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聖人君子が堕ちるまで  作者: 澤田とるふ
第4章 魔国の姫君
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第60話 パーティへのお誘い

 ある日、第四師団本部に、珍しいお客様が来た。

 師団本部の建物の前を行ったり来たりしていたのをミアが見つけて連れてきたらしい。


「なんか、立派になったね、アレイフ。」


 応接室で俺の対面に座っているのはイレーゼだ。

 王立学園の式典で見かけてから、何度か園に顔を出したけど、寮暮らしのイレーゼに会えるわけもなく、結局話す機会は皆無だった。


「立派って...変わってないよ。何も。」


「だって、ここってアレイフの持ち物でしょ?ミアが見つけてくれなかったら入ることなんてできなかったよ。建物が立派すぎて。」


「ここは第四師団の本部だからね。俺の持ち物じゃないよ。」


「ここに住んでるんじゃないの?」


「...住んではいるね。けど使っているのは執務室の隣の小さな部屋だよ。ここより狭い。」


「貴族様なのに、屋敷立てたりしないの?」


「1人で生活するのに屋敷なんていらないだろ?」


 俺が笑うと、イレーゼも「確かに。」とやっと笑顔を見せてくれた。


「ずっと寮暮らし?もう慣れた?」


「うん、あ、もしかして園に顔出してくれてるの?私は寮に移ってからは全然。」


「10日に1回ぐらいで顔を出しているよ。経営は順調みたい。」


「そういえば、王立学園で見たよ。すごいね...びっくりした。」


「最後の方でレーゼを見つけたんだけど、護衛できてたから声はかけられなかったんだ。」


「いや、いきなり声なんてかけられたら困るよ。第四師団長と知り合いだなんて、驚かれるし。」


「実際、知り合いどころか、幼馴染だろ?」


「...まぁそうなんだけど。」


 ミアは約束があるとかでイレーゼを案内してすぐに席を外した。

 今、この応接室には俺とイレーゼだけだ。


 コンコンとドアをノックする音がして、はくが入ってくる。

 お茶を入れてくれたみたいだ。


「あ、すいません。」


「いえ、ごゆっくり。」


 イレーゼがお礼をいい、はくがお茶を置くと、そのまま部屋の隅に待機した。

 ...ニコニコしながらイレーゼを見ている。

 好奇心旺盛なことだ。


「今日は急にどうして?様子を見に来たってわけじゃないだろ?」


「うん...その、ちょっとお願いがあって…。」


「お願い?」


「うん、7日後の夜なんだけど、空いてるかな?」


「...えっと、7日後?まだ予定はないと思うから空けられるけど、なんで?」


「一緒にパーティに出てくれない?呼ばれたんだけど、ちょっと困ってて。」


「パーティ?」


「うん、順を追って話すね。」


「うん。」


 お茶を一度飲んでから、イレーゼが理由を語りだした。

 簡単に要約すると、王女が出した第三師団長が主催するパーティの招待券が、なんと当たったらしい。正直興味がなかったので、断りたかったけど譲渡不可になってて他の人には譲れない。それで仕方なく友人と参加することにしたけど、出たことがなくて不安だと先輩に相談したら、先輩が自分の誕生パーティに誘ってくれたらしい。

 ただ、6名招待で、自分の作ったグループより1人多い。

 ということで誰か1人必要となり、先輩に相談した自分が誰かを誘ってくるということになった。けれど、王立学園の友人を、面識のない先輩の誕生パーティにだけ誘って、抽選で当たったパーティに誘えないのは角が立つと。

