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聖人君子が堕ちるまで  作者: 澤田とるふ
第4章 魔国の姫君
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姉の悩み

予約投稿ミスしてました。


 最近私はある事実を知ってしまいました。

 大事な妹のことです。


 私達は性格がまったく逆の双子です。

 弟の亞歩(あふ)が死んだと聞かされたとき、もちろん私自身も悲しんだけど、それより妹もどうにかなってしまうんじゃないかと心配しました。

 実際、妹は泣き崩れるだけじゃなく、放心状態になっていました。


 妹はかなり控えめに見ても、重度のブラコンだったのです。

 まだ家族と村にいた頃も、3人で旅をしていた頃も、1日中弟をかまって...いや、つけ回していました。

 弟はその事実を半分ほどしか知りません。

 妹に私達の種族特性の1つが色濃く出ているのがその原因です。

 それは気配を消したり、影に潜んだりという、まさに隠れてつけ回すのに最適な特性でした。

 本来は斥候や潜入、暗殺に役立つはずの力が、実の弟のストーキングに使われ続けていたのです。


 弟にかなり依存していたから、弟を失ってどうにかなってしまうんじゃないかと心配していました。

 しかし、しばらくは引きずっていましたが、すっかり持ち直したように見えていました。

 しかし、今思えば、落ち着いているように見えていたのは表面上だけだったようです。


 私達は2人共、弟の親友であるレイ様にお仕えすることにしました。

 弟の仇をとろうとしてくれている姿は純粋に嬉しかったし、少しでも手助けをしたいと思ったからです。

 それに、自由になっても私達姉妹2人、どうしようもありません。もう私達の住んでいた村もなく、2人っきりであてもなく旅をするしかないのですから。

 弟もきっと今の私達の姿を喜んでくれるでしょう。


 ここで、レイ様の手助けをしながら自分の居場所を作って生活しようと思っていました。

 そして、妹もそれに賛成してくれていました。いえ、そのように見えていたのです。

 けれど、そう思っていたのは私だけだったのかもしれません。

 私の妹...すいは自らレイ様の専属メイドを名乗り、これまで弟にしてきた以上のストーキングを開始していたようなのです。


 私がそれに気づいたのは本当に2日前...それも完全な偶然でした。


 姉妹とはいえ、私と妹は部屋が別々に与えられています。だからお互い顔を合わせるのは屋敷の中、それも仕事中がほとんどでした。

 それが先日、レイ様から2人でお酒を頂いて、3人で飲んだことがあったんです。

 もともとお酒をほとんど飲まない妹もレイ様の勧めだったからか、グビグビ飲んでいました。

甘い味が気に入ったのか、それともレイ様についでもらえたのが嬉しかったのか、すごい勢いで呑んでいました。そして当然のように酔っぱらって、くてんと眠ってしまったのです。


 私は妹を抱えて、部屋に連れて行くことになりました。今はその選択が間違いだったと確信しています。そのまま、床にでもほっておけばよかった...。


 ハッキリ言います。部屋に入らなければよかったと後悔しています。

 それなら、私と妹は表面上、何も変わらず、これまで通りの生活ができていました。


 予想外に厳重な扉、2箇所に私用の鍵がついたものを、妹の首にかけている鍵を使って開け、部屋に入り、妹をベッドに寝かせました。

 部屋は薄暗かったけれど、一仕事追えて、なんとなく周りを見渡してしまったんです。

 すると、ベッドの横にある机の上や、棚におかしなものがあることに気づきました。

 スプーンや、フォーク、歯を磨くための道具や、タオルなどが丁寧に飾られているのです。

 部屋にこんなものを置くでしょうか?それも、どうみても棚に飾られいます 特段珍しい種類の物にも見えません。普通に支給されているものに思えます。

 特に食器に関して、部屋で何か食べるためのものでもなさそうでした。同じ種類のものがいくつもあるし、フォークやスプーンはあるのにナイフはない。それもひとかたまりになってるわけじゃなく、1本ずつ飾られています。


 それにさっきは気付かなかったのですが、よく見るとベッドの上や棚の下の方に衣服や下着が置いてあるのです。けれど、これもおかしいのです。

 どう見ても妹のものじゃないのがわかります。どうみても男物に見えるのです。


 1つ言えるのは妹に男っけなんてないということ。

 屋敷には男の人も出入りしていますが、私より話す頻度は低いはずです。

 それに下着ばかりがやけに多い気がします。念のため、外に出て、間違いなく妹の部屋なのは再確認しました。鍵が合う時点で間違いないのですが、私も混乱していたのかもしれません。


