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聖人君子が堕ちるまで  作者: 澤田とるふ
第3章 国軍時代
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第28話 仮面の恐怖

 国王の演説から2日後、街はまだ第四師団長候補の話でもちきりだった。

 また、国王の言葉は貴族社会でも大きな波紋を呼び、多くの貴族たちから直訴の手紙が届いていた。


「して、どうだ?奴らは。」


 ここは王の執務室。今部屋にいるのは皇帝と第四師団の現在ではすっかり文官になったウキエだけだ。


「本日より南区の巡回及び、師団施設の見回りを命じました。」


「師団施設?」


「はい、この際、害虫はすべて排除しようと思いまして。」


「害虫...か。」


 皇帝は意味ありげな目で執務室の一角に積まれた手紙の山を見た。

 貴族達からの手紙である。

 ほとんどのものは、第四師団長の大抜擢と、フィードベルト家を無視するような行動に遺憾の意を示している。


「増えるでしょうね。さらに。」


「そうだな...しかし、そうか…害虫駆除か。」


「最初が肝心です。」


「念の為に聞くが…。」


「大丈夫です。きちんと証拠をおさえられるよう何人か私の手のものもついて行っています。」


「そうか...。」


 今の第四師団は、トルマが死亡してからかなり腐敗している。

 トップの不在。そして質の低下がもたらした弊害は国民に大きく影響を与えた。

 略奪、恐喝、横領など、目に余るものは処罰できるが、証拠がないものは処罰できない。

 また、そんなことを行う軍が他の悪人を取り締まれるわけもなく。

 もともと悪かった南区の治安は過去最悪のものとなっていた。


「カムといったか、今の幹部は。ここ2年放置しただけということだな?」


「いえ、そういうわけではありませんが、彼は平民の出です。」


「平民...なるほど。貴族の息子などが部下としている場合、どうしても見逃してしまうと?」


「残念ながら、圧力があるのは事実ですから...。それに、第四師団は貴族、平民の混合部隊。トルマ様が目を光らせていた頃ですら影でそういった圧力はありました...今はもう、言わずともお分かりかと。」