 身内を誘おうにも、孤児院に貴族のパーティに参加できそうな同年代もいない。

 そこで、ダメ元で俺に相談しに来たらしい。


 なんていうか、イレーゼもいろいろと人間関係に苦労しているみたいだ。


「王立学園の生徒ですらない俺が参加してもいいの?」


「それは大丈夫。身内でもいいって書いてたし。」


「身内...になる?」


「な、なるよ。うん、なるなる。」


 同じ孤児院暮らしだったとはいえ、ちょっと苦しい気がする。


「だめ...かな?」


「いや、出るのはいいけど、レーゼはそれで大丈夫?」


「いいの!?全然大丈夫だよ!」


「で、その先輩って貴族?」


「えっとね、ほら、この前の式典で表彰されてたミラ・イスベリィって先輩なんだけど。」


「......んー...あぁ、あの人か。」


「覚えてるの?」


「あぁ、あの黒髪で気の強そうな人だよね?スタイルのいい。いかにも貴族って感じの。」


「え、そんなことないよ。確かにミラ先輩は綺麗だし、貴族ってオーラは出てるけど、話しやすいし、誰にでも分け隔てなく接してくれるいい人だよ。」


 ずいぶん、イレーゼと俺で受けた印象が違うように思う。

 俺の印象は凶悪な土魔法をくらったせいか、あまりよくない。


「それにスタイルって、アレイフもそういうこと言うようになったんだね。うちのクラスの男と同じこといってるよ。ミラ先輩ってメチャクチャ人気あるから。」


「あれだけ強調してたら嫌でも目に付かない?」


 ミラ・イスベリィの印象があまりよくないのはその見た目もあった。

 胸をやけに強調していたように見えたのだ。

 正直、あからさまにそういう態度をとる相手を簡単に信用できるわけがない。昔、ウキエさんの授業でもそう習った。


「まぁいいけど。じゃあ7日後の夜、迎えに来ればいい?」


「えーっと、レーゼは衣装とかどうするんだ?」


「あ、そっか。実は皆、ミラ先輩が貸してくれるっていってたから早く集合するんだった。アレイフは...もってる?」


「あったっけ?」


 イレーゼの問いかけをそのままはくに流す。


「はい。大丈夫ですよ。レイ様の初パーティですねっ!」


「レイ?」


 イレーゼが首を傾げる。

 俺の呼び名だろう。近衛の中でも、はくすい、それにリザは俺のことをレイと呼ぶ。

 別にどっちでもいいので特に指摘はしていない。


「愛称みたいなもんだよ。」


「そっか、アレイフってパーティ出たことないの?」


「ないなぁ...正直出たくもない。」


 その言葉にイレーゼが少し微妙そうな顔をする。

 無理に誘ってしまったのかと気にしているみたいだ。


「違うよ。知り合いのいないパーティに出るのが嫌なんだ。だから今回の誘いは別に嫌じゃない。」


「そう...よかった。」


「当日どうしたらいい?直接会場...イスベリィ卿の屋敷かな?そこに行けばいいのか?」


「んーそうだね。私が用意できたら入口で待ってるよ。そこで落ち合おう。」


「わかった。始まる少し前に着くようにするよ。時間とか場所を細かく聞いといてくれる?」


「うん、聞いとくね。じゃあまた伝えにくるよ。」


「悪いけどよろしく。」


「こっちが頼んでるんだから大丈夫。」


 そこではくが声をかけてきた。


「あの、宜しいでしょうか?」


「どうした?」


「いえ、イレーゼ様に通行証のようなものをお渡ししてはいかがでしょう?これからもご友人などが訪ねてこられることもあるかと思いますので、手違いがあったらお互いに不幸ですし。」


「通行証か...何かいいのあるかな?」


「とりあえず、師団の関係者ということで、腕輪をお渡ししておけば、きちんと案内されるかと。」


「そうだな、じゃあ、とりあえず持ってきてくれる?」


「かしこまりました。」


 そういうとはくが退出していく。


 今話に出ていたのは、以前ウキエさんと相談していた装飾品だ。

 第四師団は武器に関して、希望がない限り、お揃いの武器を配給しない。元々は傭兵から入った者も多いために自前の装備を許可した経緯があるのだが、現在では進んでいい武器を用意し、身に付ける者も多くなった。さすがに鎧まで自由にすると普通の冒険者や傭兵と見分けが付かないため、鎧はお揃いだ。

 ただしそれは平兵士の話。

 1番隊隊長や副隊長になると、鎧まで自由が認められている。ただそうなると、やはり見分けが付かなくなるので装飾品を付けて第四師団ということと、幹部である証とした。

 その1つが腕輪だ。

 もちろんただの腕輪じゃない。

 イッヒ男爵特製、伸縮自在で腕の太さに関係なくピッタリとハマる優れものだ。


「お待たせしました。」


 はくが腕輪を持ってきてくれた。

 そのままイレーゼに渡す。


「これ、だいぶ大きいけど...。」


「付ける方の腕に通して、その印のあたりを当ててみて。」


 イレーゼが言われた通り、左腕に腕輪を通し、印の部分を腕に当てると、腕輪が縮み、腕にぴったりのサイズになる。


「うわっ!なにこれ、すごい。」


「それを見せれば、普通に入ってこれるから。あとは適当に誰かに聞いてくれたらいいよ。」


「わかった。ありがとう。これ外すのはどうするの?」


「強く引っ張れば元の大きなサイズに戻るよ。防水だし、邪魔じゃなければずっと付けてても大丈夫。」


「そっか。ならこのままにしとくね。ありがとう。」


 用件は済んだけど、イレーゼとはそのまま学園の出来事や、どんなものを学んでいるのかなど色々と話をした。

 イレーゼは治癒師を目指しているらしい。

 水属性が得意だし、昔から治療系の魔法に興味があったみたいだからいい目標だと思う。


 将来について、楽しそうに語るイレーゼを見て。

 とても眩しく感じた。


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