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聖人君子が堕ちるまで  作者: 澤田とるふ
第4章 魔国の姫君
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第68話 暗躍する者達

予定通り投稿できました。

<Ireaze>


 アレイフの姿が見えなくなった後も、私はしばらくその場に立ち尽くしていた。


「無事に帰ってきてね。」


 誰に聴かせるわけでもなく、自然と口から言葉がでる。


「ほっほぉー出陣前に、高ぶる男を諌めてこんな時間にお帰りですかぁ?」


 いきなり後ろからかかった声に、驚いて後ろを向く。

 そこにはニヤニヤ笑いながら同室のシュルと、向かいに住むトルンが立っていた。


「え...なんで2人が!?いつからっ!?」


「ついさっきだよ。」


「そうそう。ええっとー「あ、もう着いちゃった。」ってあたりからかな?」


 それはここについてからの会話を全部聞かれてたということを意味する。


「ち、違うの!園で偶然あって!遅くなったからおくってもらって...。」


「くふふ...帰ってきたら、言いなさいよ?住んでるところ教えたんだから。」


「ふふ...うん...待ってるからね。」


「うわーーーー!」


 恥ずかしい!!

 それは私がアレイフに言った言葉!

 まずい!このままだと...何か言い訳を...。


「見えなくなるまで見送るなんて...意外と乙女~♪」


「それどころか、見えなくなってからも、無事に帰ってきてね。だって!」


 あぁ...ダメだ!

 恥ずかしい!

 顔が熱い!


「や、やめてよ!」


「いやーイレーゼの浮いた話し全然聞かなかったけど、幼馴染とはいえ、まさか貴族様に粉かけてたとはねー。」


「グレインも頑張ってたけど、相手が悪いな、こりゃルメットにいって慰めさせるか。」


「ち、違うって!そんなんじゃ...。」


「とりあえず、寮長に報告にいかないと、なんといっても噂の第四師団長様だよ?」


「あー誰かに話したい!噂を広げたい!大きくて派手な尾びれと背びれをつけて!」


「だ、ダメだって!」


「愛しのアレイフ様に迷惑がかかるからっ!って?そうねぇ...関係ないけど、明日なにか甘いもの食べたいな。」


「あ、いいね。私も明日甘いものが食べたい。」


「うぅ...わかったから。いつものお店でいい?ケーキ?」


「やりぃ!」


「ごちそうさまー。」


 甘味で口止めできるなら安いもんだ。


「だいたい、なんで2人がこんなところにいるのよ...。」


「いやぁ、イレーゼの帰りが遅いから2人で様子を見に行こうかと。」


「思って窓を見ると、なんとイレーゼが誰かと仲良く歩いてくるではありませんか!」


 偶然見つかったらしい。


「とにかく、黙っててよ。特にミラ先輩とツユハ先輩には...。」


「あぁ、あの2人には黙っとくよ。言ったら園にもついて行きそうだもんね。」


「貴族令嬢も大変だよね。なんとかして繋ぎを!って。特にツユハ先輩はね...。」


「悪い人じゃないんだけどね。」


「だよね。愛しの師団長様を渡すわけにはいかないもんね!」


「独り占めしたいよねっ!」


 はしゃぐ2人を見ながら、これからもしばらくはこのネタでからかわれるんだろうなと、私は肩を落とした。





<....>


 閉め切られ、うす暗い部屋の中、男が2人椅子に座っている。


「第四師団が出陣するらしいが、本当に問題ないんだろうな?」


「400程度の軍勢なのでしょう?そんな兵力ではどうにもなりますまい。」


「しかし、根拠もなく出陣するものか?」


「過信しておるのです。どれだけ鍛えても人が1対1では倒せぬ相手、それに半数近くは亜人というではないですか。人族と亜人の溝は深い。連携もとれず無様に数を減らして帰ってくるでしょう。」


「戦死が最善なのだがな。」


「さすがにそれは...しかし、負傷は期待できます。」


「そうだな。それで、軍と御輿の準備は?」


「整っております。いずれも精強な兵に、指揮も高く。」


「しかし、本当に問題ないのか?総司令官があのような小娘で...。」


「問題ありませぬ。フィードベルト家の名前さえ使えればよいのですから、初陣で鼻息あらい小娘など、いざ戦場となると何もわからず助言に従うでしょう。それに私がほぼ全権を掌握しておりますので。」


