創作したキャラクターが目の前で動き、しゃべっている姿を見ていると感慨深いものがあったが、感動に浸っていられるような余裕はない。

 彼女に何処まで打ち明け、何処まで話すべきか?



(しかし、まぁ……とんでもない美人だな……)



 GAMEでも一部のドMプレイヤーから人気を集めていたが、何となくその気持ちが分かった気がする。

 ちなみに、悠や静は女性プレイヤーからの人気が非常に高かった。

 強い女性というのは、女の子から見て良いものなんだろうか??



「さて、何から説明すべきか……まず、ここは大帝国ではない。かと言って、他国でもなくてな」



 恐らく、側近達は大帝国が電子空間の中のものだとは考えていない。あの世界こそが「地球」であり、「リアル」であると考えている筈だ。

 よもやあの世界が、自分が、何者かに創られたものである、などと言っても到底信じられないだろう。


 慎重に言葉を選び、これまでの経緯を説明していく。

 突如、大森林に居た事、悪魔のようなものに襲われた事、悪堕ちした天使が今回の件に関連がありそうな事、今は神都に向かっている事、などなど。


 どれだけ慎重に言葉を並べても、胡散臭い話ばかりである。

 だが、悠は大真面目に、時には深々と考え込むような表情を浮かべながら真剣に聞き入ってくれた。



「話を聞いていると、何らかの強制移動攻撃かと思いましたが……なるほど、この光景は確かに、私達が居た世界とは違うように思えます」


「話が早くて助かる。で、今後の方針だが――」



 熾天使を調べる事、SPを入手すれば権限が解放される事などを伝えていく。

 それらを聞いて、暫く顎に手を当てていた悠であったが、その口からすぐさま明確な解答が返って来る。



「長官、経緯はどうあれ“不夜城”が必要になると思われます――」


「……そうだな」



 思わせぶりに返したが、実のところ、そこまで必要だとは思っていない。

 住む所という意味では拠点でも十分だし、街に行けば宿屋だってある。このファンタジー世界に近代的な大要塞などを建ててしまったら、それこそ“魔王城”などと呼ばれてしまうだろう。

 一時はノリで建てようと思っていたが、今は保留にしている。



(最後は“勇者”とかに討伐されるフラグが立ちそうだしな……)



 無論、そんな存在が来たとしても、殺されてやる気は毛頭無い。

 現に聖女が来ても、怒涛のスパンキングで対処してしまったのだから。伝説の勇者やら、光の何たらなどが来ても、似たような対処しか出来ないだろう。



「長官――これは“天意”ではないでしょうか?」


「ふむ……“転移”であるとは、私も感じている」


「――――やはり、そうでしたか」



 悠が妖艶な笑みを浮かべ、思わずドキリとする。

 こいつ、絶対にオッサンキラーだろ。

 いや、女の子からも人気が高かったところを見ると、魔性の女とかそういう系か?