 ウキエの言葉にまた皇帝がため息をつく。


「現第四師団の者達はどれぐらい残るか...。」


「最悪は残らないかもしれません。抗議の意味を込めて全員でやめる可能性もあります。平民兵を貴族兵が道ずれにするパターンも考えられますので。」


 各師団は武官と文官に別れる。

 主に書類や兵站を行う文官と実際に兵となり敵と戦う武官だ。

 2年前、第四師団は武官の幹部クラスをほとんど失った。

 補填できなかったのは、率いることができる武官の人材が不足していたのも理由の1つだ。


「今日は具体的にどういう指示を与えたのだ?」


「はい、マウとサイには街を巡回させています。犯罪行為を行うものを速やかに捕えるようにと。アフとレイには施設の確認を、不正な職員を拘束、処罰せよと。」


「...処罰?」


「はい。軍規違反、犯罪行為は即処罰すべきですから。」


「...そうか。たしか以前に北部の盗賊駆除をさせたことがあったな。あのときの命令は...犯罪者を処罰せよ。だったか?」


「はい。その通りです。」


「...では、その結果は覚えているか?」


「生存者なし。完璧な駆除でした。」


 皇帝は何か言いたげにもう一度、部屋の片隅に置かれている手紙の山を見た。


「すいませんが、まず区切りをつけなければ第四師団は生まれ変われません。」


「...わかっておる。貴族どもの反発も結果で返せるよう頼んだぞ。」


「御意。」


 ウキエが国王の執務室を後にする。

 後にはため息混じりに手紙と格闘する国王が残された。





 第四師団の施設を歩く異様な集団を見て、第四師団所属の兵士達が眉をひそめる。


「おい、あれって。」


「あぁ、そうだ。」


 噂をする兵が見る先には仮面をつけた2人組。

 浮いているアフと、フードをかぶった剣士のレイが歩いていた。

 その後ろを4人の男達が付き従っている。


「やっぱり仮面は注目を集めるね。」


「いや、浮いてるからだろ?」


 アフに対してレイが冷たい言葉を入れる。


「僕のせい!?」


「間違いなく目線は俺たち2人か、アフの方を見てる気がするが...。」


「そうか...楽なんだけどな。これ。」


 2人は普通に会話しているが、光景は異様だ。

 小柄なアフは宙に浮いたまま移動している。

 周りから注目されるのも無理はない。


「これが兵舎?」


 アフが後ろからついてくる4人に聞く。


「はい、こちらが第四師団関連の庁舎と屋敷及び、兵舎になります。」


「ずいぶんでかいね...。」


「ほとんど兵の宿舎ですので。」


「今日見るのはここだけ?」


「いえ、次に城壁のそばにある駐屯所を見て頂きます。」


 後ろを歩いていたうちの1人が前に出て門を開け、招き入れる。


「さて、どこから見せてもらおうかな...ん?」


 アフが見る先にはレイがいる。

 ただ、正面にある屋敷ではなく、となりに隣接した兵舎の裏に続く道の方をじっと見ていた。


「どうかした?」


「ああ...声が聞こえる。嫌な声だ。」


「そっか、じゃあ行ってみよう。」


 そういうと、2人はスタスタと歩き出してしまった。

 屋敷に案内するつもりだった文官達は大急ぎで後ろをついていく。


 レイが前を歩き、兵舎の横を通り、物置のような建物の横を通り、さらに歩くと、倉庫のような建物の前に数人の兵士が腕を組んで立っている。

 まるで見張りをしているように。


 迷わずレイが歩き出す。


「おっと、こちらは行き止まりですよ。」


 見張りの兵がレイを止める。


「お前達、何をしている?」


 レイとアフについてきた4人のうちの1人が問いただすように前に出た。


「文官殿にゃー関係ねぇさ。ほらさっさと向こうに行きな。」


「今日は見学があるといわれていないのか?」


 誰の見学かはあえていわない。


「だから何?ここにゃーここのルールがあるってんだ。それとも、男爵様の血筋の方に何か意見しようってのか?」


「それは...。」


 見張りの男が文官に詰め寄る。

 貴族の血縁者がどうやらこの中にいるらしい。


「邪魔だ。」


 レイが無視して入ろうとすると、見張りの男たちが胸ぐらをつかもうと手を伸ばす。


「ダメだよ?」


 割って入る声と同時に男たちが左右に吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされた男たちが尻餅を付きながら状況を確認する。

 何に吹き飛ばされたのかわからない。

 すると、目の前でフワフワと浮きながらアフがレイの隣に並ぶ。


「僕等に勝手に触るのは御法度だよ?...気分次第で、死んじゃうからね。」


「てめぇ。。」


 吹き飛ばされ、頭に血が上ったのか、男たちが腰の剣を抜いた。


「文官、確認したな。隊舎内での抜刀に、命令無視、敵対行動だ。」


「あ、はい。」


 レイが静かに告げると、文官が返事をする。

 その態度がさらに剣を抜いた男達をいらつかせる。


「やっちまえ!」


 男達が斬りかかろうとする。

 しかし、近づく前に終わってしまった。

 一瞬で男達3人の首が地面に落ち、文官が軽い悲鳴を上げる。


「おぉ、容赦ない...。」


「正当防衛だろう?」


 アフとレイは一歩も動いていない。

 一瞬だった。

 レイが剣を抜き、男達に向かって剣を振っただけで、男達の首が綺麗に地面に落ちた。


「いくぞ。」


 レイがそのまま倉庫の扉をあけて中に入る。

 中には何人かの男が一人の女性を囲っていた。


 何をしていたか見ればわかる。

 いや、しようとしていたというべきか、幸い女性はまだ服を着ている。

 猿ぐつわを噛まされているし、服もボロボロだったが、たぶんあの服はメイド服だろう。

 使用人だろうか。

 手足を押さえられ、ナイフをもった男が女性の服を切り裂いている途中だった。


 急に扉が空いたためか、全員がこちらを見る。


「なんだ貴様は!」


 男がいきなりナイフを投げたが、そのナイフが宙で静止する。

 そう。投げられたナイフがそのまま宙に浮いているのだ。

 全員がそのナイフに注目する。


「危ないなぁ...これ、敵対行為だよね?あと、殺人未遂と...暴行...は未遂?」


 アフが静止したナイフを手に取りながら後ろの文官に確認した。

 文官はあまりのことに目を見開いている。

 さすがにここまで酷いとは思っていなかったようだ。


「この場合、全員か?それともあいつだけか?」


 レイが冷静に文官に聞く。あいつというのはナイフを投げた奴だろう。


「この場合は...えっと。」


「早くしてよ。」


 アフが急かす。


「しかし、あの方は男爵様の三男で...。」


「...だから?」


 アフが可愛く首を傾げた。

 ただ、仮面を被っているのでわからないが、かなり幼い仕草に思える。


「そこの女。念の為に聞くが、これは同意か?」


 レイが拘束されている女性に声をかける。

 女性はここぞとばかりに首を左右に振った。


「何をごちゃごちゃと。おい、捕まえろ!」


 あまりのことにフリーズしていた貴族の三男が周りに命令する。

 その声に反応して、周りも武器を持ちレイとアフに向かってきた。


「僕がやるよ。」


 アフがレイの前に移動し、向かってくる男達に向かって一言放つ。


「ウインドショット!」


 ただそれだけで、向かっていった男達が全員反対方向に吹き飛ばされ、壁に激突する。

 いや、激突なんて生易しいものではない。壁にめり込んだ。

 全員腕や足がおかしな方向に曲がり、口から血を吐いている。

 絶命しているか、生きているかかなり怪しい状態だ。


 唖然とする残った男達に向かって、レイが剣を抜き、歩き出す。

 剣をもったまま動けない男も、斬りかかった男もみんな首を落とされる。


 最後に貴族の三男の前で足を止めた。

 もう1人しか残っていない事実に、足は震え、声も震えている。


「ぼ、ぼくは...男爵家のものだぞ?いいのか?こ、こんなことをし」


 最後まで言い終わることなく、首が地面に転がる。

 中の惨状を見た文官が吐きに外へ駆け出していった。

 拘束されていた女性も今は自由になったが、レイを見て震えている。


「ここの掃除って誰がするんだろうね?結構悲惨じゃない?」


アフがレイに問いかけた。


「メイドがいるんじゃないのか?」


「えぇ.. さすがに被害者にそんなことさせられなくない?」


「いや、別のメイドもいるだろ?」


「あ、そっか。それなら大丈夫だね。さて、次行こっか。」


 アフの場違いな明るい声が倉庫に響いいた。


残り2人の仮面組、いいエピソードが思いつかなかった。><

街で悪者ってありきたりだし・・・。

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