「期待しておるぞ?副総司令官、カム・テイルよ。」


「御意。」


 外が騒がしくなってきたのを見計らって、しまっていたカーテンを片方が開けた。


「うむ。派手なことだ。」


「ですな...しかしながら、民衆の期待が高ければ高いほど、失敗したときの落胆も大きいものです。」


 2人が見下ろす先には、濃い青の旗を掲げて行進する騎兵が見える。まだ朝方だというのに、道の左右には多くの国民が手を振っている。


 騎馬は鎧や武器に統一感が全くなく、まるで傭兵の様だ。しかし彼らは皆、掲げる旗と同じ色のバンダナを左腕に巻いていた。

 それだけが共通点だ。


「統一感のない。」


 吐き捨てるようにカムが見下ろす。


 騎兵が通りすぎると、次に現れたのは歩兵。

 皆身体が大きく、ほぼ全員が槍を肩に担いでいた。

 槍という共通点はあるものの、その装飾や長さ、形は皆異なる。

 騎兵と同じく、バラバラの装備に左腕に巻いた青いバンダナ。


「奇を狙っておるのか。それにしても野蛮な出で立ちだな。」


 カムと同じく、もう1人の男も歩兵を見下す。


 そして、一際歓声が上がり、次に姿を見せたのは青いローブをまとった小柄な姿と、彼を囲むように歩く亜人の集団。そして、それに続くきっちりとお揃いの鎧を身にまとった集団だ。

 しかしながら、鎧こそ同じものをつけているが、ほとんどが亜人とひと目でわかる出で立ちだった。

 なんといっても肌の色や目、尻尾など目立つ部分も多い。


「1番隊、2番隊、師団長と近衛兵、そして警邏隊の希望者か。」


「希望者以外は連れていかないとは甘いものです。本来全兵力で挑むべきなのですから。」


「400名程度と聞いていたが、350もいないように見えるな。」


「おそらく輜重などに割かれていて、後発なのでしょう。」


「なるほど、ますます厳しい戦となるな。こちらとしては好都合だが。」


「全くです。」


 2人は笑いあう。

 住民の歓声がなり止むまで、彼らもまた行進する軍を見下ろしていた。





<……>


 とある草原、何もない草原の中に大きな天幕が用意されている。

 中で椅子に座りながら優雅にお茶を飲むドレス姿の女性を前に、大柄な男が跪く。


「アウレリア陛下、オーク共の掃討準備ができました。」


「そうですか、かなり広がっていましたね。」


「はい...広範囲に、元々人族の集落だったと思われる場所に巣食っております。」


「まさか森の外にこれほど広がっているとは。」


「はい。3年ほど前の掃討作戦で撃ち漏らしていたのは明白です。3年もあったのです、繁殖力が衰えているとはいえ、十分な数かと。」


「まったく...お兄様は何をしていたのか。」


「この辺りは人族の陣地であったはず。どれほどの数が逃げ出し、被害を出したのかはわかりませんが、現状でも掃討されていないということは、逃げ出したオーク共は少なくなかったということです。同情しますな。」


「そうですね...よもや大きな砦などは落ちていないでしょうが、かなりの数が流れたのでしょう。」


「交易でもあれば大問題になっておりましたな。」


「不幸中の幸いかしらね。」


「掃討すればいずれ人族の国とも接近することになると思われますが。」


「仕方ないでしょう。とはいうものの、相手の出方を伺ってから決めましょう。オークごときに遅れをとるならいっそのこと、ある程度まで広げてもいいかもしれません。」


「侵略ですか?」


「奪還といいなさい。私達はオークに穢された大地を浄化していくのですから。」


「失礼しました。」


「では、進軍を開始しなさい。」


「はっ!」


 男が去っていったのを確認し、アウレリアは音もなく傍らに立っている人物に声を掛ける。


「スウ、あなたも準備なさい。また私の眼として動いてもらいますよ。」


「はい。」


 答えに満足したのか、お茶を飲み、息をつく。

 そして彼女は手元で何かを撫でる仕草をとった。

 周りから見れば、彼女の手元には何もないのがわかる。

 しかし、彼女の手はまるでペットの頭を撫でるような動きをしていた。


 そして、その黒い瞳は進軍を開始する軍勢を優しく見守る。


ブックマークや評価を下さった皆様、誠にありがとうございます。

これからもどうぞ宜しくお願い致します。


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