「私達がこの地で為すべき事が、見えてきましたね」


「そこへ辿り着くのはまだ早い。千里の道も一歩からと言うではないか」



 ヤバイ、こいつが何を言ってるのか分からなくなってきた。

 それとなく「急ぐな、ちゃんと説明してくれ」とニュアンスに含めてみたが、悠は益々笑顔を浮かべ、楽しそうな表情となる。



「流石は長官――このような事態でも“愉しんで”おられるのですね」


「……何事も楽しむべきだ。私はそう思っているよ」



 まぁ、これを旅行と考えるなら、こんなに豪華な旅は無いだろう。

 自分が作り、遊んでいたGAMEの様々なものが具現化するなど、普通に考えればありえない事なのだから。



「では、長官。“最初の一歩”は如何致しましょう?」


「まずは拠点を進化させ、《野戦病院》を作ろうと思っている」


「………! 長官はいつも、私の願いを叶えて下さるのですね」


「当然の事だ――可愛い部下の願いは、私の願いでもある」



 我ながら、呆れるほど適当な事をほざいているな。

 何はともあれ、悠を召喚したからにはまず、病院を建てて魔王などと言う噂を吹き飛ばしてしまいたい。


 格安の値段で治療を行えば、悪しき噂も自然と消えていくだろう。

 この世界の医療レベルは低いようだし、魔法の使い手も少ないときている。

 うまく運営すれば、大金が転がり込んでくるかも知れない。



「当然だが、殺す事は厳禁だ。我々はまず、“知らなければ”ならない」



 勿論、しっかりと釘を刺しておく事も忘れない。

 残った熾天使や、この国の事、社会のシステム、魔法、冒険者、モンスターや悪魔など、知らなければならない事はまだまだある。

 殺人病院などという噂が立てば、元も子も無いというものだ。



「えぇ、知らなければ何も始まりません……“知る事”が最重要です」



 悠がしっかりと頷き、その姿を見てホッとする。

 少なくとも、こちらに反意は無いようだし、命令も聞いてくれるようだ。この調子なら、側近をドンドン呼んでも問題は無いだろう。

 人数を増やし、行動範囲が広まれば、より多くの情報を手にする事が出来る。



「では、私の知る限りの情報を伝えておこう」



 この異世界での知識を更に与えるべく、様々な事を話していく。悠はその頭脳に相応しく、スポンジが水を吸収するように即座に反応してみせた。

 間違いなく俺より賢いよな、こいつ。科学だの医学だの、俺にはチンプンカンプンだからボロを出さないようにしないとな……。

 俺が“九内伯斗”では無い、と知れば――悠がどういった行動を取るか分からない。



「では、悠。旅の同行者を紹介する――仲良くな?」


「はい、長官」


「その前に、我々の立場は“遠国から来た人間”だという事にしてある。今後はその辺りを踏まえた行動や言動を取ってくれ」


「了解しました」



 こうして、悠を二人に紹介する事になったが、当然のように大騒ぎとなった。

 まぁ、無理もない。

 いきなり人間一人が現れたんだから、それこそ魔法だろう。



「す、凄く綺麗な方です……!」


 と、アクが叫べば――



「ま、まさか愛人っ? 何処から呼んだの!?」


 と、ルナが叫んだ――



 「私の“部下”を召喚した――皆、仲良くな」




 ■□■□




 (面白い事になったわね……)



 悠は九内からの話を聞きながら、内心で小躍りしていた。

 自分達に与えられた権限は大きかったが、それはあくまで会場の中だけの事。

 一歩でも会場を出れば、大帝国の上層部は権力闘争の嵐であり、自分達の立場は極めて危ういバランスの上にあったのだ。



(ここでは上層部に縛られる事なく……私達の裁量で全てを動かせる)



 一つでもミスを犯せば、いつ全員の首が飛んでもおかしくなかったのだ。

 昨日までの味方が、今日は一斉に銃口を向けてくるなど、日常茶飯事の世界だったのだから。


 自分からすれば、ここが何の世界であるのかなど、正直どうでも良い。

 世界そのものであった“大帝国”から解き放たれる事――

 それこそ、本当の意味で自分達が“生きる”という事ではないだろうか。



(それに、私達の世界とは違う人間、更には魔法ですって……!?)



 知らなければならない。

 知り尽くさなければならない。

 この世界の人間を。

 肉を、皮を、臓器を、頭の中を、その心を、細胞を、遺伝子を。


 あらゆる情報を集め、解明しなければならない。

 本当なら、今すぐにでもそうしたいくらいだ。

 逸る心を抑え、懸命に呼吸を整える――



(それにしても、長官は相変わらず恐ろしい方ね……)



 このような異常事態にも拘らず、優雅に愉しんでおられるようだった。

 それも、この異世界に来た事を「天意」であるとさえ。

 私も、全く同意見であった。

 この地において、“私達だけの帝国”を作れ――何者かがそう言っているのだ。


 煩わしい上層部の老害から切り離された私達の国――それは理想の国家となるだろう。長官にとっても、私にとっても。

 恐れ多い事ではあるが、長官は私にとって上司でありながら、同志でもあった。


 僅か800名ばかり“しか”殺せなかった身ではあるが、長官は400万以上の流血の上に立つ、生まれながらの魔王であったのだから。



 この世界で。

 私が隣に立ち、長官を補佐すれば。

 一体……。

 どれだけの。



(ふふ……くふふ……)



 もうダメだ、笑いが込み上げてくる。我慢出来そうもない。

 世界に向かって、あらん限りの声で叫びたい。



 “私達は解き放たれた”のだと―――






  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □






情報の一部が公開されました。






桐野 悠(きりのゆう)

種族 人間

年齢 22


武器 ―― 手榴弾

広範囲に爆発ダメージを与える。

スキルの関係上、彼女がこれを使用した時、恐るべき結果を生むだろう。

回数無限。


防具 ―― 女医の白衣

見た目は薄い布だが、効果は高い。

あらゆる状態異常を防ぐ効果もある。

耐久力無限。



レベル 1

体力 6000/6000

気力 600/600

攻撃 40(+50)

防御 40(+25)

俊敏 40

魔力 0

魔防 0(+20)


属性スキル

FIRST SKILL ― 爆弾知識

SECOND SKILL ― 四散

THIRD SKILL ― 連鎖爆破


戦闘スキル

必中 本能 悦楽者 狩人 鬼畜 鉄の女 深慮遠謀 リベンジ

限界突破 強制突破


生存スキル

情報操作 回復 ドS 魅了 二面性 秀才 学習 医学 因果律 記録改竄


特殊能力

神の手(ゴットハンド)

-?-

-?-





いよいよ、一人目の側近が登場しました。

危なさ全開のキャラクターですが、スキルもえげつないものが多いです。





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