 これがなんなのか妹に聞きたいけれど、妹はぐっすり眠っています。

 明日にでも問いただせばいいかと思ってもう一度周りを見渡しました。

 そこで私は机の上にある本。というか分厚いノートに気付いてしまいました。

 大きく数字で23と書かれています。

 机の棚を見ると、外にもノートがたくさん並んでいます。

 それぞれの表紙に数字が書かれていることから、どうやらこのノートが23冊目ということらしいです。


 日記か何かでしょうか。

 いけないと思いつつも、好奇心に負けて私はノートを開いてしまいました。

 しかし、そこに書かれていたのは妹の精神を疑う内容でした。


 簡単にいうと、そこに書かれていたのはレイ様のことだけでした。

 それが思いを綴ったものや、恋慕を書いた日記なら可愛いものだったし、素直に妹を応援したかもしれません。

 しかし、そこに書かれていたのは、レイ様の個人情報でした。

 ノートには細かい文字で多くの情報が書き込まれていました。


 好き嫌いから、癖、好きな場所などはもちろん、眠っている時間からお風呂に入っている時間、独り言の内容から自分と話した内容やその合計時間など、監視していなければわからないような内容が書き連ねられています。

 そして、とくに恐ろしいのはコメントのように書かれている感想。


『わざと着替え中に入ったら、顔を赤くして出て行ってくれと焦っていた。可愛い。』


『今日はいつもより長くお風呂に入っている。溺れていないか心配で何度も覗いてしまった。』


『熟睡中、ちょっとだけ同じ毛布に入ってみた。あぁ、いい匂い。抱きしめたくなる。』


『私が使ったあとのコップで水を飲んでいた。気づいていない。愛が止まらない。』


『鍛錬あとの下着をゲット!前に手にいれたタオルよりずっと匂いがきつい。サイコー。』


 ...どうやら、私の妹は弟が死んでから壊れてしまっていたようです。

 どうしましょう。このままだと最悪は犯罪者...よくて変態になって...いやすでになっているかもしれません。


 この部屋にある男性の服や下着、そして棚に飾ってある食器などは全部レイ様の使用済み品なのでしょう。

 妹は表情が少なく、無口な子です。

 傍から見ると奥ゆかしい子に見えますが、そんな子が普段、この部屋で何をしているのか考えただけでも恐ろしいです。


 明日から...姉妹としてやっていく自信がありません。

 妹の醜聞を晒すわけにもいかず、だからといって、このことを相談できる相手なんていません。


 私は、フラフラと部屋を後にした。

 考えるのはどうやって壊れた妹を元に戻すか、そしてこのことが明るみに出ないようにどうやってフォローするか、ただそれだけです。部屋でずっと考えていたけれど、明け方になっても答えはでませんでした。


 次の日、寝不足で少しぼっーっとしていた私の背後にいつの間にか立っていた妹が、恐ろしく低い声で「姉さん、昨日私の部屋で何か見ましたか?」と聞いてきたとき、私自身もまた、このことを知ってしまったら命の危険があるのではと思い知りました。


 「へ...部屋?部屋がどうかしたの?私も酔ってたからすいちゃんをベッドに放り込んですぐ自分の部屋で寝ちゃったから...。」


 私はうまく表情を作れていたでしょうか。

 すいちゃんは私の目をじっと見つめてから、「そうですか。」といって離れていった。レイ様の執務室に行くのでしょう。


 ほっと息をついた私の背後から再び冷たい声が聞こえました。


 「姉さんは、私の味方だと信じていますよ。」


 いつの間にか背後にピッタリ立っていた妹に悲鳴をあげそうになるのを必死にこらえました。


 「何言ってるの?姉さんはずっと、すいちゃんの一番の味方よ?」


 私の作った笑顔を見て、今度こそ妹はレイ様の執務室に入っていきました。


 神様、どうか妹が間違いに気づいてくれますように。

 私は自分でどうにかしようとするのを諦めて、ただただ、見たこともない神様にお願いすることにしました。

 この日から、朝のお祈りが私の日課になりました。


 今日も、何事もなく平和に過ごせますように。


ブックマークや評価を下さった皆様、誠にありがとうございます。

これからもどうぞ宜しくお願い致します。


ちょっと風邪をひいてしまい、更新遅れるかもしれません・・・。

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